暴力の本質は恐怖
2026年5月25日、プロ野球・読売ジャイアンツの監督であった阿部慎之助氏が娘への暴行で現行犯逮捕され、翌日釈放された事件が多くの人々に衝撃を与えました。 事件後に開かれた記者会見で読み上げられた娘が書いたとされる手紙、監督復帰を求める人々の署名運動などが起きたそうです。 DVなど家族問題の第一人者である信田さよ子さん(公認心理師・臨床心理士)へのインタビューが興味深かったので、まとめてみました。
1. DV・虐待の本質は「恐怖」
DVの本質は「殴る・蹴る」などの身体的暴力ではなく、相手に恐怖を抱かせること。
被害者は恐怖のあまり生物としての防衛反応として、「ごめんなさい」と謝り、自分が悪いと思い込む。
2. 被害者が自分を責めるメカニズム
家庭内では親や夫の言い分が絶対視されやすい。
理不尽な暴力に対して「相手が怒る理由がわからない」苦しさから、「私が悪い」と納得することで説明をつける。
身体的にも経済的にも弱い立場の人が特にこの傾向が強く、被害者になりやすい。
3. 加害者も傷ついているが、それを認められない
暴力は加害者自身の傷つきから生まれるが、特に男性は「傷つき」を言語化できない。[(私の感想)「自分の思い通りにいかない」という傷つきが加害者にあるらしいのだが、なんと身勝手なのか・・]
「自分が正しい」「しつけだ」と正当化し、自らを被害者ポジションに置く。
現代のエリート層では「自己啓発的DV」(タイパ・コスパで妻や子どもを評価・支配)が増えている。
4. 娘の手紙と記者会見への批判
被害者である娘が「自分の意思で書いた」と謝罪するのは典型的なDV反応。
父親が娘の手紙によって、自分を擁護させる構造は被害者と加害者の逆転。
会見で「娘を温かく見守って」と加害者が発言したのは、被害者をさらに追い詰める行為。
5. 日本の現状と13万人の署名
監督を擁護する署名が短期間で集まったことは、日本社会が虐待・DVの理解に依然として後れている証拠。
「しつけの範囲」という認識が根強く、虐待防止法制定から26年経っても状況は大きく変わっていない。
6. 加害者を「抹殺」するのではなく、責任を取らせる社会に
一度の失敗で社会的に抹殺する「キャンセルカルチャー」は問題。
大事なのは加害者が責任を認識し、変わるためのプログラム(カウンセリング・加害者臨床)。
加害者であった安倍氏が適切な対応をすれば野球界に復帰する道もありえるのでは。
7. 具体的な解決策
逮捕後すぐに専門家による面接・加害者プログラムの実施。
被害者は「自分の責任はゼロ」と理解できる匿名のグループ学習・支援が有効。
母親など周囲の家族が第三者相談機関につながるだけでも状況は変わる。
8. 「喧嘩」という言葉の誤用
対等な力関係と予告(お前に喧嘩を売っている、と知らせる)のある行為だけが「喧嘩」。
親子や夫婦など圧倒的な力の差がある関係での一方的な暴力は、虐待・DVであって喧嘩ではない。
結論としての主張(信田さんの論旨のまとめ)
暴力の責任は100%加害者側にあり、被害者の責任はゼロ。
加害者は「悪い人」ではなく「責任を取るべき人」。変わろうとする努力を社会が評価する方向へ。
メディアや世論は「AIが引き金」などの論点ずらしをせず、暴力の本質を見失わないこと。
幸いにも、私にはDVの加害/被害者になった歴史はないのだが、被害者の方が「恐怖で謝らされる構造」に、胸がしめつけられた。この娘さんが、ちゃんとした心理的ケアが受けられますように。そして、加害者である父親も、責任をしっかり認めた上で変わるためのプログラムにアクセスできる社会であってほしい。信田さんの言葉を借りると、安倍さんにはスポーツを愛している者として「フェアプレイ」をしてほしい。
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