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猪苗代湖界隈の巨樹と杜

 2024年の夏、猪苗代湖を自転車で一周した。
 猪苗代いなわしろ湖南の『清水川の梅花藻バイカモ』を見に行こう。2024年夏、そんな閃きで猪苗代湖を自転車で一周(イナイチ)した。熊の市街地出没が全国的に話題になる前年の話である。

 日本で4番目に大きな湖で、周回コースはおよそ60km。これを自転車で一周することを「イナイチ」という。
 宿でお借りした自転車で走ってみたが、猪苗代湖の周囲は驚くほど平坦なコースで、感激するほど快適だった。

 それをあまりにも美しい景色を眺めながら走るのだから、戻ってきた時には極楽浄土を見てきたかのような気分になる。

まさに天を映す鏡

 その道中で見かけた様々な樹々についても書き残しておきたい。


湖北の木陰

 郡山市から西へ、会津若松市へと抜ける国道49号線沿いに、猪苗代の町が広がっている。その国道沿いに風変わりな木造の建物が見えた。

ポツンと一軒

 大きく枝葉を広げる二本の木陰にデッキが伸びており、メインと思われるコンクリ作りの本体の両サイドには、中に浮いたような見晴らし空間がドッキングしている。

郊外レストラン「プラウ サンデッキ」

 物凄く気になる物件だった。
 なんと言っても、あの南側に大きく育った木陰が良いではないか。

湖西のお社

 道中目に留まって、思わずペダルを踏む脚を止めたのがこのお社だった。
 いわゆる「モリ」だろう。(私の地元では「モリさん」と呼ぶ)

大きく育った樹々に守られるように小さなお社があった

熊野のお山

 猪苗代湖の周囲を走っていると、こんもりと樹が茂った場所がある。
 それらもまた「モリ」だろうかと考えていたところ、石碑が並ぶところを通りがかった。

熊野山
(熊よりもトトロが居そう)

 少なくともここは信仰の対象なのだろう。或いはなんらかの伝承による謂れがあるか。

これについて興味が湧いたので調べている。
だがまだ最中ということもあって、この記事では話題にするに留めておく。

 少なくとも2025年の漢字にもなった「熊」を冠する名がついているのは、この猪苗代湖周辺が熊の頻出エリアであることに関係するのは間違いないだろう。

まあまあ怖い看板

集落のモリ

 ああ、ここも。この土地の杜なのだろう。
 この土地の人たちは木を大事にしている。そしてその木は水を育むものだ。そんな風に感じながら走る。

木陰は農作業の合間の休憩にも良さそう

 鳥居には「大山衹神社」とあるけれど、『大山祗神(おおやまづみのかみ)』のことかな。日本神話に登場する「山の神」の総元締めだ。

領地の境界として植えられたアカマツと宿でお借りした自転車

天然の生花

 酸性湖である猪苗代湖に生息できる生き物は限られており、それゆえに猪苗代湖は抜群の透明度を誇る。
 けれど湖南の一角に、ひっそりと小さな木が生え始めていた。

自然が作った天然の生花

 恐らく落ちた木や草の種が芽吹いたり朽ちたりしながら、寄り添い合って、時にはしたたかに互いを育んできたのだろう。
 あまりに健気で、頼もしくもあった。

樹窓のある風景|猪苗代湖南

湖南の巨樹

 あとで知ったことだが、猪苗代湖の周辺には巨樹が沢山ある。
 それは県のホームページで紹介されているくらいで、伝承のある木もあるようだ。

 実は『清水川の梅花藻バイカモ』をマップ上でルートやおおよその位置を確認している時に、近隣に「大仏のケヤキ」と表示されているのを見つけていささか興味を惹かれた。それで立ち寄ってみた。

東光寺境内

 ここは東光寺本堂には「中地の大仏」と呼ばれる「木造阿弥陀如来坐像」が納められている。その大仏にちなみ、境内のケヤキの巨樹は「大仏のケヤキ」と呼ばれている。
 本堂の四方を囲むように、大木が生えていて圧巻だった。

大仏のケヤキ(福島県指定天然記念物、推定樹齢550年)

 福島県内にケヤキの巨木は少なくないが、この辺りでも有数の大きさで、会津若松の「高瀬の大木(ケヤキ、国指定天然記念物)」に次ぐ巨木だそうだ。葉が生い茂る季節、かつては遠くから森のように見えたらしい。

大仏のケヤキ

 上の方にかなり太い枝?
 あるいは横へと伸びた幹が樹形全体を面白味のあるものにしている。

 そして同じ境内の、初めの境内全体の写真では手前に生えていた巨樹は「エゾエノキ」。モコモコの幹が迫力満点!

エゾエノキの巨樹(郡山市指定天然記念物、推定樹齢380年)

 あまり時間がなくて道沿いの2本しかゆっくり見らてなかったけれど、この奥(境内全体写真の左手)の大ケヤキも、この大エノキと同じく郡山市指定天然記念物だ。その樹齢は推定550年。
 ケヤキとエノキは同じニレ科で、広い括りではお仲間だ
 「大仏のケヤキ」も「大ケヤキと大エノキ」もしっかりとした案内板が設置されていた。

 そして今回写真を撮っていないけれど、本堂の向こう側にもう一本。
 それも中々の巨樹。

 こちらの『巨樹探訪』というブログで詳しく書かれているので、参考にさせていただきました。
 巨樹巡りって、物凄くロマンがある。
 人間には到底重ねられない時間の中で生きている存在だから。

 4本の巨樹に囲まれた東光寺境内は、それだけで大きな森に見える。
 その構造や配置は涅槃図(釈迦が亡くなる様子を描いた絵画)の「四双八本」と関係があるのだろうか。樹種は違うけれど、釈迦の臥床の四方に植えられた樹に相当するようにも見えるのだ。

四枯四栄
枯れた四本は「生命の終わり(肉体の死)」を、青々とした四本は「教えの永遠性(仏の真理)」を象徴する

 現世において、青々とした四本が教えの永遠性(仏の真理)を説いているのかも知れない。

東光寺のすぐ近くには、目を見張るような花畑があった

湖東の古木

 猪苗代湖の南では、名物のアカハラ天ぷら丼をいただいて、鬼沼の景色に感動し、中地大仏の巨樹の杜を眺めたあと、お目当ての『清水川の梅花藻バイカモ』にも辿り着けた。
 まだちゃんとシーズンで、思いのほか群生していたので驚いた。
 水が綺麗な証拠だ。

 そのあと湖北を目指して帰路につく。
 夕暮れまでにと急ぐ中、もう一本、地図上で気になっていた巨樹に立ち寄った。
 が、中地大仏の大ケヤキや大エノキを見た後では、拍子抜けするほど小さかった。けれど、落葉低木のマユミとしては、びっくりするほど大きいのだそうだ。

 確かに低木でこの幹の太さになるのに一体どれほどの時間をここで過ごしているのだろう。というか、低木でもこれほどの太さになれるものなのか。
 そういう驚きだ。

ヤブガラシ?に飲み込まれようとしているのが気になる。大丈夫かな……

帰路の風景

野原にポツンと残された丸い木
蕎麦

 猪苗代の町に数日間滞在し、思いつきで猪苗代湖畔を自転車で一周した2024年の夏。
 自らの身体で体感した地形、未だ目に焼きついて離れない鮮やかな夏の景色、ゆく先々で出会った土地の人たちと交わした言葉。

 ただ移動のために自転車で走っただけなのに、あまりに盛り沢山な発見の連続。ジオサイトとしての側面や、特に猪苗代湖を中心とした水文環境(水循環や水資源の利活用)についても、湖畔を巡る中でより興味が湧いた。

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