「神よ、彼らをお赦しにならないでください」 なぜ一人の暗殺失敗が数千人の虐殺につながったのか 三アンリの戦い #41
こんにちはmalkomeです。
厳しさを増す昭和セリーグ抗争。
阪神タイガースと広島カープ、ファン同士骨肉の争い。
ではなく16世紀フランス、カトリックとユグノーの争い。
狂信的カトリック、ギーズ公フランソワの容赦ない弾圧によりフランスは内戦になってしまいました。
ユグノー戦争開始
💀戦争はじまる
1562年ユグノー戦争が開始します。
戦争といっても宮廷内戦争です。
同じ宮廷貴族同士ゆえスパイが横行し放題。
カトリックの総大将ギーズ公フランソワも、ユグノーの刺客により暗殺をされてしまいました。
しかし戦争は終わりません。
この泥試合で互いの大将クラスが次々戦死します。
そこに母后のカトリーヌ・ド・メディシスが出てきて、
「ほらっ!そろそろ仲直りしなさいっ!」
と、仲裁します。
ユグノー戦争は8年で3回も起こるのですが、カトリーヌが中途半端に仲裁するので問題は先送りされます。
そして王家は両派から疎まれ、とうとう王家にもコントロールできなくなるのです。

⚓コリニーの野望
フランス国王シャルル9世は無力感を感じていました。
「国王は僕なのに、母上の言いなりだ...」
無理もありません。
母は自分の意見を聞かず宗教戦争の対応に奔走し、宮廷内は母の顔を伺う連中ばかり。
そこにユグノーの貴族ガスパール・ド・コリニーが現れます。
「国王!この老兵でよけりゃあ話を聞きますけぇ」
コリニーは百戦錬磨の軍人ですが若い国王の話をよく聞き、ときには優しく指導する令和の理想の上司みたいな人物でした。
孤独なシャルルも優しいコリニーに心を開き、いつしか父のように慕い始めます。
しかしコリニーはユグノーのリーダー格、この状況は宮廷のカトリック陣営に緊張感をもたらします。

👩焦る母后
コリニーはシャルル9世に
「ユグノーの敵スペインを我々で倒しましょうや!」
と、対外戦争を提案し始めます。
しかしスペインは当時最強のカトリック国家です。
内戦中のフランスがスペインに挑むなどV9時代の巨人に挑むようなもんです。勝てるはずがありません。
しかし、国王シャルルは、
「僕がスペインを倒しますよ!のう?」
と徐々に危険思想と、広島弁に染まっていきます。
母后カトリーヌ・ド・メディシスは、
「王家の危機だわ!はやく何とかしないと!」
「でもあの子はコリニーに心酔しているし…」
追い詰められたカトリーヌはこう考えます。
「もうコリニーを殺してしまうしかない!」
こうして、地獄への門が開き始めます。

👦1人目、アンリ・ド・ナヴァル
ここで一人目のアンリが登場します。
ユグノーのアンリ
ナヴァル王アンリです。
アンリの母は熱心なユグノーでしたが、父はカトリックでした。父は母からユグノー改宗を強制されますがパリに暮らし始めるとまたカトリックに改宗します。
いわば信念なきビジネスカトリックです。
アンリはこんな両親のもとで育ったため、
「ユグノーもカトリックも殺し合いしちゃいけん」
と、この時代珍しいメタ視点を持っていました。
アンリは若きユグノーのエースとしてカトリックとの融和を模索していました。
💒両派の結婚
カトリーヌ・ド・メディシスの宥和政策の一環で、1572年このナヴァル王アンリと末娘のマルグリットとの結婚式が行われます。
ナヴァル王アンリは、
「カトリックのヴァロワの姫様とワシが結婚すれば、フランスもちったぁ平和になるじゃろう」
と考えました。
そして結婚を祝福するため、フランス中から多くのユグノーがパリに集まります。
連日宴会が催され、カトリックもユグノーもこの融和的ムードに酔いながら、
「ワシらものう、本当はもう戦争はこりごりなんじゃ」
「ほんまほんま、平和にしてもらいたいもんでっせ」
「宗派は違うても、同じ王に仕えとる仲間じゃろう」
「あんさん、難しい話はもうええ!一緒に飲もうや!」
と、一緒に笑い合いながら酒を飲みます。
しかし彼らはまだ知りません。
この祝宴こそが、地獄の入口だったことを。
この直後、コリニー暗殺計画は実行されました。

虐殺前夜
💀コリニー暗殺決行
コリニーは帰宅途中パリの路上で銃撃を受けました。
弾は外れ致命傷には至りませんでしたが、この報を受けたユグノーたちは激怒し、血眼になって犯人を探し始めます。
「やったんは誰じゃあ!カトリックの連中か!」
「ワシゃもう堪忍ならん!ぶち殺しちゃるけぇ!」
広島弁の怖い人たちがパリを跋扈し始めます。
この失敗を見届けた母后カトリーヌ・ド・メディシスは仲間を連れて国王の元へ向かいます。
🤱カトリーヌ動きます
カトリーヌ・ド・メディシスはフランス王シャルル9世のもとへ駆けつけ、
「国王、ユグノーがパリで反乱を企てています」
と、冷静に言いました。
突然のことにシャルルは理解が追いつきません。
「はっ、反乱?ぼっ、僕はどうすればいいんだ?」
「手遅れになる前に、ユグノーたちを殺しましょう」
「えっ?ユグノーを?...まさか...コリニーもか?」
「はい、コリニーは危険です。生かしてはおけません」
「えっ?なっ...いっ、い、嫌だっ!...な、なんで?」
このやり取りは歴史書には残っていません。
しかし気弱なシャルルは母の言葉を疑わず、まして逆らう事など到底思いつきもしなかった事と思われます。
容赦のない母后の追求に国王は徐々に壊れていきます。

😱断をくだす
シャルル9世は錯乱状態になりました。
母が言うに...ユグノーを殺さないと王家が終わる。
だがコリニーは殺したくない、コリニーの仲間のユグノーたちは裏切れない。
---しかし、どうしても母に逆らうことは出来ない。
「うるさい...やめろっ!やめてくれっ...!」
静まり返る部屋。
国王の荒い息だけが響きます。
その長い沈黙の後、怯えた顔をふっと上げました。
そして目を見開き、震えながら国王は言いました。
「...なっ、ならば...こっ、殺せっ……!」
「そっ、そこまで言うのなら…殺せっ……!」
雄弁かつ野蛮になる国王の発言。
まるで自分を鼓舞するかのようです。
「国王、殺すとは...誰をでしょう?」
凛とした顔で母は王に問いかけます。
そしてこの容赦のない母后のダメ押しに、シャルルは身を震わせて声を上げました。
「ぜ、ぜっ、全員だ!!ひっ、一人も残すなっ!!」
「あとで...私を非難するものが...ないようにっ!」
「ユグノーをっ!……みっ、皆殺しにしろぉぉっ!!」
1572年8月24日
ヴァロワ王家はその生き残りを懸け、断を下しました。
ユグノー戦争において最も凄惨かつ、ヨーロッパを震撼させた狂気の惨劇。
サン・バルテルミの虐殺がここに始まったのです。
つづく
※ 本記事は史実をもとに構成していますが、筆者の主観的な表現・誇張が含まれます。史料としてではなく、ひとつの解釈としてお読みいただければ幸いです。
