シフト表は、組織文化の設計図
「シフトできました。穴は埋まってます」
この報告で、シフトの仕事は終わったことになっています。人数が揃い、配置基準を満たし、希望休が反映されている。それ以上のことをシフト表に期待している施設は、少ないと思います。私も長いあいだ、そうでした。
穴埋めパズルの、無意識の癖
シフトを組む人は、無意識に「安定する組み合わせ」を選びます。あのベテラン二人を同じ日に入れておけば大丈夫。あの人とあの人は合わないから離す。毎月これを繰り返すうちに、シフト表は前月のコピーに近づいていきます。
人間の脳は、いまうまくいっている状態を変えたがりません。シフト作成のように疲れる作業では、なおさら実績のある組み合わせに手が伸びます。責めているのではなく、そういう仕組みだという話です。
ただ、その結果として起きることがあります。同じ顔ぶれが同じ曜日に集まり、同じ会話をして、同じやり方が続く。文化が固定されるのです。誰もそう決めていないのに。
相性の悪い二人を離すのも、同じです。その月のトラブルは減りますが、離し続ける限り、二人の間の溝は永久保存されます。シフトで衝突を避けることはできても、シフトで関係を育て直すことは考えたことがなかった。私の反省です。
「回っている」と「高め合っている」は別物
チームの状態には段階がある、という考え方があります。情報共有と役割分担ができていて業務が回る段階と、その先にある、メンバー同士が刺激し合い、言われなくても互いの動きを見て先回りする段階。手前の段階で止まっているチームは、安定はしていますが、それ以上にはなりません。
鉄板ペアの安定は、たいてい手前のほうです。あうんの呼吸に見えて、実はもう会話が減っているだけ、ということもあります。
本当に高め合っている組は、様子が違います。片方が新しいレクを試せば、もう片方が翌週それを別の形でやってみる。示し合わせていないのに、動きがつながっていく。ああいう関係は偶然の産物に見えて、実際は組んだ回数と揺さぶられた回数の産物だと思います。
組み合わせを変えると、最初は少しぎくしゃくします。メンバーが一人入れ替わるだけで、チームは一度作り直しになるからです。これはコストに見えますが、見方を変えれば、固まりかけた文化を耕し直す機会でもあります。
新人の隣に、誰を置くか
シフトが組織づくりだと一番はっきり分かるのは、新人の配置です。
新人が最初の一ヶ月で吸収するのは、研修の内容よりも、隣で働く先輩の立ち居振る舞いです。利用者さんへの声のかけ方、忙しいときの表情、記録への向き合い方。誰の隣に置くかで、その新人にとっての「介護の標準」が決まると言ってもいいと思います。
だからうちでは、シフトを確認するとき、穴が埋まっているかの次に、組み合わせを見ることにしました。新人の隣は誰か。何ヶ月も固定されたままのペアはどれか。次のリーダー候補が、経験させたい相手と組む日はあるか。
一気には変えません。組み合わせを変えれば現場は必ず少し揺れるので、月にひと組だけ、と決めています。それでも半年経てば六組。一年で施設の空気は入れ替わります。
シフト表は勤怠の書類ではなく、来月のチームの設計図。そう思って眺めると、毎月いちばん面倒なこの仕事が、少しだけ面白くなります。
#介護 #デイサービス #通所介護 #シフト #組織づくり #チームビルディング
▼あわせて読む
デイサービス運営の現場で考えたことを、ほぼ毎日書いています。管理者・リーダーの方に効く話を増やしていくので、フォローしていただけると届きます。
