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オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「 第十一章 第三節 第五期人類」

 前節で、肉体を捨て去り純粋な知性のみを極めた「巨大頭脳(第四期人類)」は、宇宙の真理に到達できない自らの限界を悟った。彼らに欠けていたのは、豊かな肉体感覚と感情に裏打ちされた全人的な価値観であった。そこで彼らは、自らの進化を諦め、自分たちに代わって真の知識と調和に到達できる「完全な人間」を人工的に創造するという、壮大な自己否定の道を選ぶ

 残された第三期人類の標本をもとに、何千年にもわたる研究の末に生み出された「第五期人類」は、まさに人類史上かつてない傑作であった。彼らの身長は第一期人類の2倍以上という途方もない巨体でありながら、完璧なプロポーションと美しさを備えていた。寿命は3000年にも及び、6本の器用な指を持ち、病気や老化を克服している。さらに、かつて人類を苦しめた火星人の細胞(マーシャン・ユニット)を脳に組み込むことで、個人の独立性を保ちながらも他者と深く共感できる「テレパシー能力」まで獲得していた。
 実験室で培養された一卵性双生児の男女(新たなアダムとイヴ)から始まった彼らは、やがて順調に増殖していく。しかし、完全な感情と知性を併せ持つ第五期人類と、冷徹な知性しか持たない創造主(巨大頭脳)との間には、次第に埋めがたい理解の溝が広がっていく。そしてついに、自立を求める被造物と、支配を続けようとする創造主との間で、地球の覇権を賭けた凄惨な戦争が勃発する。
 血みどろの戦いの末に巨大頭脳は滅ぼされるが、第五期人類自身も甚大な被害を受け、新たな文明を築く前に再び野蛮な暗黒時代へと転落してしまう。
 肉体を捨てた知性が自らの過ちを認めて「完全な人間」を再設計するというカタルシスから一転、創造主と被造物の悲劇的な下剋上、そして再びの文明崩壊へ。ステープルドンの描く、残酷でありながらも生命の逞しさに満ちた壮大な人工進化のドラマを、ぜひ味わってほしい。。

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