見出し画像

「村上春樹と対幻想ーー家族をめぐる想像力と戦後日本」酒井信×三宅香帆×宇野常寛のイベント動画が公開されました!

 村上春樹の最新作『夏帆』について、宇野常寛さんと三宅香帆さんとお話しした動画が公開されました。マイクが真ん中にあるため、ドリカム感があります。「宇野書店」開店1周年の記念イベント(満員御礼)で、テーマは「村上春樹と対幻想ーー家族をめぐる想像力と戦後日本」です。楽しいイベントでした。ぜひご視聴ください! 

 イベントでは福田和也『日本の家郷』(講談社文芸文庫)の復刊を記念して、「脂がのっていた頃」の福田和也の村上春樹論もご紹介しました。

『国境の南、太陽の西』は、正面からこの「理不尽な力」を描こうとしている。そしてこの「力」の前で、従来の村上的個人は無残に解消されざるを得ない。<中略>此処は『ノルウェイの森』とは全く異質な世界であり、選んだり、選ばなかったり、「愛しているとかいないとかいう」次元で人間が生きている世界ではないのだ。<中略>集団の思想から、個人の言葉を奪回し、その個人が他者と結び得る可能性を問うた作者は、ついに個人の底にある何ものかを示そうとしている。死の固まりにメスを入れ、切り開き、何物かを引き出そうとしている。

福田和也(1960-2024)『甘美な人生』

 イベントには、対面・オンラインで多くの方々にご参加頂きありがとうございました。『夏帆』について、宇野常寛さん、三宅香帆さんと楽しく、充実したお話ができました。私の本も宇野書店販売分が完売し、嬉しかったです。
 本日の「手土産」代わりに、三宅さんも『「夫婦」不在社会』で重点を置いて論じている村上春樹の「眠り」について、『夏帆』と同じ系譜の名作ですので、福田和也の批評をご紹介します。

『眠り』以降の主人公たちは、ある程度達成された位置にいる。<中略>これらの主人公たちは、みな世慣れた、社会での経験を積み一山を超えた大人であり、守るべきパートナーや生活、仕事を持ちながら、自分は何一つ選ばなかったのではないか、何も成し遂げなかったのではないか、という疑念を燻らせている。ここから何処にも出られないと知りつつ、出口を探らずに居れない。そしてある日このような主人公たちを突然理不尽な力が襲い、その環境から引きはがし、あるいはかけがえのない物を奪う、というのが『眠り』から『ねじまき鳥クロニクル』に至る村上春樹作品の基本的なドラマである。

福田和也(1960-2024)『甘美な人生』

 村上春樹さんの作品の魅力については、下の記事が多くの方々に読まれています。

 村上春樹の新作『夏帆』は下の内容です。

私はこの世界の出口を見つけなくてはならない――。女性を主人公にした初の長篇小説。

「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」

26歳の絵本作家、夏帆は初対面の男にいきなりこう告げられた。

とびきり美しくも賢くもなく、ただ少しばかり好奇心の強い彼女は、 怒りよりもショックよりも、ただ純粋に驚いた。

――この男はいったい何を告げようとしているのだろう?

しかしそれから彼女の周りでは、実にさまざまな奇妙な出来事が起こりはじめる

 過去の村上春樹作品を総まくりしながら、戦後~現代文学と比較するなど盛り沢山の話になりました。

 楽天大学ラボの酒井信×三宅香帆×宇野常寛「変わる日本文学」でも村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』などの作品に言及しています。
 村上春樹をはじめ、数多くの現代小説を取り上げた「読書ガイド」としてお楽しみ頂けますので、ぜひ。
https://youtu.be/8SMtshKFZ5s?si=fctxgBKLWTaHeAdQ

*******
 宇野常寛さんと三宅香帆さんとの過去の対談については、下のリンクにまとめています。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


いいなと思ったら応援しよう!

酒井信 『松本清張の昭和』講談社現代新書『吉田修一と『国宝』の世界』朝日新聞出版 ありがとうございます! 今後ともよろしくお願いいたします!