「特にありません」で終わる面談で、自分を採点しなくていい|みとね No.17
面談室を出て、席に戻る。
持って入ったノートと、持って出たノートの中身が、同じだった。
半期に一度の面談。その最後の五分。
「何かありますか」
「いえ、特にありません」
「こちらも特にないです。引き続きよろしく」
それで、全部だった。
夜になって、静かな採点が始まります。
期待されていないのか。
視界に入っていないのか。
直すところすら、見つけてもらえない程度なのか。
その採点は、乱暴です。
空白を材料に、自分の点数はつけられません。
「特にない」は、評価の結果ではなく、観察の欠席であることがあります。
具体的なフィードバックには、コストがかかります。
日常のあなたの仕事を、観察するコスト。
観察したことを、言葉にするコスト。
「特にない」は、あなたの価値の査定額ではなく、そのコストがまだ払われていないという報告であることが、実際には多いのです。
無関心に見えるものと、あなたの値打ちは、別の帳簿に載っています。
沈黙は、誰の未提出物なのか
この場面では、相手の席と上司の席は、同じ椅子です。
自分の席にあるのは、聞きたい観点を一つに絞って、自分から尋ねるという選択肢です。
ただし、これは選択肢であって、義務ではありません。
尋ねなければ何も返ってこない面談は、そもそもの作りがおかしいのです。
上司の席にあるのは、フィードバックを面談に持ってくることです。
フィードバックは、好意でもサービスでもなく、業務です。
部下が資料を持って入るように、上司は言葉を持って入る。面談は、上司の成果物でもあります。
悪気なく起きることもあります。「問題がない=言うことがない」と本気で考えている場合。忙しさで、観察が後回しになっている場合。
それでも、未提出は未提出です。
会社の席にあるのは、フィードバックの最低ラインを制度にすることです。
頻度、観点、記録の残し方。
上司個人の性格と力量に任せている限り、そこは運になります。くじ引きに、あなたの成長情報を預けている状態です。
あなたが抱えなくてよいもの。
沈黙の翻訳作業。期待ゼロ説、嫌われている説、どうでもいい説。
「聞きに行かない自分が悪い」への、一括変換。
面談のたびに開かれる、自分の査定会議。
次の面談に、問いを一つだけ
今日できることは、準備というほどのものでもありません。
次の面談の前に、聞きたい観点を一つだけ決めておきます。
たとえば、「この半年で、続けた方がいいと思う仕事はどれですか」。
一つでいいです。三つも五つも、要りません。
決めても、その日に聞けなかったら、それでもいいです。
問いは腐りません。次の面談まで、持ち越せます。
無言の面談の沈黙は、あなたの成績表ではありません。
今日、決めなくてよいこと。
上司が自分に興味があるかどうかの、結論。
この会社の評価制度への、絶望。
転職サイトへの、登録。
返ってこなかった言葉の分まで、今夜、自分に説教しなくていいです。
白いままのノートは、あなたの空白ではなく、渡されなかったものの形です。
