介護保険の年間費用が初の12兆円超え「高齢者が増えたから」だけではない
介護保険の年間費用が、初めて12兆円を超えました。
厚生労働省が公表した2024年度の「介護保険事業状況報告」によると、介護保険の費用額は12兆952億円。前年度から3.2%増加しています。
そして、もう一つ気になる数字があります。
2024年度末の要介護・要支援認定者は721万人。前年度から12万人増え、過去最多となりました。
65歳以上の高齢者に占める認定者の割合も19.7%です。
つまり、65歳以上の人のおよそ5人に1人が、要介護・要支援の認定を受けていることになります。
「高齢者が増えているのだから、介護費も増えるのは当然」
そう思うかもしれません。
ところが、今回の数字をもう少し細かく見ると、それだけでは説明できないことが分かります。
介護保険の第1号被保険者、つまり65歳以上の人は、2024年度末で3,584万人。前年度から約5万人減っています。
一方で、65歳以上75歳未満は63.6万人減ったのに対して、75歳以上は58.6万人増えています。
65歳以上の人口が一律に増えているわけではなく、より高齢の層へ人口構成が移っているのです。
実際、認定者721万人のうち、第1号被保険者は708万人。その中でも75歳以上が643万人を占めています。
そして、認定者の約66.6%は、要支援1から要介護2までの比較的軽度の認定者です。
ここから考えたいのは、介護保険を「重度になった人を支える制度」とだけ考えていいのか、ということです。
要支援や比較的軽度の段階から、できるだけ状態を悪化させないこと。
本人ができることを維持しながら、家族の負担も抑えること。
そのための介護予防や生活支援、リハビリテーションなどの重要性は、これからますます高まるのではないでしょうか。
一方で、介護を必要とする人が増えても、それを支える人材が同じように増えるとは限りません。
介護現場では、すでに人手不足が大きな課題になっています。
だからこそ、これからは「介護費が増えたから、どう削減するか」だけではなく、
「限られた人材で、どうすれば必要な介護を維持できるのか」
という視点も欠かせないと思います。
AIやデジタル技術によって、記録や事務作業などを効率化し、介護職が本来の専門的な仕事に集中できる時間を増やす。
介護予防によって、できるだけ重度化を防ぐ。
そして、家族だけに介護の負担を集中させない。
介護保険が12兆円を超えたという数字は、単に「介護にお金がかかっている」という話ではありません。
これからの日本で、誰が介護を担い、どのように制度を維持していくのか。
721万人という認定者数と12兆円という費用は、そのことを私たちに問いかけているように思います。
参考リンク
厚生労働省「令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/24/dl/r06_gaiyou.pdf介護ニュースJoint「介護保険の年間費用、初の12兆円超え 要介護認定者は過去最多721万人=厚労省」
https://www.joint-kaigo.com/articles/48286/

