母、仕事クビになりました
木曜日。一昨日のこと。
母から1本のラインが届いた。
「クビになったー!」
なんと潔いその1文。
清々しいまでのその文面から、解放感にも似た母の喜びが手に取るように伝わってきた。
ちょうど今の会社で働き始めて1年ほどになる。
派遣社員として勤める母は、いつものごとく全く職場に馴染めず、馴染めないどころか社員たちからの陰湿な攻撃を喰らう毎日を送っていた。
仕事はまともに教えてもらえず、陰口、仲間はずれ、挨拶は無視。
母の直属の上司に当たる人がその課全体のボス的な存在になっていて、その人に気に入られなかったというのがどうやら原因らしい。
母は何かと人に嫌われる素質を持っているのか、とにかくいつも行く先々の職場で必ずと言っていいほどトラブってきた。その度にクビになるか、あるいは自分から辞めるかを繰り返してきて今に至っている。
ただいつもと違い、今回の母は1年近くもの間粘った。途中「もう無理」と泣き散らしたりもしたけれど、何度も口から出かけていた「辞めます」を必死に飲み込んできた。
そう、ここがポイント。
実は母、数ヶ月前から会社都合による退職、つまりクビになることを密かに狙っていた。
自分から辞める自己都合になってしまうと、もらえる失業手当の金額もその期間もわずかなものになってしまう。
今までだったらその場の感情に任せ、後先考えずさっさと離職していたのだけど、今回はかなり頭を使って計画的にクビになるよう事を運んでいった。
もちろん、わざと問題を起こしたりしたのではない。人間関係のせいでいかに業務に支障が出ているかということを、淡々と事実のままに役員クラスの社員に相談したり、派遣元の面談で別部署への異動を打診してみたり、とにかくそういう草の根的レベルで少しずつ事を動かしていった。
そしてついに、その願ったり叶ったりな「クビ」を獲得した母。
これで半年は失業手当がもらえることになる。私のバイトの収入と合わせたら十分生きていけるだけの金額になるだろう。
その半年の間で母がやることはただ1つ!
もちろん、漫画を完成させることだ。
私のフォロワーさんはご存知だろうが、今年57歳の母は漫画家になるべく作品の執筆に取り組んでいる。少し前、某大手出版社へ持ち込みに行った際のアドバイスを踏まえ、今新たにプロットを練っているところ。
この半年の間に何としても書き切って、それをまた新たに出版社へと売り込みに行く予定だ。今度こそ誰か担当編集者さんを付けてもらい、母の長編SFファンタジー連載への扉を開きたい。
来月で、いよいよ母はその劣悪な職場から解放される。
今回のクビはまさにチャンスそのもの。
まだ見ぬ未来に、娘の私までもがワクワクを隠せない。
北風アリア
追伸:サムネは母の手書き。こういうコミック・エッセイ風なタッチの絵は、実は私が小さい頃からしょっ中描いていたのです。
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