小説のモブキャラ作り【実例編】
前説
こんにちは。
昨日の記事の続きです。
小説における「モブキャラ」のセリフは
漫画における背景(バック)と
役割が似ている
…というお話をしました。
最後は説明が面倒になって
逃げちゃったんですけどね。
逃げたままでは終われない。
ということで。
今日は、私の作品から
「モブキャラ代表」を選び、
一例としてご紹介しようと思います。
そのキャラとは
じゃあ私は
モブキャラの描写を
どのように行っているのか?
ここで、
noteの姉妹サイト「Tales」で掲載中の
私の作品「白銀の騎士2」に
登場するモブキャラを
例にあげたいと思います。
彼の職業は「医師」です。
まあ、主人公の主治医ですかね。
というのも。
このお話の主人公(15歳の少年)は、
冒頭から過酷な目にあうんですね。
目の前で肉親をむごたらしく殺されたり、
そのはずみで人を殺してしまったり。
そういった体験もあり、
第2部ではPTSD含めて
精神的に危ういところがある、と
いう設定になりました。
じゃあ、医師を出すのが
「主人公の状態」を説明するのに
いちばんいいんじゃないか。
そう思って、主人公が乗る巡洋艦の
「船医」を設定しました。
モブキャラの役割とは
さて、問題はここです。
モブに期待される役割とは。
・悪目立ちさせたくない
・あまり出番を増やしたくない
・立派に「背景」だけ務めてほしい
うん、作者は勝手ですね。
しかし、モブのキャラが立ちすぎると
話の都合上、困るのは確かです。
とはいえ、「ただ出しただけ」の
薄っぺらいモブだと
話に出した意味がありません。
では、私はこの
「船医」のモブキャラを
どうしたか。
モデルを決めてみる
まず、名前を決めることにしました。
まあ、全編「ドクター」で通す手も
なくはないんですが、
一応、私が書いているのは
SF群像劇なので。
一度きりのガヤならともかく
作中に何度か登場する場合、
名前がないのは不自然です。
名前は
「ヤーブ・カメーイ」にしました。
由来は、ヤブか、名医(か)。
いやもう、この作品は
登場人物のほぼ全員(!)が
こういう安易なネーミングなので、
名づけは全く苦労しませんでした。
で、こういった
何度か登場するモブさんには
「見た目」のモデルがあると
作者がイメージを膨らませやすいです。
漫画やアニメのキャラでもいい。
アニメキャラは、声が脳内再生されるので
モデルとしてはおすすめですね。
もちろん身の回りの人物でもいいし、
ドラマの人物や、俳優さんでもいい。
こうしたモデルを思い浮かべて
そのモブの出演シーンを書くと、
とても描写がしやすいです。
具体的なイメージが
浮かびやすいですからね。
モデルはあの俳優さん!
では、私が例に出している
「ヤーブ先生」のモデルは
誰なのか。
はい、俳優の志尊淳さんです。
正確には、ご本人ではなく
演じられた役のイメージを
ミックスしています。
・長身で痩躯
・物腰が柔らか
・話し方が優しい
こういった特徴を踏まえて、
具体的には
・朝ドラ「半分、青い。」のボクテくん
・「女子的生活」の主人公
の役の印象をもとにしています。
ここまで決めれば、
もう、このモブを描くときの
イメージが勝手に膨らんでいきます。
場面の例をあげてみる
では、ここでこの
「ヤーブ先生」の出演シーンを
ピックアップしてみましょう。
まず、具体的な初登場シーン。
これを処方してくれたのは、船医のヤーブ・カメーイ少佐である。
軍医だなんて信じられないほど、柔らかな物腰が印象的な、30代半ばの男性だった。
かれに初めて会ったのは、この艦で最初に目覚めた日の午後である。
「コウくん。今は、なにも話さなくていいからね」
痩せぎすの長身をちぢこめるように椅子に掛けたドクターは、まずそう言った。
「でも…もし、話したくなったら、いつでも医務室においで。ぼくが、話を聞くからね」
穏やかに微笑んで、2種類の薬の説明をしてくれた。
「この青い錠剤は、眠れないときに飲んで。眠れるようなら、飲まなくていいよ。でも…」
そう言って、少し真面目な顔をした。
「この白い錠剤は、毎朝1錠。朝食後に、かならず飲んでほしいんだ」
コウは、ナオミの話から、この薬がどんなものか見当はついていたが、いちおう訊いてみた。
「これって、なんの薬なんですか?」
「うん。これはね、自分でも気づかない心の深い傷を、薄く、うすーく治してゆく薬、かな」
コウはたぶん、不機嫌な顔をしていたと思う。
「…精神安定剤、ってやつですか?」
「うん。そうとも言うね」
カメーイ先生は、否定しなかった。
「心の緊張をほぐして、気持ちを穏やかにする効き目もあるから、そういう分類になるのかな」
「先生。ぼくはもう、大丈夫です」
『精神安定剤』なんて薬を飲まなきゃならないほど、自分がひどい状態だとは思わなかったし、思いたくなかった。
けれど、ドクターはにっこり笑って、小さな声でこう言った。
「そうだね、きみは『大丈夫』だ。でも、ぼくの顔を立てると思って、しばらくの間だけ、飲んでくれないかな?」
次は、巡洋艦内での
重要な会議のシーンから。
「艦長」
あたりがざわつくなかで、椅子の音を響かせて立ちあがったのが、軍医のヤーブ・カメーイ少佐である。
「とうてい承服できません。いまのコウくんの状態で、身柄がゴモン都市連盟に引き渡されたら、どうなると思いますか?」
小首をかしげて、柔らかい口調で続けるが、その言葉には熱がこもっている。
「あちら側では、シュジーン博士は亡くなってなお、国家反逆の罪に問われていると聞きます。コウくんは最悪、拘禁されるかもしれない。そうでなくとも、大罪人の子として、周囲からひどい扱いをうけるに違いありません」
ガイアール艦長は短くうなずいた。
「ああ。ドクターの言うとおりだ」
「そんなことになったら、コウくんの精神状態は…」
カメーイ医師が続けようとするのを、艦長は手でさえぎった。
「みなまで言わずとも、全員がわかっている。そうだな?」
モブとはいえ、
イメージがしっかり出来ているので
わりとがっつり描写しているのが
おわかり頂けたかと思います。
逆に、
ここまで設定したら
もうモブとは言えないだろう、という
意見もあるかと思うのですが…。
「モブ」から「キャラ」へ
ええ、そうですね。
私、じつは後になってから
この「ヤーブ先生」の
設定書をつくりました。
読者的には、どうでもいい設定です。
しょせん作者の自己満ですので、
それでも興味ある方だけ見てください。
・船医:ヤーブ・カメーイ
ボクテくんのような優しく女子力の高い男子。30半ばくらい。
外傷の処置にも長けているが、本職(専門)は兵員の心的外傷等に対応する精神・心療内科。
この分野では名医である。脳科学にも詳しい。
苦手なのは内臓(主に消化器系)の病気関連。あと婦人科は壊滅的。
普通のクリニック程度の診断しかできない。
詳しいことは外部の医者と連携を取って対応する。
実は【自主規制】で、愛する恋人がすでにいる。
はい。
ここまでくると、
もう「モブ」ではありません。
立派な「キャスト」です。
きのうの記事で書いた、
私が「(漫画の)背景にシコシコ点描を打つタイプ」という意味が
納得いただけたかと思います。
まとめ
…という感じで
ご紹介してきましたが。
ふつうのモブキャラに、
ここまでする必要は
まったくありません。
けれど、
「モデルを設定する」方法じたいは
応用がきくものなので。
ぜひ、あなたの作品でも
やってみてほしいと思います。
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただいたチップは、創作のために大切に使わせていただきます