マレーシアで「子どものおもちゃ」を投げ捨てられた話【マレー系女性について】
マレーシアで衝撃だったこと。
※今回は、かなり率直な旅行記です。あくまで私が今回実際に接した人たちについての話であり、マレー系全体がそうだと言いたいわけではありません。
マレーシア航空での、終わらない「確認」
戦争で、幼い双子は緊急旅券で渡航することになった。
正式に発行された旅券であるが、一般的なパスポートとは違うため、空港でスタッフの確認はある。
ドバイでもシンガポールでも、「これは?」と聞かれた。
しかし事情も事情なので説明すればすんなり通してくれる。
マレーシアで、最初の窓口で旅券を見せると、女性スタッフが緊急旅券の写真を誰かに送った。その相手もさらに上の人へ確認し、確認自体に5分ほどかかり、ようやく許可が出た。
ところが、次の窓口に行くと、また最初から始まった。
写真を撮り、また誰かに聞く。同じ旅券について、同じ説明をして、同じように待つ。これを3回ほど繰り返した。
この組織には「確認済み」という概念が存在しない。慎重さは大切だが、情報共有をしないのは、ただ同じ仕事を何度も繰り返しているだけである。
そのせいで搭乗時間はかなりギリギリになった。ようやく飛行機の目の前まで来て、「さあ、あとは乗るだけ」と思った瞬間、また女性スタッフが旅券を止めた。
「確認します」
こちらもさすがに呆れ果てた。
後ろには、他の乗客たちが待っている。
「もう何回も確認したって!!」とイライラを募らせたが、それでも彼女は特に急ぐ様子もなく、旅券の写真を撮り始めた。
さらに気になったのが、対応していた女性スタッフたちの態度。せめて申し訳なさそうに事情を説明してくれたら協力する気にもなるが、無表情でこちらの言葉は無視。
そして、こちらが外国人であることは見れば分かると思うが、第一声はマレー語であることが多く、英語をお願いするとため息をつかれた。
3歳児のおもちゃを、本人の目の前で投げ捨てる
一番衝撃的な出来事が保安検査で起きた。
3歳の息子は、おもちゃの剣を持っていた。レンジャー系の子ども用玩具で、色も形も明らかにおもちゃである。たとえ玩具でも武器の形をした物は、空港によっては機内持ち込みを断られる可能性がある。そこは私も理解している。
女性スタッフが、おもちゃを手に取り「これは何?」とぶっきらぼうに聞いてきた。なんとなく感じ悪い人だったので「子供のおもちゃだけど?」とこちらも強めに答えた。
すると彼女は、息子の目の前で、それをゴミ箱へ投げ捨てた。
「これは機内に持ち込めない」と伝えることも、「ごめんね」と子どもに声をかけることもなく、ただゴミのように放り込んだ。息子はその場で泣き崩れた。
持っていけないことと、子どもの目の前で乱暴に捨てることは、まったく別の話。
その女性の横にいた、年配の男性スタッフはオロオロしていた。彼女の行動を止めるわけではないが、「さすがに、それは……」と思っているような顔だった。
次に狙われたのは、赤ちゃん用の水だった
私が強く抗議したことで彼女も意地になったのか、その後は荷物を一つひとつ、細かく調べ始めた。そして見つけたのが、赤ちゃんのミルクを作るために用意していた水。
250mlほどの小さなボトルが4つで、普通のミネラルウォーターではなく、わざわざ赤ちゃん向けの商品を購入していた。ラベルにもはっきり「Baby Water」と書かれていた。
乳幼児を連れて飛行機に乗る場合、必要な量のベビーミルクやベビーフードは通常の液体制限の例外として扱われる。
量が多すぎると言われることはあっても、全て持っていけないと言うことはありえない。
しかし彼女は、「液体はダメ」と言い、ボトルをすべてゴミ箱に入れた。
これには本気で頭に来た。
この後の赤ちゃんの食事が取れないとなったら、責任をとってくれるのか?
こちらが何を言っても、目さえ合わせない。横にいた男性スタッフが、小さな声で彼女に何かを伝えようとしたが、それも完全に無視。
男性の方がかなり年上に見えたが、彼女は一切耳を貸さない。その場では誰も彼女に意見を言えないように見えた。
彼女が別の乗客の対応へ移ったとき、先ほどの男性スタッフが静かに動いた。ゴミ箱へ近づき、捨てられた水を数本取り出し、私へそっと渡してきた。
そして、小さな声で「Sorry……」と言った。
これには複雑な思いだった。
助かるが、やはり彼女は厳格な規則に従ったというより、意地になっただけなのだ。
こんなことが国際空港で起こっていいのか。
ミスを直すより、「自分は間違っていない」を守る
これだけなら、たまたま空港で非常に感じの悪いスタッフに当たっただけだと思ったかもしれない。しかし旅行中、似たような出来事が何度か続いた。
観光バスに乗ったときも、向こうの処理ミスでチケットの内容が間違っていた。こちらは予約画面を見せ、購入した内容を説明した。しかし担当者は、間違いを確認するより先に「こちらは間違っていない」という姿勢になった。
チケットが現実に違っているのだから、誰が悪いかを争う前に修正すればいい。ところが、修正よりも「自分のミスではない」と証明することの方が重要らしい。
旅先では細かいミスなどいくらでもある。私も毎回謝罪してほしいわけではない。間違っていたら直してくれれば、それで終わる。
ところが今回何度か出会った対応は、こちらが指摘したり強気で出ると、相手は意地になり、何が正しいかではなく負けない事が目的になる。
ネットで調べて見えてきた文化
マレーシアで暮らす外国人の体験談や、マレー系のコミュニケーション文化について調べた。
ネット上の個人の書き込みには、役所や窓口で担当者が変わるたびに同じ説明を求められた、マニュアルから外れる案件への対応が遅い、ミスを指摘した際に話が進まなくなった、といった不満が見つかる。しかし、反対にマレーシアの人は親切で、困っていると助けてくれるという声も当然たくさんある。
ただ、外から来た人が公の場で強く間違いを指摘すると、相手には単なる事実確認ではなく、「人前で自分の立場を否定された」と受け取られることがあるのかもしれない。そうなると、問題を解決するより、プライドを守ることが優先される。
「マレー系女性は強い」という印象は、どこまで本当なのか
たまたま今回トラブルになったのは、全てマレー系の女性だった。男性は割と親切で穏やかだった印象。
今回のスタッフが女性だったことと、その対応が悪かったことの間に、必ず因果関係があるとは限らない。
ただ、今回私が接した女性スタッフたちは、総じて自己主張が強く、一度出した判断を撤回しなかった。横にいる男性スタッフが気まずそうにしていても、意見を聞く様子がない。その光景が何度も続いたため、「マレー系女性はかなり癖が強い」という印象につながったのは事実である。
中華系との違いまで、簡単に性格で片づけられない
旅行中、私には中華系のスタッフの方が、説明や営業が分かりやすく、話が早いように感じられる場面があった。こちらが欲しいものを伝えると、選択肢を出し、金額を説明し、すぐ取引へ進む。その点では、非常にビジネスライクだった。
今回私が受けた印象を正直に言えば、中華系の人とのやり取りでは「どうすれば取引が成立するか」という方向へ会話が進み、マレー系の一部スタッフとのやり取りでは「誰の判断が正しいか」という方向へ会話が進むことが多かった。
あくまで、今回の限られた旅行中に私が感じた違いである。
ドバイの厳しさには、子どもへの逃げ道がある
私はドバイで暮らしているので、アラブ系の人が怒ると怖いこともよく知っている。声は大きいし、言い方も強い。ルールに厳しい人もいるし、こちらが圧倒されるような場面もある。
しかし前回の記事の通り、大きい声で主張した方が、実は通りやすいのがドバイだ。
しかも、子どもに対しては驚くほど優しい。
親に厳しく注意している最中でも、横で子どもが泣けば声のトーンを変える。持ち込み禁止の物があれば没収はするが、子どもには「ごめんね」と言ったり、別の物へ気をそらしたりする。ルールは変えない。しかし子どもの心まで傷つける必要はない、という線引きがある。
もちろん、ドバイの全員が優しく、マレーシアの全員が冷たいという話ではない。ドバイでも最悪な対応はあるし、マレーシアでも親切な人には出会った。
ただ、もう少しだけ配慮できるのではと思わずにいられない。3歳児のおもちゃが禁止なら、持っていけなくて構わない。赤ちゃん用の水に追加検査が必要なら、検査してくれて構わない。緊急旅券を確認する必要があるなら、何分でも確認すればいい。
ただ、仕事の正しさと、人への優しさは同時に存在できる。
マレーシアへ行く人に「マレー系女性に気をつけて」とまでは言わないが、窓口で判断が食い違ったときは、相手を正面から追い詰めるより、別の担当者や上司へ静かに確認してもらった方が話が早いかもしれない。一度対立の形になると、問題の中身よりも、引けないことの方が大きくなってしまうからだ。
次回『とはいえ難しい中華系との関係』
