オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「 第十二章 最後のん地球人たち」「第一節 儚さの崇拝」
第一期人類の2倍以上の巨体を持ち、5万年にも及ぶ長寿と、高度な精神性を備えた第五期人類。彼らはその長寿と深い共感力ゆえに、「死」や「愛する者の喪失」に対して、かつてないほどの深い苦悩を抱えることになる。
初期の彼らは、その苦しみから逃れるために「個人の不死(死後の世界)」を夢見たが、やがてそれすらも精神の未熟さであると退けるようになる。そして彼らは、死すべき個人の運命を受け入れ、すべてが過ぎ去り消えゆくからこそ宇宙は美しいのだという「儚さ(Evanescence)」の美学と哲学的な受容へと到達していく。
宇宙の広大なスケールから見れば、知性を持つ者の歴史そのものがほんの一瞬の出来事に過ぎない。その冷徹な事実を前にして、彼らは自らの絶望を乗り越え、遠い過去に無知の中で苦しみながら滅んでいった「すべての過去の生命(人間や動物たち)」に対して、深い愛情と哀惜の念を抱くようになる。そして、過去の悲劇や生命の営みを歴史として克明に再構築し、愛をもって理解することが、彼らの大きな使命となっていくのである。
物質的な豊かさを極め、ユートピアを築き上げた第五期人類が辿り着いた、極めて精神的でポエティックな「儚さの崇拝」。ステープルドンの哲学的な洞察が深く染み込んだこのセクションを、ぜひじっくりと味わってほしい。
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