オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「 第十四章 海王星」「 第一節 鳥瞰図」
前章までで、地球と金星を舞台にした第一期から第八期人類までの10億年にわたる歴史が語られ、人類はついに最後の故郷となる海王星(ネプチューン)へと移住した。本節は、いわばこの壮大な物語の「折り返し地点」にあたる。ここで語り手は一旦物語の歩みを止め、視点を大きく引き上げて、宇宙的な時間と空間のスケールから人類の歴史全体を俯瞰(鳥瞰)する。
数十億年という星々の寿命や、無数の銀河が浮かぶ広大な宇宙空間に比べれば、これまで我々が辿ってきた人類の波乱万丈な歴史すら、ほんの一瞬の瞬きであり、微小な点に過ぎない。ステープルドンはここで、徹底して人間を中心に置かない冷徹で壮大な「コズミックな視点」を改めて読者に突きつけるのである。
そして語り手は、これから語られる海王星での後半戦、第九期から最後の第十八期人類(語り手自身)に至るまでの、さらなる10億年のアウトラインを予告する。過酷な環境による完全な獣への退化から始まり、気の遠くなるような時間をかけた知性の再覚醒、そして完全な精神的成熟へと至る、想像を絶するスケールの未来史である。
具体的な事件は起きない短い節だが、本作が単なるSFを超えて「宇宙の神話」として屹立していることを実感できる、非常に美しく哲学的なパートである。ぜひ、この圧倒的なスケール感を味わってほしい。
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