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読書ノート16

●爆弾犯の娘 梶原 阿貴
「事実とは小説より奇なり」
幼い私は母と二人暮らし。
いや、奥の部屋にいる男はどうやら私の父らしい。しかし私は、父の名を知らない。
母より課せられる謎のルールの数々。
「友達を家に連れてきてはいけない」
「家の場所ですら、誰にも教えてはいけない」
そして繰り返される、近所を転々と移動する謎の引っ越し。

「おかえり。僕もさっき戻ったところなんだ」
「お仕事お疲れさまでした。すぐご飯にするね」
何度か出てくる、夫婦の間で交わされるごく普通のフレーズが、こんなに奇妙にグロテスクに思えるとは…
女優を経て脚本家となった梶原さんの、信じがたい家族の物語。今年前半期1番のおすすめ。

●夏帆 村上春樹
最近は意外とアンチも多い(?)と噂の村上春樹最新作。あなたはどうですか?(笑)
村上さんの小説を読むときは、なぜか他の本を読む時とは違った脳の部分を使っているなと感じます。
どの小説も、あらすじを説明するのが難しく、なのに読後はその世界観にどっぷりはまって、「よかったなぁ」と思える。どちらかとういうと、好きなアーティストのアルバムを、通しでがっつり1枚聴くのと感覚が近い。
村上さんの小説のリズムやピッチや旋律を、
心地よく感じながらいつのまにか読み終わっている。そんな感じ。
音楽の好みのように、「あう」「あわない」に近いのかな(ぜんぜんこの本の紹介になってない…)
ちなみに私の中では、村上春樹と大滝さんの親和性はとても高い。

●斜め45度の処世術 小川哲
著者の観点からさまざまな世相の「はてな」に切り込んでいく。「斜め45度」とは言いながら、そこまでひねくれた視点とは思えないのは、著者の照れ隠しかもしれないし、読んでそう思う私もまた、同じくらいの角度で捻くれているからかもしれない。

●愛おしいけどアホなお人 稲垣 峰子
このnoteを書いた時に見つけた本。稀代の喜劇役者・藤山寛美を、支え続けた奥さんの視点から描いた1冊。

昭和の喜劇俳優・藤山寛美。
その破天荒な生きざまに、支える奥さんは大変やったろうなぁと思っていたら、奥さんの書いた本がありました。
「遊ばん芸人は華がのうなる」というのは、寛美の母のおしえ。女性関係を咎めると、お姑さんから怒られたとか。
遊びも浪費もけた違い。
腹を立てながら、傷つきながら、それでも離れられない魅力があった…
ほんと、罪なおひとです、寛美はん。

●急に具合が悪くなる 宮野真生子・磯野真穂
もし余命が限られた人と、手紙のやり取りをすることになったら。その距離感はとても難しいだろうなと思う。
最初はその戸惑いのキャッチボールから始まる。しかし、リミットが近づくに連れ、その内容は「人間の存在について」への問いへフォーカスしてゆき、哲学者であり続ける宮野さんの思索を、人類学者の磯野さんが全身で引き出した。闘病記というよりは、「病と死というイベントにおける、人間の尊厳」にまつわる思想書。

●ヤクザときどきピアノ 鈴木智彦
長年、裏社会のルポルタージュを書いてきた著者が、ある日偶然見た映画の挿入歌アバの「ダンシングクイーン」に心を打ち抜かれ、「この曲をピアノで弾きたい!!」と唐突に思いつく。
50歳を過ぎ、ピアノ経験はなし。
そして救世主、レイコ先生現る!
果たして強面親父の願望は叶えられるのか!?

最後のピアノ発表会は胸熱(youtube動画有り)。思いを叶える情熱(と、さすがプロの取材と構成力)に勇気づけられる1冊。

前回の読書ノートはこちら!

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