オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「 第十五章 最後の人類」「 第二節 子供時代と成熟」
前節で、平均寿命25万年という悠久の時を生きる「最後の人類(第18期人類)」の長大な成長過程と「青年の地」での試練が描かれた。本節では、彼らが到達した精神的ユートピアの核心であり、本作における人類の精神進化の極致とも言える「種族の覚醒」の全貌が明かされる。
前節で、平均寿命25万年という悠久の時を生きる「最後の人類(第18期人類)」の長大な成長過程と「青年の地」での試練が描かれた。本節では、彼らが到達した精神的ユートピアの核心であり、本作における人類の精神進化の極致とも言える「種族の覚醒」の全貌が明かされる。
最後の人類は、96もの「亜性(サブ・セックス)」と呼ばれる多様な気質に分化しており、それらの異なる個性が結びつくことで、まず小規模な「グループ精神(グループ・マインド)」を形成する。彼らにとって性とは単なる肉体の結合にとどまらず、異なる個性を補い合ってより高次の意識を生み出すための精神的な礎なのだ。
そして、このグループ意識がさらに高まり、惑星全体を覆う巨大なテレパシー・ネットワークと同期したとき、海王星に生きる1兆人もの最後の人類は、ひとつの巨大な『種族の精神(レーシャル・マインド)』へと覚醒する。
種族の精神となったとき、人は全人類の目を同時に通して宇宙を見つめ、数億年の歴史の中で生き滅びていったすべての先祖たちの歓喜と悲惨を、自らの体験として一瞬で味わい尽くす。そこでは「私」と「あなた」という個の孤立は消え去り、かつて火星人が陥ったような画一的な全体主義ではなく、無数の多様な個性が完璧に調和した至高の意識が立ち現れるのである。
個の限界を完全に克服し、宇宙の冷酷な美しさと悲劇をそのまま称える精神の至福。ステープルドンが描く、人類が20億年かけて到達した「究極の精神的ユートピア」の荘厳な描写を、ぜひ体験してほしい。
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