破局/遠野遥、加藤将之(朗読)
Audible十四作目は、遠野遥さんの中編小説
『破局』を拝聴しました🎧
(2026.7.15 聴了)

第163回芥川賞受賞作。
こちらも気になっていた作品で、遠野遥さんは本作が初読です。
あらすじだけを見ると、スポーツや女性関係、性生活の間で揺れ動く大学生活を描いた物語なのかな、という印象でした。しかし、いざ聴き始めると、なんだか様子が変でした。
どう変なのかというと、これは朗読者の読み方もあるのでしょうが、主人公だけが妙に機械的に感じられたのです。
感情もあるし、感覚もある。
けれど、それらを味わうというより、頭の中で淡々と物事を受け止め、まるで見たことや聞いたことを脳にプログラミングしていくような印象でした。
前に観た韓国ドラマ『君はロボット』が浮かんできました。
でも、ロボットとは少し違います。感情や感覚は確かにある。それでも、人間らしい実感がどこか欠けているように思えるのです。
「こういう人を、私はどこかで知っている」
そう思って記憶を辿り、ようやく聴き終える頃に思い当たりました。
『異邦人/カミュ』の主人公です。
自身のことを主観的ではなく客観的に捉えることしかできず、主人公の言動には考えがあるようでいて、その実、衝動に突き動かされているようにしか見えません。
感情を味わう前に分析してしまうため、人間というより装置が反応しているように見えるのです。
本作の主人公にも、そんな姿が重なりました。
これは生きづらそうだ、というのが率直な感想です。
タイトルの『破局』は、最初は女性関係のことを表しているのかと思っていました。
しかし読み終えた今では、人間として生きることそのものの「破局」を意味しているのかもしれないと思えてきました。
主人公は衝動に身を任せることでしか前へ進めず、その結果、事態は少しずつおかしな方向へ進み、やがて収拾がつかなくなってしまう。
壊れていくのは人間関係だけではなく、人間として世界とつながる感覚そのものだったように思います。
この主人公は、この先もずっと人間的な幸福感を得ることはないのだろう、と感じました。
「これが幸福なのだ」と知識として認識することはあっても、それを心から味わうことはできないのでしょう。
私は機械的に生きたことがないので、主人公にはまったく共感できません。周りにも、このような感覚で生きている人はいません。
だからこそ、この主人公の思考を追いかけること自体が、私にとっては読書の面白さでした。
自分とはまったく違う感覚の人がいることを、こうして物語を通して知ることが好きなのです。
『異邦人』が人生のベスト本の一冊なのも、きっと同じ理由。
『破局』もまた、私の心に残る一冊になりました。
プロフィールと他の記事はこちらからご覧になれます。
質問箱はじめました。
記事と関係のない他愛ない雑談はこちらから✿·͜·ᰔ
サポート、フォロー、いいねをしてくださると大変嬉しいです。よろしくお願いいたします。
#読書 #読書感想文 #読書エッセイ #読了 #本のある暮らし #積読家 #積読本 #芥川賞受賞作 #破局 #遠野遥 #加藤将之 #Audible
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします🙈
いただいたサポートはより良い読書エッセイを書いていくために積読家活動に活用させていただきます😳
