個人でできる対策を網羅し、貧血政策の拡充を訴える―山本佳奈著『貧血大国・日本―放置されてきた国民病の原因と対策』(光文社新書、2016年)を読む
◆生理と貧血の密接な関係
生理とナプキンのことが話題になるなか、生理と合わせて貧血の深刻さについてもクローズアップさせる必要があると痛感している。
貧血に陥りやすい、あるいは貧血もちが女性に多いのは、生理との関係が深いからだ。
毎月の生理による大量の経血が体内鉄分量にマイナスの影響を与えるのは、少し知識を得れば誰にでも理解できることである。
貧血は処置を誤るとストレートに命を落としかねないものだ。
国民的な学習・啓蒙活動とともに、公的な対策の整備にむけた運動を強めることも重要である。
◆貧血とは鉄分不足による酸素供給不能状態
私のわりと身近な知人に、重度の貧血を抱えている人がいる。
ときおり頭痛を訴え、ひどいときは酸欠で呼吸困難に陥るなど、そうした状態のときに接する機会がたびたびあった。
貧血の怖さを身近に体験することで、自分自身が貧血体質でないとしても、女性を中心に少なくない人が貧血に苦しんでいる以上、他人事で済ますわけにはいかないと痛感している。
ヘモグロビンの材料である鉄は、人間の体内に酸素を運搬する役割をはたす。
血液が赤いのは鉄と酸素の結合(酸化鉄)によるもので、原理的にはサビが赤味を帯びているのと同じだ。
つまり貧血とは、血液成分である赤血球内のヘモグロビンの量が何らかの原因で減少することによって鉄分が不足し、酸素供給が不能となる状態を指す。
◆貧血に無策な日本
貧血と真剣にむき合うようになるなかで、この本と出会った。
インパクトのあるタイトルに惹きつけられた。
著者は新進気鋭の内科医(本書執筆当時)。
貧血をライフワークとしつつ、「ちょっとだけ医見手帖」(AERA DIGITAL.)という連載記事を配信するなど、医療全般に関心をひろげて活動している。
本書によれば、50歳未満の日本人女性の22.3%が貧血であり(2006年の調査)、世界有数の〝貧血大国〟だ。
とくに妊婦の貧血は深刻で、先進諸国の平均値を大きく上回るとのこと。
にもかかわらず、日本では貧血対策が皆無に等しい状態がつづいている。
多くの女性が貧血の恐ろしさを認識していないと考えた著者は、本格的に貧血の研究を開始し、本書の執筆にいたる。
◆活用しやすい解説書
若い女性だけでなく、高齢者や幼児期、スポーツ貧血や世界的な状況、美容に与える影響まで幅ひろく解説。
鉄分を吸収しやすい食事など個人でできる対策が網羅されており、貧血もち本人はもとより、家族や周囲の人間も活用しやすくなっている。
同時に、個人の努力だけでは限界があるので、公的な貧血対策を拡充させるべきだと力を込める。
私たちの貧血認識を一新させる良書だ。
ぜひご一読を。
(2025年4月7日記)
