ねずみとさかなとレバーと#2

透明な魚が空をすーっと飛んでくる。いや、あれは横に向かって滑っている。同じ大きさのまま上下に揺れる事もなく灰色の空を滑ってくる。距離感が全く分からない。カラフルで透明な魚である。様々な色のボロ布を適当に何枚も継ぎ合わせたような体。それを透明な膜で包んでいるように見える。つるつると滑ってくる。
視覚ではない感覚でその透明な魚が我々の近くにきてるのだと分かった。私とねずみはなぜかその魚の後について行くことにした。ただ、だまってついていく。
魚はゴツゴツした岩石の上や、薄暗い森の中や、アスファルトの歩行者天国の上、実にいろんな景色の上を相変わらず灰色の空に身を任せてすいすい滑った。私とねずみは、苦労しながらも魚の後を追う。たまに我々が遅いと魚はぴたりと静止して我々を待った。
私も、おそらくねずみもその魚を追う事になんの疑問も感じなかった。灰色の空を流れる魚に、突然変わり行く様々な景色。
魚は波一つ立っていない青い水面に波紋も立てずに入っていく。やはり、我々はついていく。海の底の奥には大きなレバーが一つある。

ねずみが口を開く。
ーいいかい。あんたはきっと今何かに凄く困っているんだ。僕はあんたを何かしらの形で手助けしなくちゃいけない。だから、あんたをあそこで待っていた。
ー君はあの魚について知っているのかい。
―いや、知らない。なんせ僕もただのねずみだ。そんな何でもかしこでも分かるわけがない。でも、あの魚にせよ、僕にせよあんたを待っていたんだよ。
そういうとねずみはレバーをゆっくりと倒した。
つづく
