スマホに頼らず16時間、東京を徹夜で歩いたら疲れたけど楽しかった話
こんにちは、暇人です。
私は知らない街を散歩するのが好きなのですが、最近ハマってる遊びに「エクストリーム散歩」というものがあります。
ざっくり言うと、「スマホを使わずに」「見知らぬ土地を」「ゴール目指して何十キロも歩く」という過酷な遊びです。
エクストリーム散歩について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
年末年始の予定がゼロだった私は、同じく暇そうな友人K君を誘って年越しエクストリーム散歩に繰り出すことにしました。
スタート地点は東京都足立区にあるラーメン屋「田中商店」です。
前から気になってたけどアクセスが悪い上に、足立区に用がないので行かずじまいでした。
大晦日も営業していたので、ここをスタート地点にしました。
ゴールはお互いの自宅からのアクセスが悪くない、目黒駅にしました。
そして、チェックポイントとして亀有公園、柴又帝釈天、東京スカイツリー、東京駅、歌舞伎座、レインボーブリッジに寄ることにしました。

もちろんスマホ地図なしでこれらのチェックポイントをすべて通過した上で、ゴールにたどり着かなくてはなりません。
私もK君も神奈川出身で東京の下町なんてほぼ行ったことがなく、土地勘もありません。果たしてすべてのチェックポイントにたどり着けるのでしょうか。
21:00 田中商店 スタートから0km

板橋区にあるK君の自宅から、レンタルサイクルを1時間漕いでスタート地点にたどり着きました。
大晦日の夜でも営業しているのはありがたいですね。
20分ほど並んで着席。期待通りのこってり博多ラーメンで、大満足です。
これからの長い夜に備えて、もちろん替え玉しましたよ。

お腹を満たしたところで、スタートです。
まずは第1チェックポイントの亀有公園を目指します。
「葛飾=こち亀」という安直なイメージで選びました。
とりあえず東に進めば足立区を脱出できそうな気がしたので、東(と思われる方向)へと歩いていきます。

スカイツリーには何度も助けられました
1時間ほど歩いたでしょうか。
足立区から中々出れず焦り始めたとき、そこそこ大きな川に出ました。

川の名前を確定させるべく、周辺を注意深く観察すると、「コーポ中川」というアパートがありました。
中川!
こち亀の主題歌「中川に浮かぶ〜♪」が脳内再生されました。
これを目安に南下していけば、こち亀のロケ地、亀有公園に近づくはずです。
ただ、川沿いはつまらないので早々に外れて、住宅街の中を南下していきます。

20分ほど歩くと、狙い通り「亀有」を発見!
1時間以上さまよった足立区をようやく抜け、念願の葛飾区に入れました。

確か公園は駅の近くにあった気がするので、亀有駅を目指せば、亀有公園にたどり着けるはずです。
駅前=地価が高いという方程式に基づき、コインパーキングの最大料金が上がっていく方向へ進んでいきます。
これは数々のエクストリーム散歩を乗り越えた経験から編み出した技です。
そして、最初の「亀有」との遭遇からそう経たずして、無事に亀有公園に到達することができました!
23:20 亀有公園 スタートから9km

呑み歩きはエクストリーム散歩の醍醐味の一つ

ここまでは迷わずに順調に来れました。
この調子で次のチェックポイント、柴又帝釈天を目指します。
帝釈天もこち亀の主題歌で歌われるほどのメジャーどころなので、「柴又」の地名を見つければ早いでしょう。
そう思って意気揚々と歩いていったところ…
江戸川区に入ってしまいました。
柴又は葛飾区のはずなのに、葛飾区を抜けて江戸川区に入ったということは、つまり…迷いました。


とりあえず心を落ち着かせるために葛飾区へ戻り、地元住民でにぎわう見知らぬ神社で甘酒をいただきました。

並びすぎててお参りは断念
ここで、ルール上5回まで使える「路上の地図」カードを惜しみなく切ります。

現実を受け止めきれないK君
どうやら、柴又からかなり離れた位置まで来てしまったようです。
ここでまさかの大幅なロス。
しかし、迷うことは想定内、むしろエクストリーム散歩の醍醐味です。
人生、思いどおりに行かないこともある。
迷った挙句、思いもよらない場所にたどり着くこともある。
エクストリーム散歩は、人生そのものを体現しているのです。(なんのこっちゃ)
再び江戸川区に入らないよう気をつけながら、柴又帝釈天を目指して今度は北上していきます。
たまに見えるスカイツリーの位置を参考にしながら進むこと、1時間半…。
どうにかこうにか柴又帝釈天にたどり着きました。
2:10 柴又帝釈天 スタートから20km

亀有公園から柴又帝釈天まではせいぜい3キロ、50分も歩けば着く距離ですが、なんと3時間近くも掛かってしまいました。

しかし、初めて訪れた柴又帝釈天は雰囲気が良く、すでに心身ともに疲れているにも関わらず普通に観光を楽しんでしまいました。 また改めて訪れたいですね。

さて大幅にロスしてしまった我々ですが、次のチェックポイントは少し難易度が下がります。
そう、すでに何度も我々を救ってくれている、東京スカイツリーです。
日本一高い建造物だけあって、どこからでもよく見える…
確かにそうなのですが、意外と歩いていると周りの建物に隠れて見えないものです。
しばらく歩いては、川沿いなどの見通しのいい場所に出てその姿を確認する作業が必要になります。


それを繰り返すこと、2時間半。
ついにそびえ立つ巨塔のもとにたどり着きました。
5:00 東京スカイツリー スタートから35km

さすがに迷わずに来れましたが、ここまで来るのに、予想より大幅に距離と時間が掛かってしまっています。
夜の都内を抜け、レインボーブリッジの初日の出でフィナーレを飾る―――
そんな理想を描いていましたが、すでに朝の5時。その理想は、諦めるしかなさそうです。
しかし思いどおりに行かないことを楽しむのがエクストリーム散歩。
マラソンでも一番きついと言われる35kmを超え、我々のライフはゼロに近いですが、次のチェックポイント、東京駅に向けて淡々と歩みを進めます。

コンビニに肉まんが入荷する時間になりました
隅田川を渡り、人々でごった返す早朝の浅草寺を横目に歩いていると、空がだんだんと白んできました。

隅田川に掛かる名も知らぬ橋には、初日の出を見るために地元住民が続々と集まってきています。
我々は一旦歩みを止め、ここで今年の初日の出を迎えることにしました。

東京らしい初日の出ではないでしょうか
残念ながらレインボーブリッジからではありませんでしたが、疲れ果てて口数が減った我々に、前へ進む確かなエネルギーをもたらしてくれました。
朝日に照らされる新年の東京を進み、1時間ほどで東京駅に到着しました。
8:00 東京駅 スタートから45km

いつの間にか、フルマラソンの距離を超えていました。
この時点で私は、「ランナーズハイ」ならぬ「ウォーカーズハイ」状態になっていました。こうなったらどこまでも歩いていける気がします。
悲鳴を上げていた足首や膝も、諦めたのか大人しくなっていました。
序盤から腰が痛いと言っていたK君も、痛みのピークは過ぎたようです。
この勢いのまま、残るチェックポイント2つを目指しましょう。
8:30 歌舞伎座 スタートから47km

~アダチカラキマシタ~
30分ほど歩いて、5番目のチェックポイント、歌舞伎座に着きました。
すでに11時間半歩き続けた我々にとって、徒歩30分など可愛いものです。
残るチェックポイントはあと一つ。
ラスボスのレインボーブリッジへと向かいます。
ご存知の方もいるかもしれませんが、実はレインボーブリッジって徒歩で渡れるんです。
それを知ってから、次のエクストリーム散歩では絶対に徒歩でレインボーブリッジを渡ると決めていました。
歌舞伎座から勝鬨橋を渡り、海に向かって歩みを進めます。

下町のごちゃごちゃした街並みとは正反対の、理路整然と道路が敷かれた埋め立て地を進みます。
いくつかの橋を渡り、視界が開けたとき、それは姿を現しました。

…思ってたのと違いました。もっと近いと思ってた。
見えた喜びと「あそこまで歩くんか…」という絶望とが入り混じった複雑な感情です。
これがごちゃごちゃした住宅街ならいいのですが、何の面白みもない、平坦で空っぽな風景の中を歩くとなると話は違います。
2人とも無言で、とぼとぼと歩きます。
この区間が精神的に一番辛かったです。
10:20 レインボーブリッジ スタートから55km

やっとの思いでレインボーブリッジ遊歩道の入り口にたどり着きましたが、渡りきらなくてはなりません。
車で渡るのは一瞬ですが、徒歩だと20分掛かります。
ウォーカーズハイもとっくに切れ、再び痛みだした脚を引きずりながらひたすらに歩みを進めます。


あそこから来たのか…

許してくれ、こんなに歩かせるつもりはなかったんだ
嘘みたいに天気が良く、橋の上からの風景は素晴らしかったですが、我々にそれを楽しむ余裕はすでにありません。
冷たい風が吹きすさぶ中を、早く渡りきりたい一心で歩きました。

何とか渡りきり、あとはゴールの目黒駅を目指して歩くのみです。
しかし悲しいかな、我々はここから目黒駅への行き方を知りません。
何となく西の方、ということ以外は何も知らないので、とりあえずレインボーブリッジが東西に掛かっていると信じて、レインボーブリッジを降りた方向にそのまま進みました。
田町駅でJRの線路を渡り、しばらく進むと、見えるはずのないものが目に飛び込んできました。

絶対おかしい。
東京の土地勘が曖昧な私も、東京タワーがレインボーブリッジよりだいぶ北にあることは知っていました。
そう、「レインボーブリッジが東西に掛かっている」という思い込みのせいで、目黒駅とはかなり違う方向に進んでいたのです。

速攻で方向転換して、南西(と思われる方向)に進んでいくと、麻布十番などと言う、金持ちが住んでいるらしいエリアに迷い込みました。

どこで何を思って撮ったのか記憶がない
「目黒駅は白金とかいうこれまた金持ちが住んでいるらしいエリアに隣接している」という知識はなぜかあったので、麻布十番が白金に近いと信じて進みました。
白金、白金台…「シロカネ」なのか「シロガネ」なのか分からぬまま、高級住宅街を死んだ顔をして歩いていきます。
すると突然、喋らなくなっていたK君が声を上げました。
「ここ知ってる!!」
腰が限界に達し、牛歩状態になっていたK君の歩みが早まります。
急いでK君に付いていくと、なんと道路標識に「目黒駅」の文字が。
すっかり忘れていたそうですが、幼い頃お母さんと目黒駅に来たことがあったそうで、奇跡的に当時通った場所に差し掛かったことで記憶がフラッシュバックしたようです。
幼少の彼も、まさかアラサーになってこんなボロボロの状態で同じ場所を訪れるとは夢にも思わなかったでしょう。
そんなこんなで、ついに…
12:50 目黒駅 スタートから64km

ゴールしました!!

かれこれ10回近くエクストリーム散歩にトライしてきたなかでも、最も長く過酷な回でした。
そして実はK君、今回が初参加でした。
「40kmくらいだと思うよー」と伝えていたので、彼には悪いことをしました笑
でも「またやりたい」との言葉をいただいたので、彼も中々なドM根性をお持ちのようです。
さて、去年からろくに食事も取っていない我々は、そこから一番近いガストに駆け込み、千と千尋の神隠しの豚になった両親並みに品々をかっ喰らいました。



ただのガストなのに(失礼)、涙が出るくらい美味かったです。
ガストではち切れんばかり食べた我々は、お互いの健闘を称え、目黒駅からそれぞれ帰路に着きました。
不思議と歩いているときは眠くなりませんでしたが、電車の席に座った途端に意識がなくなり、その後どうやって帰ったかは全く覚えていません笑
とにかく、30年近く生きてきて最も過酷でエキサイティングな年越しでした。
ここまで読んでくださった皆さんの大多数はドン引きしているかと思いますが、私と同じベクトルのおバカな方は、たまにはこんな年末年始を過ごしてみるのも悪くないのではないでしょうか。
