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梅見酒かな

先日 雨に暇もて余して出掛けた
安心出来る家
いつ行っても
イヤな顔をされたことがない
床には その家には珍しく
古仏の写真が掛けてあった
モノクロに近いカラー
菩薩の横顔がアップで撮られている
普賢だろうか
奈良の寺と聞いたが
どこだか失念してしまった
そういえば
彼岸も すぐそばに
迫っている


その横の仏壇に手を合わせた
「蝋燭お使いください」と言われて
線香を一本取って二本に折り立てた
おりんをひとつ打つ
車椅子に乗る笑顔にもう一度合掌した
仕事の事を絡めて
その日は主に仏教美術の事を
しゃべった


茶道に仏教美術が積極的に取り入れられる歴史は古いが創世記の取り入れかたと近代の取り入れかたは違うという話をした
唐物の禅僧の書は
古くから床の主役を果たしている
文字がリズム良く置かれるもの
墨の濃さや かすれ を楽しむもの
筆さばきの勢いに人物を感じるもの
云々………

初期茶道においては 舶来で 元々
評価が高いものが素直に認められる
中国の高僧の偈や尺牘などは
詳しい意味を知るより先に
重々しい雰囲気に呑まれた方が良い
表装の印金や緞子 軸先にも
大抵 唐物が用いられる
やはり仏教は海を越えてきたと
茶を通して実感することが多い
云々………

仏壇の線香がとうに終わっている…

青磁の香炉も仏教美術と言える
袴腰なども単純な造形に見えて
細かい心配りが成されている
三つ足の内側に小さく穴が
空くものもあるし底真ん中の高台が
三つ足より高いものもある
宙に浮いた三つ足を
浮き足立つと言って喜んだりもする
お香じたいも 舶来物で
形愛でる対象にもなる
評価の高い唐物で かつ仏教美術は
山上宗二記にも多く出ている
云々………


近代数奇者と呼ばれる人々が
見立てた仏教美術もある
大きな書院の脇床に
仏像や蓮華座を置いたりする
由緒ある寺に伝わる古経を掛物に仕立てたり華鬘を風炉先に
はめこんだりもする

線香の煙がすっかりぬけて
外からほんのりと梅が香が
漂ってくる

咲き始めですね  と たずねると
鹿児島の紅が やっとです と
数本 手折ってくださった

勿体ないと辞退する間もなく
身軽な動き… 
どうせ剪定するからと おっしゃる

家に帰ったら床に立てて
咲け 咲け と言いながら
一杯やってください…

有り難く遠慮なく
抱いて帰った



夜深くの時
その方の満面の笑みを
思い浮かべながら花入を選ぶ

布薩の水瓶でもあれば良いが
あいにく持ち合わせないので
古瀬戸写しの水瓶に立ててみる

紅い蕾を肴に
顔赤らめて呑む

徳利半分あける頃には
開かぬ梅のわずかな香りが
分からなくなってしまった


大燈国師の梅渓の話を聞けば良かった

そんなことを思いながら…



#今日の晩酌


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阿毘羅亭日乗 お心お寄せいただきありがとうございます。お考えいただきましたこと厚く御礼申し上げます。

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