自分を取り戻す、ひとり旅の効力
「このままじゃいけない、旅に出よう」と思い立ち、ZINEフェスに出店するついでに2泊3日のひとり旅をすることにした。
2年ぶりのひとり旅
結婚してからひとり旅というものをほとんどしていないことに気づいて、愕然とした。あんなにもひとり旅を愛してやまない性格だったはずなのに、なぜだろうか。
それは、せっかく景色が綺麗な場所に行くのであれば、母や夫を連れて行きたい、友人に誘われれば一緒に行く方が楽しいと思ってしまうから。
ひとり旅にはひとり旅でしか経験できないことがあり、誰かと行く旅とはまったく違う性質をもっていることをほかでもなく私自身が知っているはずなのに。過去の私は節目節目でひとり旅をして、そこで過ごす時間に救われてきた。1年間、家を持たずにひとりで日本全国を旅していて、毎日がひとり旅の時代だってあったのだ。

気づいたらひとり旅は、2024年の10月以来だった。しかもこれはホテルに籠り内省や読書をするというもので、「旅」という分類にすら入らないかもしれない。
このままじゃいけない、と危機感にも似た気持ちを抱いて、ひとり旅の計画を立てた。今抱えているモヤモヤした気持ち、悩み、憂鬱な気持ちを解き放てるようなひとり旅を!というかまず、ひとりで旅先で自由な時間を過ごせるような旅がしたいのが、何よりも一番の理由だ。

ひとりでゆっくり快適に過ごせそうなホテルを探し、大雑把に行きたい場所の候補を考えてみる。同行者の好きそうな場所や行きたい場所を考慮する必要はなく、100%自分が行きたい場所に行ける!計画を立てたとしても、その日の気分で自由に変えてもいいのだ!特別なことをしなくても、自分さえ楽しく納得できればそれでいい!
そうそう、この感じ。行く前からすでに、ひとり旅が好きだった私がよみがえってくるようだった。
◇ 1日目:ZINEフェス文芸出店
1日目はZINEフェス文芸に出店した。終日のイベントは刺激や喜びをたくさん得られる大切な時間で、楽しければ楽しいほど、心地いい疲労感がやってくる。
この日も例外なく、心地いい疲労感を味わいながら、久しぶりに湯船にお湯を張りゆっくりと浸かり、22時台には眠りについていた。疲れた日は夜更かしせずにとにかく寝てしまうことに尽きる!
◇ 2日目:東京ひとり旅
8時間すっきり睡眠。行きたい本屋がのきなみ12時オープンなので、朝は部屋でゆっくり過ごすことにする。駅ビルでパンを買い、朝ごはんを食べながらジャーナリング。旅先で文字を書くのは気持ちがいい。旅先だからこその新鮮な気持ちで綴れるような気がするから。

ジャズ音楽を流しながら
文字を書く時間が好き。
チェックアウトの時間ぎりぎりまで部屋に籠り(これもひとり旅の醍醐味!)、渋谷を経由して、下北沢へ向かう。JRから京王線の乗り換えで、渋谷駅で盛大に迷い、15分ほどぐるぐると同じ道を行ったり来たりする。東京にいると「迷ってると思われたくない」みたいな変な強がりが出てしまうのは何でだろう。
迷っていたおかげで、ちょうど行きたいと思っていたお店のランチスタートの時間に。1番乗りで入店したのは、多彩な定食が楽しめる「yuzuki」。フライも刺身も食べたくて悩んだ挙句、どちらも食べられる欲張りな「白身魚と刺身の盛り合わせ定食」をチョイスした。カウンターでひとりじっくり定食を味わえるのが嬉しい。食と一対一で向き合えている気分になる。

すぐに満席になったので早めに入店してよかった!
そうして、下北沢の街を歩きながら、ずっと行きたかった「BONUS TRACK」へ!街にとつじょ現れる緑に囲まれた空間に、個性豊かな店舗が集まる施設。「本屋B&B」→「日記屋 月日」→「本の読める店fuzkue 下北沢」と、本を買い足しながら進んでゆく。

なんとも気持ちがいい空間。
歩いているだけでも楽しくなる。

散歩がてらふらふらと
立ち寄ってしまうだろうなぁ。
「本屋B&B」では『あたらしい名前/ノヴァイオレット・ブラワヨ』、「日記屋 月日」では、『ふだんづかいの人類学/ ニコラ・ノヴァ』を購入。旅先では、もともと気になっていた(欲しかった)本よりも、初めて出会って旅先で読んでみたい!と思える本を意識的に選ぶようにしている。旅での出会いはすべて一期一会だからね。

時間制なので心おきなく
ゆっくり過ごせた。
買いたてほやほやの本を抱えて、「本の読める店fuzkue 下北沢」へ。ずっと行ってみたかったフヅクエ!初台のお店よりも下北沢のお店はこぢんまりとしているようだけれど、そのぎゅっとした感じの空間がとても気に入った。本を読むためだけの時間を確保するのは、かなり久しぶり。旅先で静かに本を読むひとときを確保できるのは、ひとり旅だからこそできることだ。そして、こういうだんだんと心が整っていく時間が、自分には必要であることを再認識できる。「本を読むためだけの時間」を非日常ではなく、日常のものにするのだ!と決心する。

緑が多く、閑静な住宅街が続く。
どんな人が暮らしているのか…妄想は止まらない。
その後、ふと思い立って下北沢から北上して笹塚まで歩いてみることに。完全に、ZINEフェスで購入した『笹塚diary/佐藤舞』を昨晩一気読みした影響だ。好きな街に住んでいる人の文章には愛がつまっている、と思う。生活を営む舞台が本人が好きだと思える街だなんて、生活に愛があふれないわけがない。家族やパートナーとの何気ない日常がキラッと光るような素敵な一冊だった。

見つけたので撮影。
街歩きが楽しいエリアだった。
笹塚駅周辺は都心のように混み合っているわけではなく、駅前に駅ビルと図書館があり、少し歩くと個人店が並び、とバランスのよい街だなぁと歩いていて感じた。旅先で街歩きが楽しい街を見つけて、地図を見ずにあてもなく歩き回るのが何よりも好きな時間。「ここに住むとしたら、どんな生活ができるだろうか」と、旅先で誰かの暮らしに潜り込んでいるような気持ちになる。

なんでもコンパクトにそろっていて
暮らしやすそうな街だなぁ。
街歩きを存分に楽しんだあとは、笹塚駅から京王線とJRで、ホテルのある大森駅まで移動。2泊目は横浜にホテルを取ったので、荷物をピックアップして横浜駅に向かう。2泊目は駅からデッキで直通の「JR東日本ホテルメッツ横浜」に宿泊。コンパクトながらもしっかりとしたデスクとチェアが備えられていて快適だった。

ライトの明るさと柔らかさもちょうどいい…!
ホテルに着いたのは19時頃だった。たくさん歩いたので、じんわりと疲れもある。お酒を飲みたい気分だけど、ひとりで入ってもよさそうな雰囲気の居酒屋を探すのは面倒だし、いつものようにサイゼリヤ…となると味気ない。というわけで、駅ビルの地下で総菜と少し高いビールを買って、部屋でひとり晩酌をすることに。

ラザニア風ポテサラ、コールスローサラダ、横浜ラガービール!
この楽しさを知っているから、ひとり旅はやめられない、と思っていたことを思い出す。誰にも邪魔をされず、帰りの時間も寝る時間も決めずに、ひたすら自分の過ごしたいような時間を過ごすための空間。本を読んだり、次の日に行きたい場所を考えたり、BGMにジャズ音楽を流してみたり、この自由を謳歌するためだけにもやっぱりひとり旅は必要だな、としみじみと思い知った。

ベッドに横になりお酒を飲みながら
本を読む時間を愛している!
◇ 3日目:茅ヶ崎ひとり旅
3日目は、こちらのnoteに書いたように、「夏の海が見たい!!」という気持ちだけで、茅ヶ崎を訪れた。最初は鎌倉に行こうと思っていたけれど、鎌倉は何度も訪れたことがあったし、観光地に行くよりもなんかもっとこう「暮らし」が見える場所に行きたい!と思って、急遽茅ヶ崎に行き先を変更した。
こうやってそのときの気分で行き先を変えてしまえるのもひとり旅の特権だ。結果、そこに住む人たちの海沿いでの暮らしを垣間見れたし、海を眺めながらクラフトビールを飲めたし、素敵な空間の本屋さんにも出会えたし、大満足の1日になった。
思い出した、ひとり旅の効力
今回、2年ぶりのひとり旅を決行した。行き先を決め、ホテルを予約し、自分のためだけに旅に出る準備をする。ひとり旅は楽しいだけでなく、面倒なことも厄介なことも多い。
日々が満たされてさえすればわざわざ旅に出かけなくてもいいのではないか、と思って、実際に「好きな街に住んだら旅欲が減った」というnoteを書いたこともある。
けれどやっぱり、「好きな街に住む」と「旅に出る」の性質は違う。非日常である旅先で、新しい発見や自分の感情の行き先を観察することは、日常ではなし得ないものなのだ。旅先でしか選ばないような本を買って本を読むためだけにカフェに行き、煌く夏の海の街の様子を観察する。それは、日常との距離があるからこそ、心弾ませながらできることだから。

ひとり旅の効力は、忙しいとつい遠ざかってしまう本当の自分を取り戻すことなのかもしれない。「このままでいいや」と妥協や惰性にも似た気持ちで、現状維持を選んで満足しているふりをする自分。本当はもっともっと、違う自分になりたいと思っている自分がいるのに。
見て見ぬふりをしてしまう自分が、ひとり旅を通して解放されてゆく。本当はこんな風に時間を過ごしたかったでしょう?こんなことをやりたかったでしょう?と自分自身に問いかけるように。
自分が願いさえすれば、どこにだって行ける。自分が望みさえすれば、新しい自分にだってなれる。本来の自分を取り戻すためのきっかけになるものが、ひとり旅なのかもしれない。

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