何者にもなれない33歳女芸人、女下ネタライブを作ったときにぶつかったデカ壁
女子バレーボール部の1年生だった私は、翌日の他校での練習試合に備えて、ボールケースを自宅に持ち帰っていた。ボールケースとは、バレーボールを入れる一辺が1mくらいの四角い箱状のもので、足が4本ありそれぞれにキャスターがついてコートの中でも自由自在に動かすことができる。
キャスターにゴミが挟まってないか、ちゃんと動くかチェックするために自室で折り畳まれたボールケースを組み立ててみた。いつもの部屋に部活で使うボールケースがあるその光景にソワソワしてしまう。狭い部屋で何とかキャスターのチェックを終えて、ボールケースを横に倒して畳もうとした時、ボールケースのポケットから白い何かがポロンと出た。
38cm羽あり、夜用ナプキンだった。
いつもの部屋、
ここには普段は存在しないボールケース、
ありえない場所から勢いよく飛び出してきたナプキン。
3つが同時に視界に入った瞬間、私は頭がおかしくなるほどに笑った。涙を流して笑った。なんでこんなとこに入ってるねん。なんで飛び出してくるねん。先輩が入れていたのだろう。すぐに使えるようにと、ポーチに入れずに入れていたのだろう。女子だけの部活ならありえることだ。ひとしきり笑った後には自分の部屋にボールケースがあることも面白くなってきた。なんで折りたためるねん。なんでちょっと重たいねん。部屋にも面白くなってきた。なんで私部屋あるねん。ナプキンのせいで、いつもの光景が面白かった。
でもなんとなく、笑っちゃいけないような気がして、そのことは誰にも言わなかった。
別の日、私たちはいつものように練習に励んでいた。先輩のスパイクの練習中は常に玉拾い。拾ったボールはボールケースに入れに行く。
すると、先輩の強烈なスパイクがボールケースにぶち当たった。高校も推薦で行くことが決まっている先輩のスパイクはすごい威力である。当たった瞬間ボールケースが空中に飛んだ。空に飛んだボールケースが回転して逆さまになる。まるでスローモーションのようだ。入っているボールが空中にひとつ、ふたつと舞う。そして私は見つけてしまった。ボールの中に紛れて舞う、ボールじゃないものを。
羽があるはずだけど、羽はたたんでいた。その羽を使うときは今ではないようだ。優雅に、おだやかに、みんなを応援しているかのように舞う。一番最後に着地したそれはなぜか自慢げな顔をしていた。私はもう堪えられなかった。拾うこともできずにその自慢げの前で膝から崩れ落ちた。
私が蹲っているのを見た玉拾いの一年生が駆け寄った。私の前には羽をたたんだ白いアイツ。駆け寄ってきたチームメイトがどんどん蹲っていく。みんな口々に、なんで?どこから?飛んでる白いの何やろうと思ったらナプキンやったんかい。そういえば先輩入れてたかも。前も入っててん。前も?家にボールケース持って帰った時。うそやん。でも違う種類や。じゃあまた誰か入れてるやん。前はどんなん?夜用。確かにここに入れたら便利やけど。急に練習中に出てくるのやめてくれ。笑ってまう。
練習している先輩たちに笑っていることがバレないように、秘密を漏れ出さないように私たちは必死で立ち上がり、その後も何度も思い出して笑い、落ち込んだ部員を笑かす道具として使い、そして、そんな感じで私たちは大人になった。
こんなことに笑って大人になってきたから、こんなことで人を笑かしたいと思っている。気持ちの動きは単純だ。
でもこんなことで笑かしたいと思っているだけなのに、このことがわからない、経験のない人への「抗議」だと捉えられることがあった。
私が事務所に入ってないから、メガネをかけているから、スーツを着ているから、そう見えてしまうのかもしれない。
いやいや、私があまりにも何者でもないからかもしれない。私がちゃんとテレビに出ていたら、私がちゃんと結果を残していたら、誰もがおもしろいと思う芸人だったら、そんなふうには思われなかっただろう。
まっすぐのお笑いで結果を出せないから、下ネタというみんなの気を引きやすいものを選択していると思われている。女性を振りかざして話題作りをしようとしている、そう思われてしまうのかもしれない。
もっと単純に考えていた。面白いからやってみようと思っただけだった。でも、私の今の結果を出していない地位が、女芸人という立ち位置が、話をややこしくさせている。少しナーバスになる。もしかして、と思ってカレンダーを見た。生理前ではなかった。
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