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オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』――「第八章 火星人」「第三節 第三の暗黒時代」

 前節で人類を恐怖に陥れた、意思を持つ「緑の雲」こと火星人。本節では、彼らがいかなる環境で誕生し、どのような生態を持っているのか、その驚くべき正体が明かされる

 舞台となる火星は、地球の10分の1の質量しかなく、大気も水も極端に少ない、乾燥して冷え切った過酷な世界だ。かつては地球に似た動植物も存在したが、環境の悪化によって衰退してしまった。
 そこに現れ、進化の頂点に立ったのが、バクテリアよりもさらに微小な「亜生命単位(サブバイタル・ユニット)」と呼ばれる生命体である。彼らは地球の生物のように、神経や血管といった物理的な接触によって身体を維持しているのではない。無数の微小なユニットが「電磁波(放射)」というワイヤレス通信によって結びつき、連携することで、一つの巨大な「生きている雲」を形成しているのだ。
 彼らは状況に応じて磁力でゼリー状に固まって強大な物理的力を発揮し、夜には霧のように地面に降りて根を下ろし、土から直接栄養を吸収する。さらには、ユニットを精巧に組み合わせて巨大な水レンズの眼球まで作り出してしまう。
 水と植物が枯渇しゆく死の星で、彼らがいかにして高度な文明を築き、そしてなぜ地球への侵略を決意しなければならなかったのか。
 1930年という時代に、タコ型でも人型でもない、電磁波で結びついた微小要素の群体という「クラウド知性」をデザインしてみせたステープルドンの、圧倒的なSF的想像力が爆発するパートである。ぜひその凄みを味わってほしい。

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