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ことばの地図 #28|頑張れ私

stand.fmでお届けしている「ことばの地図」。

人が大切にしている言葉には、その人が歩いてきた人生や、これから大切にしたい想いが映し出されています。
音声でお届けした言葉を、noteにも少しずつ残しています。

声とはまた違う形で、今度は文章で、ゆっくりとお届けした景色を辿っていただけたら嬉しいです。

ことばの地図とは

人がそれぞれ、人生の中で大切にしている言葉。

勇気をくれた言葉。
支えになった言葉。
これから大切にしていきたい言葉。

この「ことばの地図」シリーズでは、ご縁のある人たちから寄せてもらったそれぞれの大切な言葉を、人生の地図に残る言葉としてご紹介しながら、その言葉から私が思い浮かべた景色や感じたことを添えてお届けしています。

あなたの言葉に、景色を添えて。

今日の言葉

頑張れ私

この言葉を届けてくださった方に、大切にしている言葉を尋ねたところ、最初はなかなか思い浮かばなかったそうです。

「私の大切にしている言葉って、何だろう」
と改めて考えると、

「はて、何だろうと、固まってしまった」
と書いてくださいました。

続けて綴ってくださったのは、

「果たして私は、自分に何か声をかけているのだろうか。自分を支えてくれる言葉が、何かあるのかしら、と。考えてみても、驚くほど何も思い浮かばない。心がけていることはあっても、自分に対してかけている言葉は、案外ないのかもしれない」

という言葉でした。

そんな中で、
「あえて、あえて言うなら」と届けてくださった言葉が、

「頑張れ私」

でした。

昔は、二人のお子さんの子育てや仕事のこと。
最近では、親御さんのお世話や実家のこと、お寺のことなど。
いろいろなことが重なり、いっぱいいっぱいになったとき。

頼れる相手や、愚痴をこぼせる誰かがいなくて、それでも、もうひと踏ん張りしなければならないときに、

「頑張れ私」

と、つぶやくことがあるそうです。

そして、その言葉を口にして、もう一歩を踏み出したり、もう少し力を出そうとしたりする。

ご本人は、
「いろいろなことを一人で抱え込む癖があるからかもしれない」
と伝えてくれました。

年齢を重ね、以前のようには踏ん張りがきかなくなってきたときにも、「頑張れ私」と言うかもしれない、と、笑いを添えて教えてくださいました。

最後には、
「言葉って大事なのに、自分にかけている言葉って、無意識なのかもね」
と綴ってくれました。

私が感じたこと

このメッセージを読んで、私がまず感じたのは、大切にしている言葉は、いつも意識して掲げているものばかりではない、ということでした。

座右の銘のように、きれいに言葉にしているものだけが、その人を支えているわけではありません。

苦しいとき。
余裕がなくなったとき。
誰にも見られていないところで、思わず自分にかけている言葉。

そこにこそ、その人がどのように今日まで歩いてきたのかが、表れていることがあります。

「頑張れ私」。

とても短くて、飾り気のない言葉です。

けれど、この言葉の後ろには、子育てや仕事、親のことや家のこと、誰かのために引き受けてきた時間が、静かに積み重なっているように感じました。

もう無理かもしれない。
少し休みたい。
誰かに代わってほしい。

そんな気持ちがあったとしても、今は自分がやるしかない。

そのときに、誰かから「頑張って」と言われるのではなく、自分で自分に、
「頑張れ私」
と声をかける。

その言葉には、自分を奮い立たせる強さと同時に、少し切なさもあるように感じます。

本当は、誰かに「もう十分頑張っているよ」と言ってほしかった日も、あったかもしれません。

本当は、弱音を吐いたり、助けを求めたりしたかったときも、あったかもしれません。

それでも、立ち止まるわけにはいかなくて、自分の背中を、自分で押してきた。


この言葉を届けてくださった方は、私にとって、大好きなお姉さんのような存在です。

4年前、私の念願だった野外での1dayワークショップを友人と開催した際には、遠いところから飛んできて参加してくださいました。

そして、私がその方の暮らす土地を訪れたときには、快く時間をつくってくださり、一緒にランチの時間を楽しみました。

コーチングの学びの場では、私が講師を務めることを、運営スタッフとして力強く後押ししてくださったこともあります。

私だけではなく、誰かが一歩を踏み出そうとするときに、その人の力を信じて、自然に応援できる方。

私には、そんな印象のある方です。

だからこそ、人の背中を押すことのできるこの方にも、自分の背中を自分で押さなければならない日があるのだと思うと、「頑張れ私」という言葉が、私にはより深く響きました。

誰かに元気を渡している人にも、自分の中に残っている力をかき集めて、もう一歩進んできた時間がある。

この言葉は、この方が一人で歩かなければならなかった時間に、そっと寄り添ってきた言葉なのだと思います。

そして私は、「頑張る」という言葉についても考えました。

頑張ることは、いつも良いこととして語られるわけではありません。

無理をしすぎないで。
頑張りすぎなくていい。
もっと人に頼っていい。

今は、そんな言葉も大切にされています。
私も、その通りだと思います。
頑張り続けることで、心や体が限界を超えてしまうこともあります。一人で抱え込まず、助けを求めることも、とても大切です。

けれど一方で、人生には、どうしてもあと一歩、自分の力を出さなければならない場面もあります。

誰かが代わってくれるわけではない。
今ここで、自分が立ち上がるしかない。

そんなとき、「頑張れ私」という言葉が、自分の中に残っている力を、そっと呼び起こしてくれることがあります。

だから、この言葉を簡単に「頑張りすぎる言葉」として片づけたくはないと思いました。

大切なのは、いつでも自分を追い立てるために使うのではなく、本当に必要なときに、あと一歩を支える言葉として使うことなのかもしれません。

「頑張れ私」と言ったあと、一歩進むことができたなら、
その次には、「よくやったね、私」という言葉も、そっと添えられたらいい。

頑張ることと、自分を労わること。

その二つは反対にあるのではなく、どちらも自分を支えるために必要なものなのだと思います。

私が思い浮かべた景色

夜明け前の、まだ薄暗い道です。

遠くの空が、少しだけ青くなり始めています。
一人の人が、重たい荷物を持って、ゆっくりと坂道を歩いています。
足取りは軽くありません。
何度か立ち止まり、深く息を吐いています。

辺りには、まだ人の気配はありません。
声をかけてくれる人も、荷物を持ってくれる人もいません。

それでも、その人は、自分の胸に手を当てるようにして、小さな声でつぶやきます。

「頑張れ、私」

すると、急に力が湧いてくるわけではありません。
荷物が軽くなるわけでもありません。
けれど、止まっていた足が、もう一度、少しだけ前へ動きます。

一歩。
そして、もう一歩。

やがて、木々の向こうから、朝の光が差し込んできます。
その人はまだ、坂道の途中にいます。
けれど、振り返れば、暗い道を、ちゃんとここまで歩いてきた跡があります。

私はこの言葉から、そんな景色を思い浮かべました。

そして、この景色を思い浮かべながら、私は、その人が一人で歩いているように見える道にも、これまでその人が誰かへ渡してきた優しさや、誰かから受け取ってきたぬくもりが、見えない光のように残っているのかもしれないと思いました。

人を応援した言葉。
誰かと笑って過ごした時間。
遠くても会いに行こうと思った気持ち。

それらは、すぐ隣を歩いてくれるわけではなくても、その人の中に残り、暗い道を照らす小さな灯りになることがあります。

この言葉が指し示す方向

「頑張れ私」という言葉は、未来に向かって自分を押し出す言葉であると同時に、これまで頑張ってきた自分の存在を、無意識のうちに確かめている言葉でもあるのかもしれません。

頑張れ、と言えるのは、自分の中にまだ力が残っていることを知っているから。

もう一歩進めることを、どこかで信じているから。

そして、「私」と呼びかけることで、誰よりも近くにいる自分が、自分の味方になろうとしている。

そんなふうにも感じます。

今回の言葉が指し示している方向を、私なりに表現するなら、

誰にも頼れないと感じるときも、自分だけは自分の味方でいて、自分の中に残っている力を信じ、あと一歩を踏み出すこと。

そして、自分が誰かへ渡してきた優しさや、誰かから受け取ったあたたかさも、きっと自分を支える力になっていることを、忘れないことなのだと思います。

ただし、頑張ることだけを自分に求め続けるのではなく、頑張った自分に、

「よくやったね」
「もう休んでいいよ」

と声をかけることも、同じくらい大切なのだと思います。

今日の問い

それでは、最後にあなたに問いを。

あなたは、苦しいときや、あと一歩を踏み出したいとき、自分にどんな言葉をかけていますか。

これまで、誰にも見えないところで頑張ってきた自分に、今、どんな言葉を届けたいですか。

そして今、「頑張れ」と背中を押すよりも、「よく頑張ったね」と、労わってあげたい自分はいませんか。

今日ご紹介した言葉は、

「頑張れ私」

でした。

大切にしている言葉が、すぐに思い浮かばなくてもいいのだと思います。

何気なく口にしている言葉。
苦しいときに繰り返している言葉。
一人のときに、自分へ向けてつぶやいている言葉。

そこに、これまでの自分を支えてきた言葉が、隠れているのかもしれません。

「頑張れ私」。

そう言って、今日まで歩いてきた自分がいるなら、

「よく頑張ってきたね、私」

そんな言葉も、これからは一緒に届けてあげられたらいいな、と感じています。

メタセコイア並木道

あなたの景色も、ぜひ教えてください

あなたの言葉に、私が景色を添えていきます。

読んでいるあなたには、私とは違う景色が見えたり、違う音や音楽が聞こえてくるかもしれません。

この記事を読んで感じたことや、ふと浮かんだ気づき、あなたの中に見えた景色や音があれば、コメントでそっと届けてくださると嬉しいです。

そして、あなたが人生の中で大切にしている言葉も、ぜひ教えてください。

その言葉にまつわる景色を、いつかこの「ことばの地図」でご紹介できたら嬉しいです。


砂川めぐみ|ライフデザインコーチ

人が大切にしている言葉に耳を澄ませるように、
対話を通して、その人らしい選択を行動と表現につなげるサポートをしています。

コーチングや講座については、
ホームページでご案内しています。
https://cieloricco.com/


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