クラブが目指す「クラブの形」- 多様性時代のクラブのあり方 -
前回は、プロスポーツ興行の役割について整理してみた。
競技者を育てること。観戦者を増やすこと
同じ「競技普及」と呼ばれる活動であっても、その目的は一つではない。
そして、一つの施策にも複数の目的が重なっているという話を書いた。
今回はその続きとして、「クラブは何を目指すべきなのか」ということについて考えてみたいと思う。
B.革新が変えた価値観
プロスポーツ興行は「スポーツ」である。
スポーツである以上、勝利を目指す。
これまでは、昇降格を前提とした競技レイヤーの価値観が強かった。
勝つこと。
強くなること。
上のカテゴリーへ行くこと。
スポーツである以上、その価値観は極めて自然なものである。
しかし、B.革新によって、その前提は少し変わった。
売上、入場者数、アリーナ要件など、クラブ経営そのものを評価する基準が加わり、競技力だけではなく、ビジネスとしての持続性も問われる仕組みへと変化した。
競技として勝利を目指すこと。
ビジネスとしてトップカテゴリーへの参入を目指すこと。
もちろん昇格≒トップカテゴリーを目指す価値は今も大きい。
しかし、評価軸が増えたことで、クラブ運営において「何を優先するのか」も、各クラブが選ぶ時代になったように感じている。
ビジネス目線での「適性規模」
プロスポーツ興行は「興行」である。
興行である以上、クラブを成長させることも重要な目的になる。
しかし、その「興行」の形は、すべてのクラブで同じなのだろうか。
民設アリーナを持ち、大都市圏を商圏とするクラブ。
公設アリーナを拠点に、地域に根差して活動するクラブ。
同じリーグに所属していても、市場規模も、資金力も、地域性も、そして応援してくれる人たちも違う。
もちろん、売上を伸ばすことも、集客を増やすことも重要である。
しかしながら、クラブの努力だけではどうしようもない事象もある。
そんな中で、そのカテゴリー分けのための数字だけを追い続けることが、本当にすべてのクラブにとって最適なのだろうか。
前提条件が違うのであれば、求められるビジネスの形も違ってくる。
それぞれのクラブには、そのクラブらしく運営できるビジネスの形が存在しており、私はそれこそが「クラブの適性規模」だと考えている。
B.革新によって「どこまで大きくなるべきか」をクラブ自身が考えられるようになったと感じている。
クラブによって、目指す姿は違う
ここまで考えると、カテゴリー分けとは単なる序列ではなく、それぞれのクラブが「どのようなクラブを目指すのか」を考えるための仕組みとして、捉えることもできる。
トップカテゴリーを目指すクラブ。
地域とのつながりを何より大切にするクラブ。
育成を軸に据えるクラブ。
ファミリーが安心して楽しめる興行を目指すクラブ。
どれも間違いではない。
重要なのは、「掲げた目的」と「選択する施策」が一致していることだと思っている。
施策の選択の結果が、クラブの個性や文化に繋がっていく。
そういった「らしさ」が積み重なっていくことが、今後のクラブ戦略のカギになっていくだろう。
その一方で、何かを選ぶということは、何かを手放すことでもある。
強さや興業の質を追い求めればコストは増え、チケット価格も上がるかもしれない。
クラブの規模が大きくなれば、選手との距離は少しずつ遠くなるだろう。
育った選手がより高い舞台へ羽ばたくために、チームを去るかもしれない。
どれもクラブにとって悪いことではない。
クラブの成長に伴って起こり得る変化の一つであり、クラブが選択した目的の先にあるトレードオフでもある。
だからこそ「何を優先するのか」。
その問いに向き合うことも重要と考えている。
一人一人で考える「応援したいクラブの形」
クラブとは、スポーツチームであり、企業でもある。
しかし、それだけではない。
クラブとは、関わる人たちの「想いの集合体」である。
選手やフロントだけでもない。
スポンサーだけでも、行政だけでも、ファン・ブースターだけでもない。
そのすべてが積み重なって、一つのクラブになる。
だからこそ、クラブの未来は「一つの価値観だけ」で決められるものではないと考えている。
前回、私はプロスポーツ興行の役割を、「競技者を育てること」と「観戦者を増やすこと」と整理した。
その役割が果たされるのであれば、どのカテゴリーであっても、プロスポーツ興行は成り立つと考えている。
これから各クラブは改めて「自分たちは何を目指すクラブなのか」を問われることになるだろう。
その答えは、一つではない。
そして、一度決めた答えであっても、時間と共に変化していくだろう。
私は各クラブがそれぞれの地域や環境に合わせて、特色を生かしながらクラブ運営が出来るリーグであってほしいと思っている。
そして、ファン・ブースターもまた、「自分はどんなクラブを応援したいのか」を考え・発信してく時代になったのではないだろうか。
noteの最後に一つ質問を。
あなたはどんなクラブを応援したいですか?
それぞれが思い描く「応援したいクラブの形」を語り合える。
そんなリーグであってほしいと願っている。
