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盆休みだけは、あの頃に戻る

どんなに今が最高でも、二度と戻らない高校時代の日常を懐かしく感じた雲です。

盆休みの前後になると、高校時代の同級生から連絡がきます。

普段は関東で働いているのですが、盆になると数日だけ関西の実家へ帰ってくる。2025年は高校時代を過ごした学校や廃墟を一緒に回りました。そのときのことは、去年の記事にも残っています。

さて、今年は何をしようか。

友人に聞いてみます。

「何でもええ」

出た。

丸投げです。

何でもええと言う人間ほど、こちらが「じゃあ朝5時集合で六甲山登るか」と言うと嫌がります。

仕方がないので二つ案を考えました。

案1は北条鉄道。

1両編成のローカル線にガタゴト揺られて、昔ながらの木造駅舎なんかを見て回る。夕方から居酒屋。

これは大人の休日という感じがして、なかなかいいです。

案2は射撃場。

私がクレー射撃をしているところを見てもらい、そのあと銃シミュレーターでクレー射撃と猪狩りを体験してもらう。夕方から居酒屋。

「どっちがいい?」

「どっちでもええ」

またそれか。

私は本当は案1がよかったのです。

ローカル線に乗って、古い駅舎を見て、夕方から酒を飲む。

でも、ふと来年の今頃を想像しました。

私は今、心身ともに充実しています。

たぶん、今が最高です。

でも来年に回したとして、来年もコイツと元気に会えるとは限りません。

銃の腕も、今が一番いいところに来ています。

先日の射撃場協会の大会では県6位。猟友会の大会でも、いろいろ失敗しながら県11位でした。

射撃も、来年まで同じようにできているかは分かりません。

目も、反応速度も、足腰も変わっていく。

幼い頃、親父が朝に仕事へ出かけ、そのまま事故で帰って来なかったことは、今でも心のどこかに残っています。

朝、普通に会った人と、夜も普通に会える。

そんな保証はどこにもありません。

だったら、身体が動いて、銃も一番当たっている今を見せておこう。

「私は今、こんなアホなことをやっている」

私らしく、周りの人間も好きなことにつき合わせます。

じゃあ、見せてやろうじゃないか。

射撃場に決定しました。

その日の朝一番は、すでにキックボクシングの予約を入れていました。

なので普通に行きます。

サンドバッグを30分間どつきます。

蹴ります。

もう一度どつきます。

何と戦っているのか、自分でも分かりません。

最後にヨガウェア着たインストラクターのおねーさんと挨拶する瞬間が大好きです。

お綺麗です。

しかし目を一瞬合わせるのが精いっぱいなので、急におとなしくなって帰ります。

家に戻り、今度は銃を車に積み込んで友人の実家へ。

車を乗りつけると、おっちゃんとおばちゃんが私の高級外車を見て驚きます。

「あの悪ガキが、えらなったのー」

「いや、元から優秀だろ。俺の辞書には常勝という文字しかない!」

などと適当なことを言います。

高校時代を知っている人間には、こういう嘘は1秒でバレます。

友人を乗せて射撃場へ向かいます。

到着すると、最新設備の射撃場で銃声がバンバン響いています。

普段この世界に縁のない友人は、明らかに緊張しています。

しかも私は、このニッチ極まりない射撃の世界でYouTubeをやっているので、射撃場へ行くと知らない人から声をかけてもらうことがあります。

「いつも見てます!頑張ってください!」

「ありがとうございます。チャンネル登録といいねをよろしくお願いします!」

友人の前なので、いつもより3割ほど偉そうに言います。

その日は顔見知り3人で射撃をしました。

スコアは私がダントツでトップ。

元国体選手にマンツーマンで指導を受けています。

県内の猟師の大会でも10位前後にいるようになりました。

昔から私を知っている友人にしてみれば、

「お前、いつの間にそんなことになったんや」

という感じでしょう。

射撃仲間とも、あちこちで会話します。

高校時代の友人からすると、私が自分の知らない世界で、知らない人たちと笑っている姿を見るのは、少し不思議だったのかもしれません。

そのあと、友人にも銃シミュレーターを体験してもらえるよう手配しました。

シミュレーターといっても、持つ銃は本物とほぼ同じ重量があります。

友人は持った瞬間、

「重っ!」

そりゃそうです。


構え方も知らなければ、照準の合わせ方も知りません。

今度は私が先生になって、銃の構え方や狙い方を説明します。

高校時代、勉強を教える側はだいたいコイツでした。

まさか何年も経って、私が銃の構え方を教える日が来るとは思いませんでした。

1時間ほど遊んで、クレーを大量に撃ち落とし、最後は猪を10頭ほど仕留めました。

もちろんシミュレーターの中の話です。

もし、何年か先。

盆になってもコイツから連絡が来なくなったら。

私も連絡しなくなって。

北条鉄道にも乗らず、射撃場にも行かず。

ある年、実家の近くを車で走っていると、ふと、

「そういえば、昔こいつと毎年遊んでたな」

と思い出す日が来るのかもしれません。

高校を卒業するとき、何年たっても友達でいるなんて約束した記憶はありません。

「またな」

ぐらいだったと思います。

それなのに、学校が変わっても、仕事が変わっても、住む場所が離れても、なぜか盆になると会っています。

特別なことをしているつもりはありません。

去年は廃墟。

今年は射撃場。

くだらない話をして、酒を飲んで、喧嘩して、また笑う。

でも、人生の最後に残る記憶というのは、案外こういう一日なのかもしれません。

そんなことを考えながら、いったん私の家まで戻って車を置き、そこから歩いて居酒屋へ向かいました。

最近は本当に店の予約が必要になりました。

私の生活圏は人口が増え続けていて、食事をするにも予約必須です。

人が増えて何をするにも順番待ちで不便です。

店に入り、酒を飲みながら、

「相変わらず体力バカやな」

などと言われているうちに、気分はすっかり高校時代へ逆戻りしました。

すると友人が突然、

「そういえば、お前、体育の授業中に短パン破れたよな」

と言い出します。

昔の話を、なぜ今ここで掘り返す。

私も忘れていたのですが、言われてみれば思い出します。

体育の授業中に、何かの拍子で短パンが派手に破れました。

高校生です。

一番そういう事故を見られたくない時期です。

当然、周りは大笑い。

私は必死で隠します。

コイツも、もちろん大笑いしていた側です。

「お前、あのとき本気で怒ってたよな」

「当たり前じゃ!」

酒を飲みながらそんな話をしていると、体育館や教室の空気まで、なんとなく戻ってきます。

高校時代、学力はコイツのほうが上でした。

ただし、二人ともモテないタイプ。

モテない者同士でよくつるんでいました。

お互い進学して別々になりましたが、友達付き合いは続きました。

ところが、コイツは顔のわりに、ちゃっかり彼女を作ったのです。

まあ、性格は良かったですからね。

私にはもったいないくらい、いい奴です。

しかも、その彼女がよく見ると私の後輩でした。

学校で会うと、こちらにニッコリ笑う。

そして本命の彼氏らしきチャラ男とイチャイチャしている。

トンデモない女です。

しかし顔はいい。

スタイルもいい。

好きか嫌いかと言われると、好きです。

実は当時、何度もコイツに言おうと思ったことがありました。

しかし結局、言えませんでした。

それを今回、酒に酔った勢いで口にしてしまいました。

すると、

「それ、知っとったで」

……知っとったんかい。

そこから友人が、昔の暗い苦悩の思い出をタラタラ話し始めます。

私はそれを聞いているうちに笑いが止まらなくなり、大笑いしておちょくっていたら、とうとう大喧嘩。

「大体、お前ごときブサイクが俺より先に彼女ができるなんていまだにムカついてる!!」

みたいなことまで言った記憶があります。

我ながら最低です。

しばらくすると酔いも少し醒めて、無事に仲直りしました。

短パンが破れたこと。

彼女のことで悩んでいたこと。

当時はそれなりに大事件だったことも、何十年も経つと酒のつまみになります。

あの頃は毎日のように顔を合わせていました。

くだらないことで笑って、怒って、また次の日には普通に学校へ行く。

あのときは、それがずっと続くような気がしていました。

でも、もう二度とあの日常には戻れません。

今のほうが自由です。

好きなこともできる。

昔よりお金もある。

射撃も、釣りも、ダイビングもできる。

今が嫌なわけではありません。

むしろ、今が一番いいと思っています。

それでも、戻れないと分かっているからこそ、何でもなかった高校時代の一日が妙に懐かしく感じるのでしょう。

そんな流れで、なぜか趣味の話になりました。

私が射撃、キックボクシング、釣り、船、ダイビングと、次から次へいろんなことをやっているので、友人が聞いてきました。

「趣味って、どうやって見つけるん?」

「俺、趣味ないねん」

意外な質問でした。

さっき余計なことを言って怒らせたばかりなので、今度は真面目に考えます。

でも考えてみると、私は「趣味を探そう」と思ったことがありません。

目についたもの。

誰かから聞いたもの。

テレビやネットで見たもの。

その中で、

「これ、面白そうやな」

と思ったら、とりあえずやってみる。

向いているかどうかなんて、やる前には分かりません。

上手くできなくてもいい。

一回やって面白くなければ、やめればいい。

そのうち何度もやりたくなるものだけが残っていく。

私は、その残ったものを「趣味」と呼んでいるだけなのだと思います。

趣味は探して見つけるものではなく、とりあえず手を出したものの中から、生き残ったものなのかもしれません。

そんな話をしているところへ、友人を迎えに来る車が到着しました。

私はそこで別れ、自宅まで送ってもらう友人を見送りました。

来年の盆も、たぶんまた連絡が来るのでしょう。

そのときコイツから、

「最近、こんなん始めてん」

と、何か面白い趣味の話を聞けたらいいなと思っています。

まあ、その前に私が聞くことになるでしょう。

「来年、何する?」

そして返事は、おそらくこうです。

「何でもええ」

少しは進歩せえよ。

この記事はYouTubeの射撃動画の裏話になってます。
動画も見て頂けると嬉しいです。


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