メロスを嫌いだったあなた(私)へ
五条紀夫さんの
『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』を読んだ。
正直に言う。
私はこれまで、太宰治の『走れメロス』が嫌いだった。
いや、作品自体が嫌いなわけではなく、
主人公のメロスが嫌いだったのだ。
メロス。なんという勝手人間。
中学生の時に国語の授業で『走れメロス』の初発の感想を、
こうノートに書いたのを覚えている。
〈正義感だけで後先考えず行動しちゃうと迷惑をかけるんだなと思いました〉と。
(こんなことをノートに書いて提出したらちゃんと作品を理解してないと思われるだろうか)
とか、
(友情や努力を感じない冷たい人間だと思われるだろうか)
と、性格の悪い感想しか出てこない自分のことが心配になったが、
メロスに対して、本当にそんな感想しかもてなかった。
その勝手な正義感に友だちを巻き込んで、城に戻るのに間に合うかどうかなんて知らないし、
ずっと頑張って走り続けていたわけではなく、そこそこサボって、時間がなくなって慌てたり挫けそうになっているだけの話である。
こんなにめちゃくちゃなのに、最後は良い感じに間に合って、赤面して終わるのもなんだかなぁ。
セリヌンティウスには、
「大変ですね」
「あの正義感メロスのためにおつかれさまです」
とは思うけど、
メロスにはとにかくモヤモヤイライラさせられた。
大人になってからも何度か、再読する機会に恵まれたが、
親友セリヌンティウスや邪智暴虐の王ディオニスに対する感情や見方が変わることはあっても、主人公メロスに対する心のモヤモヤは晴れるどころか不信感のようなものが強くなった。
しかし、
今回、この『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』を読んだことで、
初めて私の中に
「メロス、頑張れ!」
「メロスっていい奴だな!」
「友情って素晴らしいな!」
「そりゃあ走ってる場合じゃないよね!」
と、いう気持ちが生まれ、
自分でもびっくりしている。
とにかく、この本の中でのメロスのメロスっぷりが素晴らしい。
完璧にメロスになりきって書かれていて、
ちゃんとメロスがメロスしてるのだ。
そして、メロス本人が自分のことを
「不甲斐ない」と思い、
激怒したりしている。
ただの正義感の強い迷惑な人という私のイメージよりずっと、自分のことがわかっているし、反省だってしているところに好感がもてた。
メロスがメロスっぷり全開で事件を解決したり、セリヌンティウスのことを思う姿を最初のうちは声をあげて笑ったり、面白く読んでいたのだが、
だんだんとミステリーの要素に引き込まれていき、文章の面白さはもちろんのこと、読みながらメロスと一緒に推理していくのも楽しく、
とうとう、第4話の「メロスは入水した」ではホロリときて涙までこぼしてしまった。
それで、今。
この本を読んだおかげで、
メロスのことが好きになった。
何度読んでも嫌いだと思っていた主人公のことを好きになれるなんて、
こんな読書体験もなかなかない。
びっくりしたし、嬉しくも思う。
「面白い小説が読みたい!」という人にはもちろんのこと、
私のように、メロスのことが嫌いだった人にも、この本で結構素敵なところもあるメロスに出合い直してほしいと思う。
きっとメロスを好きになる。
一緒になって走りたいとさえ思えてくる。
『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』
には、
エンタメがいっぱい詰まっている。
読後の感想が、
あの頃のメロスに対するモヤモヤではなく、
「あー、面白かった! メロスが間に合って、事件が解決できて良かったね!」と、爽快感と満足感のあるものになること間違いなしだ。
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こんなところまで読んでいただきありがとうございます!私に……良いんですか??嬉しくて舞い上がってます!!うひょー!!!