♦︎❤︎23♠︎♣︎ これ持ってきた? 夏の縁日で始まった
19時を少し過ぎたころ。
昼間の暑さがまだ少し残る中、提灯の明かりが並ぶ縁日は、浴衣姿の家族連れや子どもたちでにぎわっていた。
「見て、りんご飴!」
「待って、先に焼きそばじゃない?」
ふみとなつが屋台を指さす横で、ゆきが笑う。
「まだ入口ですよ」
4人で出かけると、だいたいこうなる。
明るくて気になるものにはすぐ反応するふみと最近“子どもと行くならどうするんだろう”という目線が増えたなつ。
ゆきはそんな二人を笑いながら見ていて、あさひはすでに屋台の配置を見ながら「あれ食べよう」と計画している。
少し歩いたところで、ふみが首元のひんやりタオルを触った。
「まだ暑いね〜」
「もうぬるくなったから濡らそう」
水で濡らして軽く絞りるふみを見て、ゆきも首に巻いているタオル濡らす。
「冷たっ! 気持ちいい!」
その声になつもすぐ振り返る。
「私も買おうかな!」
「ちょっと待って、商品紹介みたいになってる」
あさひが笑う。
なつが足元を気にし始めた。
「なんか、蚊いません?」
「こういう場所は虫に刺されやすいですよね」
「虫除けスプレーって種類が多いので、子どもに使うなら対象年齢や使い方はちゃんと見た方がいいですよ」
なつがゆきのみているスマホ画面をのぞき込む。
「赤ちゃん用なら何でも同じだと思ってました」
すると、あさひもスマホを取り出した。
便利グッズや時短アイテムを調べるのが好きなあさひは、こういう話になると自然と情報が出てくる。
「虫除けなら、パッチもあるよ」
画面に映ったかわいいイラスト入りの虫除けパッチに、なつが反応する。
「あ、これ子ども好きそう!」
「そうそう。“今日はどれ貼る?”って選べるのがいいね」
シングルマザーのあさひは、家でも“やらせる”より“子どもがやりたくなる方法”をよく使っている。
「ただ、パッチ貼ったから絶対刺されないってわけじゃないから、私は状況で使い分けてる」
「なるほどね〜」
ふみが感心しながら画面を見る。
その時だった。
「ママ〜! 金魚!」
近くを走っていった子どもの声に、4人が同時に振り向く。
金魚すくいの屋台には、子どもたちがずらりと並んでいた。
なつが、その様子を楽しそうに眺める。
「子どもと縁日来るの、楽しそうだなぁ」
そう言いながら、ふと腕を見る。
「夏って、虫だけじゃなくて日焼けもありますよね」
ふみがすぐうなずいた。
「日焼け止めも種類すごいよ」
「ミルク、ジェル、スプレー……最初めっちゃ迷ったもん」
「また種類あるんですか!?」
「育児用品、“これ買えば終了”ってもの少なすぎません?」
ゆきも笑いながらうなずく。
「だから、その子の肌や年齢、使うもの選んだ方がいいんですよね」
「結局、“これが絶対”じゃないんのか…」
なつが納得したように言う。
その時、屋台から香ばしい匂いが流れてきた。
ふみがぴたりと足を止める。
「……ねぇ」
3人が振り返る。
「焼きそば食べない?」
「結局そこ!?」
笑いながら4人は屋台へ向かう。
ひんやりタオルに、虫除けスプレー、虫除けパッチ、日焼け止め。
夏のお出かけには、“これ一つあれば完璧”なんてものはない。
暑さも、虫も、日差しも、その日の場所や子どもによって違うから。
だからこそ、いくつかの選択肢を知っておく。
そして、その日の自分たちに合うものを選ぶ。
提灯の明かりの下。
焼きそばを受け取った4人は、そんな話をしていたことも忘れたように、
「次、かき氷!」
と、また楽しそうに歩き出した。
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2022年にバルーンアートの全国大会で優勝。
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