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オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「 第十二章 第三節 宇宙への航海」

 前節で、過去のあらゆる生命の悲劇を追体験し、深いメランコリーに沈んでいた第五期人類。しかし本節では、そんな彼らの哲学的な絶望を吹き飛ばすほど、絶大的で逃れようのない物理的危機が襲いかかる。なんと、月の軌道が異常を来たし、地球への接近を始めたのだ

 計算の結果、1000万年以内に月は崩壊してその破片が地球に降り注ぎ、地表の熱によってあらゆる生命が焼き尽くされることが判明する。この途方もない宇宙的スケールの宣告を前に、彼らはついに母なる地球を脱出し、他の惑星へ移住するという未曾有の大計画へと乗り出していく。
 彼らは物質の対消滅から莫大なエネルギーを引き出す技術を応用し、全長900メートル(3000フィート)にも及ぶ強靭で巨大な葉巻型の宇宙船「エーテル船」を建造する。初期のテスト飛行では、流星との衝突や未知の宇宙空間での遭難によって多くの痛ましい犠牲が出るが、やがて彼らは惑星間空間の航行技術を確立し、太陽系内を自由に飛び回るようになる。
 漆黒の宇宙空間、強烈に輝く太陽コロナ、そして眼下に遠ざかる美しき地球。これまで精神の深淵ばかりを探求してきた第五期人類が、滅亡の危機に直面してついに「宇宙」という物理的な大自然へと力強く乗り出していく高揚感が、まざまざと描かれている。
 しかし彼らの前には、過酷な環境を持つ移住先の惑星(金星)をどのように改造するかという、さらに困難な課題が待ち受けていた。人類が初めて真の宇宙進出を果たす、本作の極めて重要なターニングポイントである。ステープルドンが描く壮大な「宇宙への飛翔」のドラマを、ぜひ味わってほしい。

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