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笑いに関する名言集:63 整いました

 書籍やネットに名言はあふれています。何しろ、名言集というジャンルがある。しかし、それだけ名言があるのに、笑いに関する名言集はビックリするほど少ないんです。だったら自分で作りましょう。何となく決意した私、今日も何となく作っています。

 ここでは笑いに関する名言を以下のみっつのどれかに当てはまるものとしました。

・笑いに関係する言葉が入っている名言
(例:「笑い」「喜劇」「風刺」「馬鹿」など)
・笑いに関係する仕事をした人の名言
(例:お笑い芸人、落語家、コメディアン、ギャグ漫画家など)
・笑う余地がある名言
(例:ジョーク、小噺、ダジャレなど)

 今回はなぞかけっぽい例えをしている名言をいくつかご紹介します。名言の中には、何かを別の何かに例える形式のものがございます。そういう伝統があるんじゃないかと推測してしまうほどです。

 その手の名言で有名どころとなりますと、国内ならばこれではないでしょうか。

人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦莫迦しい。重大に扱わなければ危険である。
芥川龍之介(1892-1927)、「侏儒の言葉」

人生いろいろ人間さまざま機知名言集(講談社、1990)

 芥川龍之介は主に大正時代に活躍した小説家でございまして、代表作としては「羅生門」「鼻」「河童」などがございます。国内で著名な文学賞「芥川賞」にもその名を残しています。

 人生をマッチに例え、その理由をオチのようにくっつける。これがなぞかけ式名言の基本形でございます。誰が考えたんだか知りませんが、簡単な割に使い勝手がいい。だから、多くの人々がこぞって使い、そのごく一部が名言として残った。ごく一部でもまあまあ量があるんですから、もう本当にいろんな人が使いまくって来たんでしょう。

 それはもう、作品が古典と化している英文学界のビッグネームですら使っているレベルです。

女がおこった顔をするのは、きれいな泉をかきますようなもの。泥できたなく濁り、清らかさもなくなって、どんなにひどくのどのかわいた人だって、そんな水は一口も飲む気がしなくなるものですわ。
ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)、「じゃじゃ馬ならし」

世界の智恵人生を豊かにする名言集(白水社、2002)

 ご存じ、シェイクスピアはイギリス文学を代表する劇作家でございまして、「ハムレット」「ロミオとジュリエット」など、現在まで残っている数多くの名作を残しております。

 だいぶ昔の作品とは言え、何だかものすごいことを言ってます。ただ、怒っていない状態を「きれいな泉」と評しているところから、「普段はお綺麗なんですけどね」というシェイクスピア流のフォローを感じ取れます。少なくとも私は勝手にそう思っています。

 さて、シェイクスピアは全世界をひっくるめた文学の中でもトップクラスに有名でございます。当然、後世の人間からいじられる。シェイクスピアくらいになると、擦り倒されているとも言えます。当然、なぞかけスタイルの名言でもいじられています。

阿片なしのコールリッジを語ることは、亡霊のことを抜きにしてハムレットを語るようなものだ。
レズリー・スティーヴン(1832-1904)、『図書館での時間』より「コールリッジ」

《医》をめぐる言葉の辞典:誕生から臨終まで(青土社、1993)

 レズリー・スティーヴンはイギリスの文学史家でございまして、「英国人名辞典」の編纂にあたったことで知られます。小説家であるヴァージニア・ウルフの父親でもございます。

 そして、名言中に登場するコールリッジはイギリスの著名な詩人でございまして、阿片中毒だったことで知られます。しかも、阿片にどっぷりつかった状態で書いた作品が評価されていたりする。

 見ての通り、いじりのメインは完全にコールリッジでございまして、シェイクスピアは例えとして用いられていると申しますか、ついでにいじられている印象すら受けます。英文学の巨匠をふたり同時にいじる。そして、名言として残す。文学史家だからこそできた芸当かもしれません。

 他にも、こんな名言もあります。

初対面とは、ちょうど、初めて「カキ」を食べた場合に似ている。……はじめの印象が悪いと、もはや会おうとはしない。
E・G・レターマン、「一流セールスマンとなる法」

スピーチが光る名言集 新版(ぎょうせい、2001)

 レターマンがどんな方なのか、日本語で書かれたプロフィールが見つかりませんでしたけれども、営業に関する書籍を出版されているようです。「一流セールスマンとなる法」は半世紀以上にわたって読み継がれている営業の書籍でございまして、現在は「営業は断られた時から始まる」という題名で販売しています。

 上記名言は、初対面での大切さを、カキに例えて説明しているものと思われます。第一印象でやらかすと、人は会おうとしない。しかし、「営業は断られた時から始まる」んです。カキで腹を壊すような初対面だったとしても、逆転の方法はあるのでしょう。むしろ、腹を壊してからがスタートラインなのかもしれません。

 続いては、こちらのなぞかけ名言です。

成功とは、わが子に手を焼いたり、女房に車の運転をおしえたりするのに似ている。遅かれ早かれ警察署のご厄介になるハメになるから。
フレッド・アレン(1894-1956)

悪魔のセリフ(講談社、1990)

 フレッド・アレンはアメリカのコメディアンでございまして、時事問題を扱った彼の番組はラジオ黄金時代を支えたと評されています。

 成功も、子どもに手を焼くことも、妻に運転を教えるのも、いずれは警察沙汰になるという、よく分からない偏見で形成された名言でございます。しかし、アレンは生粋のコメディアンでございますから、半分ギャグで言っている可能性が十分に考えられます。

 続いては、変型版のなぞかけ名言です。

(それは)顔以外はきれいな女の子だと言うようなものだ。
ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー(1919-2010)

アメリカン・ポップ・フレーズ:スーパースター206人名言・迷句(研究社、1996)

 ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーはアメリカの小説家でございまして、代表作「ライ麦畑でつかまえて」などで広く知られています。

 上記名言は、ストーリーを褒めておきながら「よし」と言ってくれない編集者を例えたとされています。肝心なところ以外は褒める、と言ったところでしょうけれども、簡単な言葉で表現していつつも、どこがまずかったのか一瞬で理解させる、何とも言えない名言となっています。

人間関係はこちらの出方次第、あたかも鏡の前に立つようなもの。こちらが笑えば向こうも笑う。こちらがしかめ面をすれば、相手も渋面になる。
邑井操(1912-1996)

生きる財産となる名言大語録(三笠書房、2002)

 邑井むらいみさおは日本の講談師でございまして、のちに人間関係に関する講演活動を展開、数多くの自己啓発本を出版していることでも知られます。

 自分の態度次第で相手の態度は変わる。普遍的な考えのためか、その手の名言はしばしば見聞きするものでございますけれども、鏡で例えることで他所との差別化を図ったためか、名言集に収録されております。発想の勝利と言えるかもしれません。

 しかし、名言が重複する現象は避けられないでしょう。みんながみんな、独自性を出して差別化を図るとは限りません。何なら、「よし、差別化を図ったぞ」と思っていたら、その差別化がかぶっていたりする場合もあるでしょう。

 差別化を図った結果なのかは分かりませんが、かなりよく似たなぞかけ名言が確認できましたので、最後にご紹介します。

統計はビキニ型の水着のようなものである。さらけ出しているように見えるが、かんじんのところは隠してある。
ウィンストン・チャーチル(1874-1965)

スピーチが光る名言集 新版(ぎょうせい、2001)

統計は、ビキニのようなものだ。見せてくれる部分はあれこれ想像を逞しゅうさせるが、隠されている部分こそが肝心なのである。
エアロン・レベンスタイン(1911-1986)

悪魔のセリフ(講談社、1990)

 まずウィンストン・チャーチルはイギリスの政治家でございまして、首相経験もございます。また、作家としての活動も知られ、ノーベル文学賞を受賞しております。

 エアロン・レベンスタインは詳しいプロフィールが見つかりませんでしたが、どうやらアメリカ出身の学者のようでして、オックスフォード名言集に収録されていることからオックスフォード大学の関係者のようです。

https://www.oxfordreference.com/display/10.1093/acref/9780191826719.001.0001/q-oro-ed4-00016754

 どちらも、なぞかけスタイルである点と「統計をビキニで例える」点が丸かぶりしています。細部は異なりますけれども、「隠れている部分が肝心」の部分まで重複しており、カンニングを疑うレベルで似ています。

 まあ、恐らくはたまたま重複してしまったのでしょう。だとしたら、水着の趣味は同じようですし、実際に会ってみたら話が合うかもしれません。是非、真夏のビーチで談笑してほしいところです。

◆ 今回の名言が載っていた書籍


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