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人間を3人、育てている。

人間を3人育てている。

こう書くと、なんだかちょっと大げさに聞こえる。

6歳と、4歳と、2歳。

毎朝「早くして」と言って、
脱ぎっぱなしの服を拾って、
こぼした牛乳を拭いて、
誰が先に歯を磨くかで揉めている子どもたち。

私が育てているのは、そんな3人だ。

でも最近、ときどき思う。

私は、子どもを3人育てているんじゃない。
人間を3人、育てているんだな、と。

私は、子どもたちにイライラする。

何度言っても同じことをすると腹が立つし、
約束を守らなければ本気で怒る。

使ってほしくない言葉を使えば注意するし、
誰かを傷つけるようなことを言えば、
「そういうことは言わない」と、かなり真剣に叱る。

ときには、子どもの何気ない一言に傷つくこともある。

一方で。

くだらないことで3人が笑い転げているだけで、
なんだかこっちまで嬉しくなる。

「ママー」と駆け寄ってくるだけで、
疲れていたはずなのに笑ってしまう。

寝ている顔を見ながら、
かわいいなあ。
と、心の底から思う。

たぶん私は、
この3人に対してだけ、
ずいぶん感情を忙しくしている。

考えてみれば、
大人にはこんなに本気にならない。

職場で理不尽なことを言われたって、
「はい、わかりました」
と作り笑いをして、その場をやり過ごすことはできる。

もちろん心の中では、
いや、それおかしくない?と思っていることもある。

嫌味を言われれば腹も立つ。
でも、だからといって、
「今の言い方は、人を傷つけると思います」
なんて毎回真正面から注意したりはしない。

駅ですれ違った知らない人のマナーが悪くても同じだ。
なんだこの人、とは思う。
でもわざわざ追いかけていって、
その人のこれからのために真剣に説教することなんてない。

その人がこの先どんな人間になっていくのかまで、
私は責任を持っていないから。

でも、子どもにはそうできない。

誰かを傷つけるような言葉を使ったら、
聞き流せない。

約束を守らなかったら、
面倒でも話をする。

お店で迷惑になることをしたら、
その場でやめさせる。

「まあ、いいか」
で済ませられないことが、たくさんある。

そして、ときどき本気になりすぎる。

声が大きくなったり、
言わなくてもいいことまで言ってしまったり。

子どもが寝たあとになって、
あんなに怒らなくてもよかったな。
もっと違う言い方があったな。
と、ひとりで後悔する。

だからといって、

愛しているから怒っているんだから、これでいい。
とも思わない。

傷つけてしまったなら謝りたいし、
もっと上手に伝えられる母親になりたい。

怒らずに伝えられるなら、
きっとそのほうがいい。

それでも。

どうしてこんなにも、
この子たちの言葉や行動に一喜一憂するんだろう。

どうして、どうでもいいと思えないんだろう。

考えてみたら、
答えはたぶん、とても単純だった。

私は、この子たちの未来に期待している。

私の思い通りの人になってほしい、
ということではない。

どんな仕事をするとか、
どんな学校に行くとか、
そんなことでもない。

いつかこの子たちが私の知らないところで、
たくさんの人に出会って。

誰かを大切にしたり、
誰かから大切にされたりして。

失敗したり、
傷ついたり、
それでもまた自分で考えて。

自分の人生を歩いていってほしい。

できることなら、
自分のことも、周りの人のことも、
大切にできる人であってほしい。

だから私は、
今、この子たちが口にする言葉を気にする。

人との約束を守ることを教える。
誰かが嫌がることをしたら止める。
自分がされて嫌なことは人にしない、と、
何度でも伝える。

それがこの子たちの人生のどこかに、
ほんの少しでも残ったらいいと思っている。

今はまだ、
「ママー、見てー!」
と一日に何十回も呼ばれる。

靴下ひとつ自分で探せなくて、
寝るときには私の隣を取り合って、
転んだだけで泣きながらこちらへ走ってくる。

どう見ても、まだ子どもだ。

でもこの子たちは、
ずっと子どもではない。

私がいなくても朝起きて、
自分でごはんを食べて、
自分で行く場所を決める日が来る。

私には話さないことが増えて、
私の知らない人を好きになったり、
私の知らない場所で悩んだりする。

そしていつか、

私の手を離れて生きていく。

そう思うと、

今日また同じことで叱ったことも。
くだらないことで一緒に笑ったことも。
「ママ大好き」と言われたことも。
「ママなんて嫌い」と言われて傷ついたことも。

全部、この人たちと一緒に生きている途中なんだと思う。

私は、赤ちゃんを3人育てているわけじゃない。

かわいい子どもを3人育てているだけでもない。

いつか私の手を離れて、

自分で考えて、
自分で選んで、
誰かと関わりながら、

自分の人生を生きていく。

そんな人間を、

私は今、3人育てている。



おわりに:エッセイしりとり企画について

今回、「エッセイしりとり」という企画で、
「に」から始まるタイトルの記事を書きました。

バトンを渡してくださったのは、あさこさん。

私のことを、

「母として、働く女性としての想いや葛藤を
とても繊細に表現している方」

と紹介してくださっていて。

なんだか照れくさくて、
でも、とても嬉しかったです。

普段から何気ない毎日のことや、
子どもたちとのこと、
働くことについて、
そのとき自分の中にあるものを
できるだけそのまま言葉にしてきました。

そんな文章を読んで、
こんなふうに受け取ってくださる方がいること。

そして今回、バトンを託していただけたこと。

とても嬉しく思います。
素敵な機会をありがとうございました!

さて。

しりとり企画ということで、
「人間を3人育てている。」

最後の文字は、「る」。

ということで、
次は「る」から始まるタイトルです。

……「る」。

なかなかの難題を残してしまいました。笑

そんな「る」のバトンを、
次のお二方へお渡しします。

1人目:みみな◇どろどろ育児さん

3歳の娘さんを育てながら、
キラキラだけではない育児のリアルを
「どろどろ育児」として綴っている方です。

元看護師・保健師としての知識と、
ご自身の経験を交えて書かれる文章には、
同じ母として「わかる……」とうなずくこともたくさん。
飾らない言葉の中に、娘さんへの愛情がにじむ
とても素敵な方です。



2人目:さぼぼん🌵4児パパさん
4人のお子さんを育てながら、
子育てや仕事、家事など、
忙しい毎日の中で感じることを
パパ目線で丁寧に綴っている方です。

子育ての喜びだけではなく、
迷いや葛藤も飾らず書かれていて、
ママとはまた少し違った視点に
気づかされることもたくさんあります。
家族と向き合う姿がとても素敵な方です。

突然のご指名になってしまうので、
もちろん、余裕があれば&気が向いたらで大丈夫です。

いつも記事を楽しく読ませていただいている2人を勝手に指名させてもらったので、すこしどきどきしていますが笑、
どんな「る」のお話が生まれるのか、
ひそかに楽しみにしています!

こちらが、もともとの企画記事だそうです。
気になった方はぜひ覗いてみてください。

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