オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「第五章 第一期人類の滅亡」「第一節 第一の暗黒時代」
長い第二暗黒時代を経て、真に高貴で平和な文明を築き上げた第二期人類の前に、人類史上かつてない形態の脅威が姿を現す。地球外生命体、すなわち火星人の襲来である。
ステープルドンがここで描く火星人は、SFでよくあるタコ型や緑色の小人ではない。それは放射線でつながった無数の超微小な単位が、群れ全体でひとつの意識を構成するという、実体のつかめない「雲のような集合知性」である。1930年の作品とは思えないほど斬新で、そして不気味なエイリアン像だ。
本節の最大のハイライトは、ヒンドゥークシュの新しい山脈にある美しい氷河の谷間で起こる、この暗緑色の巨大な雲との「最初の接触(ファースト・コンタクト)」のシーンである。未知の雲に好奇心で近づいた若者たちが、カメレオンの舌のように伸びてきた触手にあっけなく飲み込まれ、激しく咀嚼されて、ひとかたまりの肉塊として吐き出されてしまうのだ。この理不尽でエグい惨劇の描写は、これまでの人類の歴史にはなかった底知れぬ恐怖を与えてくれるはずだ。
高度な知性と他者への深い共感を持つ第二期人類と、個体を単なる部品や細胞としてしか扱わない火星人の集合精神。まったく異なる進化を遂げた二つの知性による、絶望的なまでに噛み合わない惑星間の死闘がここから幕を開ける。
知性の多様性と宇宙の冷酷さを描き出す、ステープルドンの並外れた想像力が爆発する新章の始まりを、ぜひその目で確かめてほしい。
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