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キャベツ1玉50円!? -農業をはじめて驚いたお金の話- 【1】

300円で売られているキャベツ。農家の手取りはいくら?

農業をはじめた3年前。生産の現場で働くという新鮮な気持ちを抱きながらも、感じた違和感がありました。それは、「農産物ってこんなに安いの!?」ということです。

キャベツ:1玉50円

これを聞いてガッカリしてしまったことを、今でも忘れません。
しかし、この50円という単価は、人によっては「良い方だよ」と言います。
買う側だった頃には、安いことになんの抵抗もありませんでしたが、作る側に回った途端、「安い」ということが「悪」であると感じるようになりました。今回は、そんな農業のリアルなお金の話に迫っていきたいと思います!


●キャベツ1玉50円で利益は出るのか?

キャベツ:1玉=50円

結論から申し上げると、やり方次第で利益は出ますが、条件付きになります。まずは、農業でよく使う10a(10アール=1000㎡)の単位で売上と製造原価、そして「利益」を見ていきましょう。ここでは、法人経営体を例に試算してみたいと思います。

私の農場では、10a当たり約3600本(株)の苗を植えています。
1玉50円であれば、単純に計算すると50円×3600本で売上は180,000円になります。

50円/本×3600本(株)=180,000円

一見、「おーまあまあいいじゃん!」と思うかも知れませんが、ここから製造原価を引く必要があります。製造原価とは、農産物を生産するために直接発生する費用のことです。種子、苗、肥料、農薬、培土、マルチ、育苗トレイなどの資材費のほか、生産に従事する人件費や農業機械の減価償却費、燃料費など、生産に必要な費用が含まれます。
(原価の考え方については事業体によって異なります・・・)

【主な製造原価】 10aあたり
・種苗費・・・1万円
・農薬衛生費・・・1万円
・肥料費・・・4万円
・諸材料費・・・0.5万円
・水道光熱費・・・0.3千円
・動力光熱費・・・0.1千円
・燃油費・・・0.5万円
合計:11万円

【その他製造原価】10aあたり
・機械費・・・1万円(減価償却、維持管理、リース等)
・地代・・・0.5万円(貸借or購入)
・外注費・・・0.0万円(農薬のドローン散布等)
合計:1.5万円

ここまでの原価の合計額・・・12.5万円

問題はここからです。先ほど、利益が出るか否かは条件付きであるというのは、人件費と出荷方法(荷姿)によって利益の構造が変わるからです。

【人件費】
播種→育苗→畑作り→定植→防除→収穫→出荷まで、全ての工程で要した時間(人員×時間)を合計すると、10aあたり約30時間程度。
30時間×時給(1,500円とします)=4.5万円


【荷造運賃】
・梱包資材(約450ケース)・・・4.5万円
・運賃、送料・・・物量や距離による

【製造原価合計】
・主な製造原価・・・11万円
・その他製造原価・・・1.5万円
・人件費・・・4.5万円
・荷造運賃・・・〇〇万円(今回は考えないことにします)
製造原価合計:17万円

売上(18万円)- 製造原価(17万円)=粗利益(1万円)

(製造原価の考え方については事業体によって異なります)


このように、人件費や出荷方法などによって、キャベツ1玉=50円の利益が大きく変わってくるのです。また、ここで出た1万円という利益は粗利益の話ですので、営業利益・経常利益の視点で考えると、かなり厳しい数字であることがわかると思います。
この他にも、市場への上場であれば市場手数料(数%〜15%程度)が更に引かれる他、製品歩留、収穫率などによって販売数量が変動しますので、机上の計算と実利が乖離することは日常茶飯事です。

併せて、近年の世界情勢により、農業資材の価格が高騰しています。市場の原理が働く農産物流通の世界では、資材価格の上昇分が取引価格に反映されづらい傾向にあり、これもまた業界としての課題の一つです。


●経営体によって「利益」の構造が違う!?


農業は、個人経営体と法人(団体)経営体の大きく2つに分類できます。各経営体によって、当然ながら事業を維持するためのコストは異なります。
例えば、個人経営体の場合、農業収入から必要経費を差し引いた額が、農業所得(事業の利益)になりますが、法人などの場合は、売上から製造原価、一般管理費(販管費等)を差し引いた額が営業利益(事業の利益)になります。法人は、人件費や社会保険料などの事業を維持するための経費が多いため、同じ農産物を同じ価格で販売していても、手元に残るお金が異なることが多くあります。
もちろん、法人のように従業員を多く雇用している個人経営体もありますので、一概には言えませんが・・・。

それを踏まえ、先ほど算出したキャベツを例に試算してみましょう。
法人経営体をベースにしたキャベツの粗利益は、約1万円でしたが、個人経営体の場合はどうでしょうか。夫婦二人で経営する個人経営体で簡単に算出してみました。

【売上】
50円/本×3600本(株)=180,000円

【経費】
・主な製造原価 ・・・11万円
・その他製造原価・・・1.5万円
・荷造運賃   ・・・〇〇万円(今回は考えないことにします)
・製造原価合計   :12.5万円

売上(18万円)-製造原価(11万円+1.5万円)=農業所得(5.5万円)

個人経営体の場合、働いた分の”人件費”(事業主分)は農業所得になりますので、資材の購入、減価償却等で発生する原価の部分のみを差し引きすると、約5.5万円の農業所得になります。あくまで簡単な試算ですので、厳密にはもう少し所得は少なくなると思います。ただ、個人経営体と法人経営体では、”利益”の考え方が異なるため、法人経営体は個人経営体よりも高い収益性が求められます。それを踏まえると、現在の農産物相場は、雇用型の農業法人が持続的に経営していくには、厳しい水準となっているのかもしれません。

経営側としては、何とかして生き残っていくために、作物・販売方法・栽培時期・栽培方法など、様々な手法を凝らして利益・利幅を追求しています。ただし、農産物の価格決定プロセスや「野菜=安い」という意識が変わらないことには、根本的な解決にはつながらないように思います。
日本の食を守っていくためにも、適正な価格(再生産可能な価格)で取引でき、作る側も買う側も笑顔になれる世界を目指して。今できることから始めていきたいと思っています。

【 次回予告 】
10a(1000㎡)で手取り10万円を目指す」その基準とは?
8月上旬 公開予定

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【筆者】

今村 純(いまむら じゅん)
農タイムズ編集長。
岐阜県出身。愛知県内の大学を卒業後、農業機械メーカー(ヤンマー)に就職。その後、人材広告会社(マイナビ)にて「マイナビ農業」の企画営業を経て、農業法人の立ち上げに参与。
2023年より農場オフィサーとして北海道で農業を始める。


《運営》豊作ねっと


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