北海道で増える日本ウナギ
文藝春秋六月号の巻頭随筆で、村松寛太氏が北海道の日本ウナギについて興味深い報告を書いていた。
きっかけは、2020年に東京大学の研究チームが北海道で初めてシラスウナギを発見したことだった。これを受けて、北海道大学との共同研究による大規模な生息調査が行われることになった。
当時、北海道大学大学院に在学していた村松氏も調査チームに参加した。対象となったのは北海道南岸六百キロに及ぶ百五河川。各河川にウナギが生息しているかどうかを調べる大掛かりな調査で、その八割以上を村松氏が一人で担当したという。
調査内容は、ウナギの捕獲と周辺環境の測定である。川一本につき二時間半ほどかかる重労働で、一日に調査できるのは三、四河川が限界だった。
調査を続けるうちに、ウナギの生息は水温と深く関係していることが見えてきた。ある川では片側でウナギが捕れるのに、反対側ではまったく捕れない。ウナギのいる側には水産加工場があり、排水が流れ込むことで水温が上がっていた。ウナギは水温が十五度を下回ると餌を食べなくなるため、水温は生息を左右する大きな条件らしい。
調査後のデータ分析では、夏場の水温が高い川ほどウナギが生息していることも分かった。街場に近い川は木が伐採されて日光が当たりやすく、水温も上がりやすい。一方、火山地質の地域では湧き水が多く、夏でも水温が上がりにくいという。ウナギが棲みつくには、夏場に十分餌を食べ、成長できる環境が必要なのだろう。
村松氏は最後に、「北の大地でウナギが徐々に増えつつあるのは、地球温暖化と無関係ではない。手放しで喜べることでもない」と述べている。
たしかに、北海道で日本ウナギが増えているという話には驚かされる。子供の頃には、とても想像できなかったことである。
日本ウナギは現在、絶滅危惧種とされている。シラスウナギの漁獲量は長期的に減少し、過剰な漁獲や高い需要も続いてきた。さらに河川改修やダム建設、水質悪化によって生息環境も悪化している。
北海道での生息数増加が、こうした流れを大きく変えるとは思えない。それでも、せっかく北の川に根づき始めた命である。他の地域の二の舞にならぬよう、大切に守っていって欲しい。
