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「できません」という言葉を使いつづけた結果

皆さんは、アダム・グラント著『ギブ&テイク』を読んだことはありますか?

この本では、人を大きく3つのタイプに分けています。

  • 与える人「ギバー」

  • 受け取る人「テイカー」

  • 与えることと受け取ることのバランスを取る「マッチャー」

この3タイプの中で、長期的に最も成功するのは「ギバー」だと言われています。
そして、最も損をするタイプも、おもしろいことに「ギバー」だと言われています。

ただ、今回はこの「ギバー」についてお話しするわけではありません。

「何かをやってもらう人」だけがテイカーではない

先日、ある職員と面談をしていて、「テイカー」について考えさせられたのです。
私は今まで、テイカーとは「人に何かをやってもらう人」だと思っていました。
しかし、ある出来事をきっかけに、もう一つのテイカーがいることに気付きました。

それは、
「やらなくていい権利」を受け取る人です。

例えば、何か仕事をお願いすると、
「できません」
「無理です」
このように仕事を断る人がいます。
もちろん、ほかの仕事があって難しいことや、体調が悪くてできないこともあります。
問題なのは、自分がやりたくないことを理由に「できない」と言うことです。
本人は、別に「やりたくない」とは言いません。
もしかしたら、自分自身でも「やりたくない」と思っていることに気付いていないのかもしれません。

しかし、仕事を指示する側からすると、本当にできないのか、それともやりたくないのかは、日々一緒に仕事をしていれば何となく分かるものです。

断った仕事は他の誰かの仕事になる

「できません」と言ってその仕事を断ったとしても、その仕事自体がなくなるわけではありません。
誰かがやらなければならないのです。

「できません」と言った本人は、何かを奪っているつもりはありません。
むしろ本人からすれば、「私は誰にも迷惑をかけていない」と思っているかもしれません。

しかし、自分がやらなくて済んだ分、誰かが代わりにやっています。
自分が使わなくて済んだ時間を、誰かが使っています。

そう考えると、
「何かをもらうこと」だけがテイクではないのではないか。
私はそう思ったのです。

私はこれを、
「見えないテイク」
と考えるようになりました。

そして、この「見えないテイク」が組織の中で繰り返されると、別の問題が起こります。

組織からの孤立

「あの人に頼んでも、どうせできないと言われる」
周りの人たちが、そう思うようになるのです。
すると、最初からその人には仕事を頼まなくなります。
「あの人に言うより、自分でやったほうが早い」
「あの人に頼むと面倒だから、別の人にお願いしよう」
そうやって、少しずつ仕事を任されなくなっていきます。
本人からすれば、楽になったように感じるかもしれません。

しかし、仕事を任されなくなるということは、
期待されなくなるということです。
そして、期待されなくなるということは、
必要とされる機会を失っていくということでもあります。
「できません」と言えば、その瞬間は楽になるかもしれません。
しかし、その言葉と引き換えに、自分自身の「信頼」を少しずつ手放しているのかもしれないのです。

ではどうすればいいのか?

逆に、
「どうしたらできますか?」
「全部は難しいですが、ここまでならできます」
「やってみます」
そう言える人には、また仕事を頼みたくなります。
仕事を頼まれるから、経験が増える。
経験が増えるから、できることが増える。
できることが増えるから、さらに仕事を任される。
そして、周囲から必要とされる人になっていきます。
私は、ここに大きな違いがあると思っています。

もちろん、本当にできないことまで無理に引き受ける必要はありません。
体調が悪ければ相談すればいい。
能力的に難しければ、助けを求めればいい。

大切なのは、
「できない」で終わるのではなく、「どうしたらできるか」を考えること。

そして、
自分が「できない」と言ったその先で、
・誰がその仕事を引き受けているのか
・自分は期待されなくなるのではないのか
を想像すること。

これが大切なのではないでしょうか。

「テイク」から「ギブ」へ

私たちは、知らず知らずのうちに誰かから何かを「テイク」していることがあります。

お金や物だけではありません。

誰かの時間。
誰かの労力。
そして、誰かの優しさ。

「私は何ももらっていない」

そう思っていても、実は誰かが自分の代わりに何かを背負ってくれているのかもしれません。
だからこそ、時々、自分自身に問いかけてみる必要があるのでないでしょうか。

自分が「できない」と言ったことで、誰かが代わりに「やってくれている」のでは、と。

もし、そこに気付くことができれば、
「できません」
という言葉が、
「どうしたらできますか?」
という言葉に変わっていき、その小さな変化が、「テイクする人」から「ギブできる人」へ変わっていく最初の一歩なのかもしれません。

ちなみに、最も成功するタイプと最も損するタイプが共に「ギバー」なのかは、次回お話しします。


まとめ
「できない」と仕事を断ることは、他者にその分の労力を負わせる「見えないテイク」です。安易な拒絶は信頼と成長の機会を損なうため、代替案を考え「どうすればできるか」を模索し、ギブの姿勢を持つことが大切です。