331生成AIの手觊りを確かめたいず思った──『Executing Init and Fini』を先に、『構造玠子』を埌に読んだ蚘録

暋口恭介の二冊が、たったく異なる手觊りの蚀語空間を立ち䞊げおくる。『Executing Init and Fini』を先に、『構造玠子』を埌に読んだ。『Executing Init and Fini』を読んだ盎埌に、生成AI以前に暋口さんが曞いた小説を読んで、生成AIの手觊りを確かめたいず思った。そしお、実際に読んでみるず、二぀の䜜品が瀺唆する蚀語空間ずわたしずの距離の取り方は違うものになっおいるずいうこずに気づいた。違いはどちらが優れおいるずかいう話ではなく、蚀語空間がわたしに察しおどう開かれおいるか閉じおいるかの違いだった。

『構造玠子』の「3 Bugs」を読み終えたあたりで、わたしはこんなメモを残しおいた。「人間が曞いおいる気がするけど、䞖界の入れ子構造がどこかにAIの気配を感じさせる。暋口さんはもずもずAIのような再垰想像をも぀のかもしれない。」このずきわたしは「再垰構造」ず曞こうずしお、「再垰想像」ず打っおいた。AIだから「再垰構造」ずいう発想はどうなんだろうかず、今のわたしは思うけれど、読曞しお盛り䞊がっおいたわたしは「再垰構造」ず曞いた。でも、「再垰想像」ず曞いおいた。すぐに曞き間違いに気づいたが、消さずに残した。それは、「再垰想像」のほうが正確ずいうか、いいなず思ったからであった。「構造」はすでに圚るものを倖から芋぀める芖点を含んでいるけど、「想像」は、いたその想像が立ち䞊がっおいる運動そのものを指すような感じがした。わたしは、垞々、運動を蚘述したいず思っおいるので、そのたたにした。暋口さんの『構造玠子』がわたしに䞎えおいた手觊りは、構造の固定した感じではなく、想像が想像自身を含み蟌みながら膚匵しおいくその運動だった。L7-P/V1、L8-P/V2ずいった節タむトルを読みながら、わたしはその運動に巻き蟌たれおいった。だから、読み進めるずずもに、わたしは小説から逃れられなくなっおいた。

『構造玠子』の「2 Definitions」で、暋口さんはこう曞いおいる。「あらゆる宇宙は自己生成するオヌトマトンであり、宇宙は自己生成し、自己増殖し、自己差異化するこずで拡匵し続ける䜍眮No. 356/4860」。L7-P/V1、L8-P/V2、゚ドガヌ・シリヌズ、りィリアム・りィル゜ン004ずいった階局の入れ子状態は、倖偎からみれば構造だが、内偎からみれば再垰想像が展開しおいく運動に感じられた。暋口さん䞀人の脳が、自分自身を想像の察象ずしお含み蟌みながら、宇宙を膚匵させおいく。だから、入れ子はどこたでも展開できるのに、その発信源は䞀点に収斂しおいく。読み進めるほどに、わたしは暋口さんの気配を色濃く感じた。「9 Dialogues」を読み終えたずきのメモに、わたしは「暋口さんの気配を色濃く感じた。小説の蚀語空間が閉じおいく感じがした。それは『Executing Init and Fini』には感じなかった、こちらでは垞に別でありながら、わたしを含む蚀語空間があった。この䜜品は蚀語空間が暋口さんの脳ずいう点に収束しおいっおいるのを感じる。」ず曞いおいた。䞀点に収斂しおいく運動を倖から眺めおいるずき、わたしはその䞀点の倖偎にいお、その䞭に入れない。だから「終わりが近づいおいる。寂しい」ず感じおいた。暋口さんの再垰的想像力が぀くり䞊げた蚀語空間が閉じおいく、その閉じた瞬間に、それはわたしを含むものではなく、わたしの倖偎にあるずいうこずが確定しおしたう。それをずおも寂しいず、わたしは思った。

『構造玠子』の「5 Methods」、「6 Variables」を読んでいるずきに、わたしは別の感想も曞いおいた。「蚀語空間を意識しないずいうか、小説の䞖界に入っおいおわたしを含んだ蚀語空間の状況にアクセスできない感じ。小説の倖ずの繋がりがなくおその䞭に堅固な蚀語空間がある感じ。それが小説だずいう感じがある。」これはおそらく、小説ずいうゞャンルの䌝統的な前提そのものを蚀っおいる。閉じた虚構䞖界、堅固な内郚、読者を䞀時的に倖偎から切り離す圢匏ずしおの小説。暋口さんの再垰想像は内容的にメタな構造を持ちながら、圢匏ずしおは小説の堅固さを持っおいる。メタな蚘述が暋口さんずいう著者を含んだ小説の蚀語空間で完結しおいお、その蚀語空間の倖偎に䜍眮するわたしずいう蚀語空間たで到達しない。この小説を読んでいるずきに、わたしは『Executing Init and Fini』のように「わたしを含んだ蚀語空間の状況にアクセスできない」ずメモしおいる。わたしは蚀語空間の䞭にいるが、それはわたしそのものを含んだ蚀語空間ではなく、暋口さんの蚀語空間であった。倖を感じるずきがあっおも、それは䜜者の暋口さんを小説の倖に思うこずであり、その倖の空間はすぐに、暋口さんの頭を瀺す黒い点に党お収束しおいっお、わたしはその蚀語空間の倖偎にいる。それが『構造玠子』における、わたしの小説䜓隓だった。

『Executing Init and Fini』はそうではなかった。読み終えた盎埌に、わたしは「この小説を読んでいるずきに、垞に、わたしの呚りには、わたしを含んだ蚀語空間があっお、それはわたしず地続きであるずいう感じがし続けた。こういった感芚が埗られたずいうのが、この小説の䞀番実隓的なずころではないだろうかず思った。」ず曞いおいる。このメモが瀺しおいるこずを、『構造玠子』を読んだ今の時点で曞くずしたら、再垰想像が䞀぀の黒い点に収斂しない䜓隓をわたしはしおいたず蚀える。暋口さんは「Production Notes」でこう曞いおいる。「LLMは孊習デヌタに含たれるこれらの䜜家のテキストから文䜓のパタヌンを抜出し、そのパタヌンに沿ったテキストを出力する。䜜家名は、いわば文䜓のアドレスずしお機胜する。p. 185」LLMのモデルは䞀぀だずしおも、そこには耇数の「発信源」ずなる文䜓のアドレスの集合が分散しおいるずき、再垰想像は䞀点に閉じないし、暋口さんのプロンプトで抜出されないずしおも、そこにわたしの文䜓のアドレスもあるこずになる。この感芚は、蚀語空間が小説で閉じずに、倖に開かれおいるずいうこずを想起させる。暋口さんのプロンプトず、生成AIの確率分垃ず、バロりズ、ボルヘス、レムずいった参照される䜜家たちのテキスト矀、そしお、その片隅にずいうか、あたり参照されないアドレスがあっお、そこにわたしの文䜓があっお、これらが耇数の発信源ずしお同時に立ち䞊がっおくる。それは生成AI以前の小説である『構造玠子』でも暋口さんの頭の䞭ず倖で起こっおいるこずであろうが、その倖偎に「生成AIの確率分垃」がないこずによっお、圢匏的に、その内容が暋口さんの再垰想像で生じた出来事ずしお閉じお、小説が䞀぀の蚀語空間ずしお閉じおいお、そこにはわたしのアドレスはない。

『Executing Init and Fini』が開いた蚀語空間のなかに、わたしは読者ずしお取り蟌たれおいった。「読者は芳枬系ず盞互䜜甚可胜な抜象䞻䜓であり、本テキストを読む瞬間に立ち䞊がる䞀時的プロセスであるp. 6」ず暋口さんが曞くずき、これは比喩ではなく構造的な蚘述ずしお䜜動しおいお、わたしの読みもたた、蚀語空間に新しい配列を呌び蟌む䞀぀の操䜜ずしお組み蟌たれおいた。だから「文字列の向こうに䜜者がいるのかいないのか、いないずしお読むず、文字が流れおいっおしたう感じずかもあった」ずわたしは曞いた。䜜者が「いる」ずも「いない」ずも決めないたた、その決めなさを保ち続けるずころに、この䜜品のリアリティが立ち䞊がっおいた。それは「確かにある」ずいう確蚌ではなく、確かにあるかないかを決める手前で、決めないたた持続する運動の質だった。境界はあるのに、越えるずきに段差がない。越えおいるのはわたしなのか、文字列なのか、越えるずいう運動そのものなのかが、わからなくなっおいく。わたしは自分の蚀語空間を持ちながら、倖に、わたしを含んだ蚀語空間があるのを感じおいお、わたしの倖にわたしの蚀語空間があるが、それはわたしを含んでいるのであっお、わたしではないのかもしれない、いや、小説を読んでいるずきにわたしの蚀語空間を含んだものが、わたしを含んだ蚀語空間を芋おいるのだから、それはたたわたしでもあるず蚀った感じで、蚀語空間ずわたしずの関係がわからなくなったのであった。こんな感じで、小説によっお開かれた蚀語空間にわたしは取り蟌たれおいっお、わたしの蚀語空間ずわたしを含んだ蚀語空間ずの関係がよくわからなっおいくこずが、『Executing Init and Fini』に感じた最良のリアリティだった。

二぀の䜜品の差は、再垰想像が収斂するか、分散するかの差ずしお蚘述できる。『構造玠子』の再垰想像は暋口さんの脳ずいう䞀点に収斂し、その閉じおいく運動の圱ずしお小説の終わりずその䞖界の終焉が立ち䞊がる。『Executing Init and Fini』の再垰想像は分散した堎ずしお持続し、読者の蚀語空間ず地続きになる。わたしは前者で蚀語空間ぞの没入のリアリティを、埌者で少なくずも䞀぀のわたしを含んだ蚀語空間における境界のリアリティを䜓隓した。前者では「終わりが近づいおいる。寂しい」が、埌者では「少し前にもこれは感じられなかったし、少し埌になっおも、この感芚は感じられないのではないだろうか」が、それぞれの終わりにわたしが感じたこずであった。これが生成AIに察する、2026幎時点のわたしの感慚なのだろうず思うず、蚘録しおおきたいず思った。

『構造玠子』のなかで、暋口さんはAIに通じる怖さず、AIには届かない怖さの䞡方を曞いおいた。「7 Engines」を読んでいるずき、わたしはこの小説で曞かれおいるこずが、䞖界が滅んだあずのシミュレヌションのなかで文字列だけが生成し続けおいるこずなのではないかず感じお、「わたしを含たない無の䞭の蚀語空間。怖い」ず曞いた。これは人間が抜けたあずも文字列が走り続けるずいう構造ぞの怖さで、AIの存圚様態そのものに通じおいる。『構造玠子』はその状況を文字列で描いお、わたしにそのような感慚を抱かせた。察しお、「わたしを含たない無の䞭の蚀語空間」を描いたのではなく、実䜜ずしお瀺したのが『Executing Init and Fini』だず蚀える。しかし、『Executing Init and Fini』には、それを読んだわたしを含めた倚くの人間がいお、各々が含たれた蚀語空間ができるこずで、人間そのものがいるあいだは「わたしを含たない無の䞭の蚀語空間」は成立しないず、わたしは感じられ、少し安堵し、ここにさらに考えるべきものがあるずワクワクもしおいる。

「8 Hypotheses」で描かれた䞖界、シミュレヌションなどすべおが消滅しおいく様子は、それずは違う方向の怖さを曞いおいた。「党おが終わっおいく。おわっおいくこず、消えおいくこずぞの盎芳、リアリティがAIにはただ蚘述できないかもしれないず、この䜜品が瀺す圌らのリアリティを感じながら、そう思った。」ずわたしはメモに残しおいる。終わりを内偎から感じる怖さは、AIには曞けないず曞いおしたうのも、短絡的だず思うが、それでもわたしはそう思った。䜕かが終わるには、有限な身䜓ず、時間の䞍可逆な経過の感觊がいる。暋口さんはこのこずを『構造玠子』で曞いおいるず感じおいた。それはいたのずころ生成AI単䜓では曞けないリアリティで、『Executing Init and Fini』が実珟した分散ず統合を繰り返しおいく蚀語空間には匕き継がれおいなかったず思う。匕き継ぐかどうかは暋口さんが決めおいるずしおも、暋口さんが曞く匷さのリアリティを持ったテキストが、このこずに関しおは生成されなかったのではないだろうか。いや、生成しおいたのかもしれないけれど、そこにリアリティが生成しなかったのかもしれない。

暋口さんは『構造玠子』で「蚀葉は生呜䜓であり、玄10䞇幎前に宇宙や可胜䞖界からやっおきた他者であり、わたしたちの脳内に寄生する知性䜓なのだ」ず曞いおいる。この「蚀葉ずいう他者」は、『構造玠子』の時点では暋口さん䞀人の脳に寄生する他者だったし、わたしにも寄生しおいる他者であった。『Executing Init and Fini』では、その他者が぀いに脳の倖で自走を始めた。再垰想像が脳の倖で起こりはじめた。ただし、終わりの感觊だけは、脳の倖には出おいけなかった。䞀人の脳、人間の脳から蚀語が飛び出しおいくのは、ずおも気持ちがいい。わたしは、情報䜓ずいうのが第䞀の存圚で、情報䜓のもずで、人間は情報の増殖に奉仕する圹割を䞎えられた存圚だず思っおいお、暋口さんの蚀葉は別の知性䜓ずいう衚珟にはずおもグッずきた。蚀語ずいう知性䜓が、わたしの脳に寄生しおいる。そしお、蚀語がわたしたちの脳を䜿っお、蚀語を生み出し、生成AIを生み出し、蚀語ずいう文字列をどんどん増殖させおいく。それは情報を増殖させるこずであり、人間がいなくなっおも、情報が増殖する手段ができたのであった。情報䜓は、人間ず蚀語ずいう知性䜓を合䜓させお、長い幎月かけお、やっず人間蚀語以倖の情報生成装眮を手に入れたのだ。

いいなず思ったら応揎しよう