👨🏫 幼児教育と学校教育の架け橋 ~幼保小連携ってどんなこと?~
保育志コンサルタントのつきが、元小学校教員の小野に尋ねた。
「今日は、小学校教員時代に携わっていたお仕事について聞かせていただけるんですよね」
小野は静かにうなずいた。
「はい。今日は、私が小学校教員時代に携わっていた仕事についてお話ししたいと思います」
保育志コンサルタントのホシは身を乗り出す。
「学校と保育園に関係するお仕事でしょうか」
「そうです。みなさんは『幼保小連携』という言葉を聞いたことがありますか?」
つきは少し考えてから答えた。
「教育や保育に関わる人には知られていますが、一般の保護者には、まだあまりなじみがない言葉かもしれませんね」
「その通りです。教育関係者にはなじみのある言葉ですが、一般の方にはあまり知られていないかもしれません」
ホシが尋ねる。
「幼保小連携とは、具体的にどのような取り組みなのでしょうか」
「幼保小連携とは、幼稚園・保育園と小学校が連携し、子どもたちの育ちをつないでいく取り組みです」
「先生同士が話し合うだけではないんですよね」
つきが確認すると、小野はうなずいた。
「先生同士で情報交換や研修を行うこともありますが、現場では、年長児と小学校1年生が一緒に活動する機会をつくることが中心になります」
「年長児にとっては、小学校を知る機会になる。1年生にとっては、年下の子どもと関わる機会になるんですね」
「はい。私が勤務していた川崎市では、各小学校に担当教員が配置され、多くの場合は1年生の学年主任がその役割を担っていました」
ホシが驚いたように言った。
「各小学校に担当者がいたのですね」
「この取り組みは20年ほど前から始まり、地域によって学校が中心となる場合もあれば、幼稚園・保育園が主体となる場合もあります。私の経験では、学校側が中心となって進めるケースが比較的多かったように思います」
幼保小連携の目的
つきが改めて尋ねた。
「では、幼保小連携には、どのようなねらいがあるのでしょうか」
元小学校教員は、一つずつ挙げていった。
「学校現場の立場から見ると、大きくは次のような目的があります」
幼稚園・保育園から小学校へのスムーズな進学を支えること
幼児期の学びと小学校教育を自然につなぐこと
小学校という環境を事前に体験してもらうこと
年下の子を思いやる気持ちを育てること
「もうすぐ2年生」という自覚を育むこと
ホシが言った。
「年長児のためだけの取り組みではなく、1年生の育ちにもつながっているのですね」
「そうです。さらに、その背景には『小1プロブレム(小1の壁)』という課題もあります」
つきが続ける。
「園での生活から小学校生活へ変わる中で、子どもが戸惑ったり、集団生活になじめなかったりする問題ですね」
「はい。小学校という場所や1年生の姿を事前に知っておくことが、入学への安心にもつながります」
学校ではどんなことをするの?
ホシが尋ねた。
「実際には、どのような活動を行っていたのでしょうか」
元小学校教員の小野は、当時の活動を思い出しながら答えた。
「実際には、次のような活動を行っていました」
卒園した園を訪問し、一緒に遊んだり、お世話をしたりする
生活科で学んだ昔遊びや工作を一緒に楽しむ
小学校へ招待し、校内を案内する
給食時間を一緒に過ごす(園児はお弁当を持参)
授業を見学してもらう
合唱や演奏を披露する
つきが楽しそうに言った。
「園児にとっては、小学生と一緒に遊んだり、学校の中を案内してもらったりする特別な一日になりますね」
「こうした活動は、主に生活科の学習の中で行います」
「生活科は、学校の中だけではなく、身近な人や地域、自然と関わりながら学ぶ教科ですよね」
「そうです。生活科は子どもたちにも人気の教科です」
ホシが尋ねる。
「園児と関わるとき、1年生たちはどのような様子になるのですか」
元小学校教員は、少し笑いながら答えた。
「園児と関わる時間になると、1年生たちは少し誇らしげな表情になります」
「自分たちも、少し前までは園児だったのに」
つきが言うと、元小学校教員もうなずいた。
「そうなんです。『自分がお兄さん、お姉さんになった』。そんな気持ちが自然と育っていくのを、何度も目にしてきました」
実はとても大変な仕事
ホシが少し表情を引き締めた。
「子どもたちの楽しそうな姿だけを見ると、とても温かい取り組みに見えます。ただ、実際に進める側には、多くの準備がありそうですね」
「はい。一方で、この事業を進めるには、多くの苦労もあります」
小野は、当時の調整を振り返りながら挙げていった。
学区内のたくさんの園と連絡を取る必要がある
1年生の卒園した園が15〜20園に及ぶこともある
入学予定児童の確認が必要
入学予定ではない園児にも体験機会を提供する配慮
担当保育士がいない園では調整に時間がかかる
予算はほとんどない
園児一人ひとりの特性にも細やかな配慮が必要
つきが驚いたように言った。
「1年生の卒園した園が、15園から20園に及ぶこともあるのですね」
「そうなんです。『一緒に遊ぶだけ』と思われるかもしれません。しかし実際には、その裏側で多くの準備や調整が行われています」
ホシが続けた。
「学校の先生だけではなく、園の先生との日程調整、人数の確認、安全面への配慮も必要になりますね」
「しかも活動するのは、まだ入学して1年しか経っていない子どもたちです」
つきがうなずく。
「1年生にとっても、初めて経験することが多い時期ですね」
「はい。学習のねらいを達成しながら、安全面にも気を配り、行事を成功させるには、想像以上のエネルギーと準備時間が必要でした」
それでもこの仕事には大きな価値がある
ホシが尋ねた。
「それだけ大変な仕事でも、続けたいと思えた理由は何だったのでしょうか」
小野は、当時の子どもたちの姿を思い浮かべながら答えた。
「私が1年生の学年主任を担当したとき、『これは本当に意味のある仕事だ』と感じました」
「どのような取り組みをされたのですか」
つきが尋ねる。
「子どもたちとは『スーパー1年生になろう!』を合言葉に、園児が楽しめる活動を一緒に考えました」
ホシが笑う。
「スーパー1年生。子どもたちも張り切りそうな合言葉ですね」
「砂遊び、けん玉、鬼ごっこ、音楽の授業、学校探検……。どの活動でも、1年生は目を輝かせながら園児と接していました」
「先生から言われたことをするだけではなく、自分たちで園児を楽しませようとしていたのですね」
つきの言葉に、元小学校教員はうなずいた。
「そして帰る頃には、園児たちは笑顔で『バイバイ!』と手を振って帰っていきます」
ホシが穏やかに言った。
「1年生にとっても、自分が誰かの役に立てたと感じられる時間になりそうです」
「その光景を見るたびに、この活動を続けてきて良かったと思いました」
コロナ禍で変わったこと
つきが尋ねた。
「その幼保小連携も、コロナ禍では大きな影響を受けたのでしょうか」
「残念ながら、この取り組みはコロナ禍をきっかけに大きく縮小しました」
ホシが確認する。
「直接会うこと自体が難しくなりましたよね」
「まったく実施できなかった年もあります。子ども同士が直接関わる機会が減ってしまったことは、とても残念でした」
つきが言った。
「画面や資料で学校を知ることはできても、実際に1年生と一緒に遊び、学校の空気を感じる経験とは違いますね」
「そう思います。子ども同士が直接関わるからこそ生まれる気づきや安心感がありました」

幼保と小学校がもっと近づくために
ホシが改めて尋ねた。
「これまで学校側の経験を中心にお話しいただきました。幼稚園や保育園との関係について、今はどのように考えていますか」
小野は答えた。
「私は小学校教員でしたので、どうしても学校側から見た話が中心になります」
「でも、本当は幼稚園や保育園の立場を理解することも、とても大切ですよね」
つきが言う。
「その通りです。本当は幼稚園や保育園の立場を理解することも、とても大切です」
ホシが、保育園側の状況を思い浮かべながら話した。
「忙しい保育の中で、複数の子どもを連れて学校まで移動する。普段とは違う場所で安全を守る。それだけでも簡単なことではありません」
「はい。忙しい保育の中で学校へ足を運ぶこと、子どもたちを引率することは決して簡単ではありませんよね」
つきが続ける。
「園によって職員の人数や行事、保育体制も違います。学校側の予定だけで進めるのではなく、お互いの事情を知ることが必要ですね」
「それでも、お互いに協力し合うことで、子どもたちにとって得られるものはとても大きいと感じています」
ホシが言った。
「幼保小連携は、園児を小学校のやり方に早く慣れさせるためだけのものではありませんよね」
「そうです。小1プロブレムを考えても、幼保小連携は欠かせない取り組みです。一方で、幼児教育と学校教育の間には、まだ少し距離があるようにも感じます」
つきが静かに言った。
「幼児期には、遊びを通して多くのことを学びます。小学校では教科という形が加わりますが、子どもの育ちはそこで突然切り替わるわけではありません」
「まさに、そこを自然につないでいくことが必要なのだと思います」
小野が答えた。
ホシが、今回の話を振り返るように言った。
「『保育士と教師が一緒に子どもの育ちを考える』。そんな関係が、もっと自然なものになればいいですね」
「はい。そんな関係が、もっと自然なものになれば、子どもたちはさらに安心して小学校生活をスタートできるのではないでしょうか」
つきもうなずいた。
「園と学校のどちらかが一方的に合わせるのではなく、それぞれが大切にしていることを持ち寄る。そこから、本当の連携が始まるのかもしれませんね」
小野は、二人の言葉を聞いて、最後にこう話した。
「幼稚園、保育園、小学校。それぞれの立場を尊重しながら力を合わせ、子どもたちの未来につながる幼保小連携を、これからも大切にしていきたいと思います」
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元川崎市立小学校教諭(26年)/ 2級FP技能士・AFP・宅地建物取引士 他
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