夏休みも半分が過ぎて
ある夏の夜の、
風がすこしだけ涼しくなるころ。
町はずれの古いプールに、
ひとりの子どもが迷い込んだ。
もうとっくに閉まっているはずの門は、
なぜか少しだけ開いていて、
水面は、月の光を飲みこんで、
静かにきらめいていた。
「こんな時間に、泳ぐの?」
声がした。
振り向くと、
水の中にひとりの少女が立っていた。
髪は濡れているのに、
足元は波ひとつ立たない。
「ここはね、昼のあいだにこぼれた夏を、
集める場所なんだよ」
少女はそう言って、水をひとすくいした。
すると、そのしずくの中に、 笑い声や、
はしゃぐ水しぶきや、照りつける陽射しが、
小さく閉じ込められていた。
子どもは、そっと手を伸ばした。
ひやりとした水の中で、 たしかに、
自分の知っている夏がきらめいた。
「どうして、こんなことをしてるの?」
「忘れないためだよ」
少女は笑った。
「夏はね、
あっという間に終わっちゃうでしょ。
だから、誰かが少しだけ、
残しておかないといけないの」
風が吹いた。
プールの水面が、ゆらりと揺れる。
そのたびに、
きらめきがほどけて、
夜の空へと、ひとつずつ帰っていった。
まるで、星が生まれるみたいに。
「ねえ、きみの夏も、
ひとつもらっていい?」
子どもは少しだけ考えて、
そして、小さくうなずいた。
思い出したのは、
あの日の、水の冷たさと、
息をのむほどのまぶしさ。
そのひとかけらを、水の中へ落とす。
少女はそれを大事そうに抱えて、
やがて、そっと水に溶かした。
「ありがとう。きっと、いい星になるよ」
気がつくと、 門の外に立っていた。
振り返ると、
プールはただの暗い影になっていて、
もう誰の気配もなかった。
それでも、夜空には、 ひとつだけ、
少しだけやさしく光る星が増えていた。
あの夜のことを、 ほんとうにあったことだと証明するものは、どこにもない。
けれど、
夏の終わりにふと風が変わるとき、
あの水のきらめきだけは、
たしかに、胸の奥で揺れている。
#おとぎばなしーな
音羽しーなさんの素敵な企画に参加させていただきます✨️
楽しい〜な♪
こちらにも参加させていただきます😌
よろしくお願いします♪
今年もまた、そんな季節が
やってきました。
追記🍀
「おとぎばなしーな」企画
音羽しーなさんに朗読していただきました♪
透明感のあるしーなさんの声が、
心に染みてきます😌
水の煌めきや星の瞬き、夏の終わりの切なさを感じさせてくれる素敵な朗読。
「おとぎばなしーな」の企画に
参加できてホントよかったです♪
ありがとうございます!
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