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遠野遥『教育』-それは人を型にはめること-

こんにちは、ララです。
今日のおすすめ本は、遠野遥さんの『教育』です。

本の基本情報

タイトル:教育
著者:遠野遥
発売日:2026.4.10
出版社:河出文庫

あらすじ

成績向上のため、一日三回以上のオーガズムを推奨する全寮制の学校で、念力テストの対策や授業、翻訳部の部活動に励む私は、ある日、友人の真夏に恋人ができたのを知って――。規律と欲望が渦巻く閉鎖空間で、運命に翻弄される少年少女たちを、冷酷な筆致で描いた、芥川賞受賞第一作となる初長篇。

『教育』裏表紙より

読後の思索

巻末にある吉川浩満さんによる解説は、

いったい何を読まされているのか。

『教育』解説より

から始まる。わたしも全く同じように感じた1人だ。それも、何度も、何度も。「これは一体何なんだ」と思った。

破局』の主人公と同じように、今作の主人公も感情がほぼない。学校が推奨する生活を送るように努め、日々淡々と過ごしている。

学校では、1日3回オーガズムに達することが推奨され、栄養がしっかりとれる食生活、充分な睡眠、定期的な運動などの規則正しい生活を送る。そしてテストは、裏返しにした4枚のカードから指定されたカードを当てるという、いわゆる「透視」のようなもので行われる。そのテストの結果が反映された成績で、自分の部屋の仕様や学校での階級が決まる。

この学校で行われていることは、奇妙に思われることもあるけれど、大筋は今現在、リアルの世界に存在している学校とほとんど変わらないように思う。何が推奨されているかは違えど、「人を型にはめる」ということに違いはないからだ。

その「型」にうまくはまり込める人は成績上位者となり、学校での階級を上っていく。逆にその「型」にはまれない人は成績下位者となり、学校での階級を下っていくことになる。

後半で、友だちの真夏が、

「ねえ、先生の言うことに従っていれば大丈夫とは限らないよ。ちょっとは自分で考えないと、勇人が壊れちゃう」

『教育』P195

と言うシーンがある。それに対して勇人(主人公)は、どうすれば成績が上がるか一生懸命考えているし行動にも移してきたと反論する。

しかし、真夏が言っている「自分で考えないと」というのは、「そもそも成績が上がることは本当に大切なことなのか?」ということだ。残念ながら主人公にその真意は伝わっていない。

現実社会でも、学校に通い、勉強し、いい成績をとり、いい会社に就職し、たくさん稼ぐことがいいことだとされている。多くの人は、いまだにそれを「正しい道」と信じて生きている。

わたしはそれが「間違っている」と言いたいわけではない。それは真夏だって同じだと思う。人はそれぞれ違う人間なのだから、感じることも考えることも様々で、1つの「正しい型」にはめることは、そもそも不可能だ。「正しい道」があるのではなく、人それぞれに、それぞれの「正しい道」があるのだと思う。

主人公は翻訳部に所属していて、『ヴェロキラプトル』という小説を訳している。そしてその小説に出てくる男が小説を読むシーンが出てくる。つまり、作中作の中の作中作が出てくる。

また、主人公はある日たまたま出会った女の子に催眠術をかけてもらう。そのとき女の子は、(決して短くはない長さの)不思議な物語を聞かせてくれる。

これらの描写が相まって、この作品を読んでいると、夢と現実の境界線が薄くなっていくような感覚を抱く。悪夢を見ていて、現実に戻ってきたと思ったのに、そこも悪夢と同じような環境だった、というような感じと言えばいいだろうか。とても不思議な読後感だった。

この作品がおすすめな人

・学校教育に疑問を持っている人
・若手作家の上質な純文学を読みたい人
・不思議な読書体験をしたい人

遠野遥さんの作品は、『破局』『教育』を読んだ。デビュー作の『改良』も読んでみたい。


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