子供のためのオルセー美術館(249)青は緑の中へ/ゴッホ・群青の空の向こうへ
みんなが大好きなゴッホの空といったら?
あの黄色いテラスから、ちょっと見上げた星空とか、

レンガみたいな青が、いくつもいくつも重なったローヌ川の北斗七星の空とか。

ゴッホの空は、オレンジや黄色のあかりにさそわれて、遠い暗闇の紺青色も、すぐ手の届きそうな鮮やかな青になったりしました。
そして、晴れた日の明るい空はもちろん!
うずまきが教会の上をぐるぐるまわって、やっぱり、みんなの好きなゴッホの青い空です。

🌀🌀🌀
今度は細長いキャンバスに
でも今日の絵は、大地のずっと向こうに見える細長い空。さっきのゴッホの青とはちょっと違う色。

縦50センチ、横は1メートル。横にすうっと細長い絵です。
高さがたった50センチのキャンバスに、遠くまで広がる大地をゴッホはどうやって描いたのでしょう。
近づいて見てみましょう。
ジグザグに向こうまで
広い広いオーヴェルの平野には、いろんな種類の畑が広がります。
黄色く実った麦の穂は、みんな同じ方を向いて、風にザザザザと揺れているみたい。
すぐそこに生えている赤いのはポピーの花?

細い茎の先でヒラヒラ。赤い花びらは、あっちを向いたり、こっちを向いたり。ゴッホは、緑の畑に赤い点々を描きました。
ゴロンゴロン、キャベツみたいな野菜も、あそこに見つけた!

向こうまでギザギザに並んだ畑。
いろんなかたちの四角の畑は、右に左に向きを変えながら、ずっと奥までつながっていきます。

ぶ厚く盛り上がった絵の具。
草も麦も丘も、ゴッホの筆づかいで、奥へ奥へと動いていくように見えました。
高い地平線の空
こうして、左右に広がる畑が行きついたところは、ずっと向こうの青緑の空。
ここの空は上のほうにほんの少ししかありません。でも、なんてやわらかな色でしょう。

Van Gogh Letters — Letter 896, 2 July 1890
「ここは、やわらかな緑、黄色、そして青緑なんだよ」と、ゴッホは手紙にも書きました。
このオーヴェルの平野には、そんな色が次から次へと広がっていたのです。
緑の大地はいつのまにか、遠くの青緑の空へ。空と大地は、溶けあっていくみたいです。
たった50センチの高さしかない絵なのに、見ているうちに、なんだかゴッホと一緒にずいぶん遠くまで遠足しちゃいましたね。
おしまい

Champs de blé près d'Auvers-sur-Oise (Die Ebene von Auvers)20 - 22 JUIN 1890
Vienne, musée du Belvédère
オーヴェル=シュル=オワーズ近郊の麦畑(オルセー美術館題名) 1890
オーヴェルの平野(ベルベデーレ美術館題名) 1890
ウィーン、ベルヴェデーレ美術館ーオルセー美術館ゴッホ企画展
雨上がりのような青緑の空が、オーヴェルの平野の上に細い帯となって低く広がっている。風景は、まるでその色を吸い込んでいるかのようである。前景では赤やオレンジの花々がまだ鮮やかに輝いているが、地平線へ近づくにつれて、さまざまな色調はしだいに強く溶け合っていく。
奥へと深く伸びる空間と高く置かれた地平線が、この土地の果てしない広がりをとらえている。勢いのある筆触は、大地の起伏を形づくっている。
ファン・ゴッホは、人生最後の2か月をここオーヴェルで過ごした。弟テオから、長いあいだ待ち望んでいたカンヴァスと絵具が届くと、彼はまるで制作に取り憑かれたかのように次々と絵を描いた。この作品をはじめ、数十点もの絵画がこの時期に生まれている。画家は、この作品を完成させて間もなく亡くなった。
この絵でまず目を引くのは、人物がまったく描かれていないことである。しかし、それ以上に印象的なのは、画面の奥深くへと広がる空間で、その遠近感は意図的に強調され、畑を区切るジグザグの線によって組み立てられている。
横に大きく広がった画面は、奥へと吸い込まれるような感覚をさらに強めている。縦約50センチに対して横約1メートルという、非常に細長い画面。こうした横長の「ダブル・スクエア」の形式は、オーヴェル時代のゴッホが集中的に試みた特徴的な形式でもある。オルセー美術館も、この時期の重要な造形的実験として位置づけている。
地平線は高い位置に置かれているため、空は画面上部に細い帯のように残されるだけだが、その空の緑がかった色は畑の色と溶け合い、画面の彼方まで大地が続いていくような、果てしない空間の感覚を強めている。

Terrasse du café le soir 1888 musée Kröller-Müller
夜のカフェテラス 1888 クレラー=ミュラー美術館

Vincent Van Gogh La Nuit étoilée 1888
星月夜 1888 オルセー美術館

L'Église d'Auvers-sur-Oise 4 - 5 JUIN 1890
オーヴェル=シュル=オワーズの教会 1890 オルセー美術館
オルセー美術館発信 ゴッホ展紹介ビデオ 30秒 ワーグナーの曲とともに🎧
お読みいただきありがとうございました。
日本に渡った夜のカフェテラスが大変な人気と伺いましたので、久しぶりにゴッホをご紹介しました。
オーヴェルでゴッホが試みた「ダブル・スクエア」と呼ばれる横長の風景画は13点。最晩年の短い期間に意識して選んだ特別な形式で、そこにはなお新しい表現を探ろうとするゴッホの意欲が感じられます。
ゴッホは空にも、さまざまな色を見つけていました。
アルルでは「夜は昼よりもさらに豊かな色をもっている」と書き、ローヌ川の星月夜では「空は青緑、水はロイヤル・ブルー」。オーヴェルの教会では「純粋なコバルトの、深く単純な青」と記しています。そして今回の広い畑には、「やわらかな緑、黄色、そして青緑」。
群青の星空に深いコバルトの空、そして緑の大地へ溶けていくような青緑。
色を見いだしたときの素直な喜び、自然に向けたやさしいまなざしをゴッホの絵に感じられる方も多いかもしれません。
オルセー美術館発信ゴッホ企画展解説 8分 自動翻訳日本語可
🖼️いつもご覧いただいてありがとうございます。「子供のためのはじめての美術館」では、美術館の公式資料や作品・書簡などの一次資料をもとに、できるだけ個人的な解釈に頼らず、子どもにも楽しめるやさしい言葉でご紹介したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします🙇
