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ルヌルを知っおいるのに、なぜ守れない「ゎヌル・ネグレクト」が教える、“分かっおいるのにできない”新人育成

新人がミスをしたした。

䞊叞が確認したす。

「このケヌスでは、䜕を確認するルヌルでしたか」

新人は答えたす。

「本人確認です」

正解です。

では、

「本人確認が必芁だず知らなかったの」

ず聞くず、

新人は、

「いえ、知っおいたした」

ず蚀いたす。

さらに、

「研修でも習いたした」

「テストでも答えられたす」

ず話したす。

それなのに、

実際の顧客察応では本人確認を飛ばしおしたった。

こんなずき、

どちらを考えるでしょうか。

Aただ十分に芚えおいない

B知識はあるが、その瞬間にルヌルが行動をコントロヌルできおいない

Aの堎合もありたす。

でも、認知心理孊にはBに近い興味深い珟象がありたす。

それが、

Goal Neglectゎヌル・ネグレクト

です。

䞀蚀で蚀えば、

「䜕をしなければならないか理解し、芚えおいるのに、その芁求を実際の行動では無芖しおしたうこず」

です。

Duncanらが1996幎に報告した研究では、参加者が課題のルヌルを理解し蚘憶しおいるにもかかわらず、行動ではその䞀郚を実行しない珟象が「goal neglect」ずしお怜蚎されたした。(サむ゚ンスダむレクト)

新人育成でよく聞く、

「分かっおいるなら、やればいい」

だけでは説明しにくい領域です。

この蚘事はこんな方ぞ


・新人がルヌルを説明できるのに、実務では守れない
・理解床テストは高いのに珟堎で抜けが出る
・耇数の条件を同時に扱うず、䞀぀だけ忘れる
・「泚意しおください」を繰り返しおも改善しない
・研修の評䟡を「知っおいるか」だけで終わらせたくない

そんな方に向けた内容です。

ゎヌル・ネグレクトは「ルヌルを忘れた」ずは少し違う


ここが䞀番面癜いずころです。

䟋えば新人ぞ、

「本人確認をしおください」

ず教えた。

あずで質問するず、

「本人確認が必芁です」

ず答えられる。

぀たり、

知識ずしおは残っおいたす。

それでも実際の仕事では、

そのルヌルが䜿われない。

Duncanらはこれを、

単玔に情報が蚘憶から消えた状態ではなく、

知っおいるこずず、実際に取る行動ずのミスマッチ

ずしお扱いたした。

これは䌁業研修で考えるず、かなり瀺唆的です。

私たちは、

「知っおいる」

ず、

「できる」

の間にあるものを、

぀い、

「本人の意識」

で説明しおしたうこずがありたす。

でも、

その間には、

必芁な目暙やルヌルを、その瞬間に保持し続ける

ずいう別の仕事がありたす。

仕事では、䞀぀のルヌルだけ守ればよいわけではない


䟋えば電話察応なら、

新人は同時に、

・お客様の話を聞く
・本人確認をする
・システムを操䜜する
・契玄条件を確認する
・蚀葉遣いに泚意する
・必芁な情報を蚘録する
・時間も意識する
・分からなければ盞談する

ずいった耇数の芁求を扱っおいたす。

研修テストなら、

「このケヌスで本人確認は必芁ですか」

ず䞀぀だけ聞ける。

しかし実務では、

本人確認ずいうルヌルを、他の倚くの芁求ず䞀緒に持ち続けなければならない。

ここが違いたす。

Duncanらの埌続研究では、goal neglectは単玔な凊理速床だけでは説明されず、課題党䜓の指瀺やルヌルが耇雑になるほど、䞀郚の芁求が行動から脱萜しやすくなるこずが怜蚎されおいたす。

新人研修ぞ眮き換えるず、

䞀぀ず぀なら党郚できる。
でも、党郚を同時にやるず䞀぀が消える。

ずいう状態です。

「本人確認を知っおいるのに飛ばす」は矛盟ではない


䟋えば研修で、

新人ぞ聞きたす。

「契玄倉曎では䜕を確認したすか」

新人
「本人確認です」

正解。

次に、

システム操䜜だけやらせる。

問題なくできたす。

敬語も䜿える。

商品知識も答えられる。

党郚できる。

ずころが、

これらを党郚入れたロヌルプレむになるず、

本人確認だけ抜ける。

ここで、

「本人確認を理解しおいない」

ず刀断しお、

本人確認研修を远加する。

するず、

たた本人確認テストでは100点。

でも総合ロヌルプレむでは抜ける。

こうなるず、

問題は、

本人確認の知識量ではない

可胜性がありたす。

むしろ、

耇数の芁求の䞭で、

「本人確認をする」ずいうゎヌルを維持する仕組み

が必芁なのかもしれたせん。

ワヌキングメモリず「目暙を保ち続ける」こず


Goal Neglectの研究では、

ワヌキングメモリや実行制埡ずの関係も怜蚎されおいたす。

KaneずEngleのStroop課題研究では、課題の目暙を積極的に維持する必芁がある状況で、ワヌキングメモリ容量の個人差ず目暙維持・゚ラヌずの関係が瀺されたした。

たたMcVayずKaneの研究では、課題ず関係のない思考、いわゆるmind wanderingずgoal-neglect゚ラヌずの関連も報告されおいたす。

ただし、ここで、

「ワヌキングメモリが䜎い新人だから仕方ない」

ず個人評䟡ぞ䜿うのは違うず思いたす。

䌁業の研修担圓者が倉えやすいのは、

人の胜力そのものより、

䞀床に維持させる目暙の数や、目暙を思い出させる蚭蚈

だからです。

「党郚倧事です」が新人を苊しめる


研修䞭、

こんな説明になっおいないでしょうか。

「ここ重芁です」

「これも絶察忘れないでください」

「ここも倧事です」

「これも必ず確認しおください」

「この䟋倖も芚えおください」

最終的に、

党郚重芁。

新人から芋るず、

優先順䜍がありたせん。

䟋えば顧客察応䞭、

①本人確認
②顧客満足
③凊理時間
④正確な蚘録
⑀売䞊
⑥蚀葉遣い

党郚を100達成しようずする。

でも難しい状況になった瞬間、

䞀郚が行動から萜ちる。

そこで、

「党郚ちゃんずやっお」

ではなく、

䜕が絶察条件なのか

を明確にした方がよいず思いたす。

䟋えば、

「凊理速床より先に、本人性を確定する」

「迷ったら、完結より確認を優先する」

ずいった圢です。

新人に「ゎヌルの階局」を教える


私は、耇雑な仕事ほど、

手順だけでなく、

ゎヌルの優先順䜍

を教えるずよいず思いたす。

䟋えば顧客察応なら、

最優先

安党・法什・個人情報

次

正確な問題解決

次

顧客䜓隓

次

凊理効率

ずいうように敎理したす。

するず、

党郚を完璧に凊理できない状況でも、

「䜕を萜ずしおはいけないか」

が分かりたす。

新人が忙しくなったずき、

凊理速床を少し萜ずしおでも本人確認を守る。

この刀断ができたす。

「党郚芚える」

より、

重芁なゎヌルを守る

ぞ倉えるわけです。

「目的」ず「手順」をセットにする


䟋えば、

本人確認をする

だけではなく、

その䞊に、

契玄情報を、暩限のない人ぞ枡さない

ずいう目的を眮きたす。

するず新人は、

手順を忘れそうになったずしおも、

目的から行動を再構成できる可胜性がありたす。

前に扱った「適応的熟達」ずも぀ながりたす。

手順だけを芚える。

ではなく、

なぜその手順が存圚するのか

を理解する。

目暙が明確だず、

初めお芋るケヌスでも、

「このたた進んでいいのか」

ず立ち止たりやすくなりたす。

「5個守っお」より「今はこれを守る」


䟋えばロヌルプレむ䞭、

新人ぞ、

「本人確認、話し方、操䜜、時間、蚘録を党郚意識しおください」

ず䌝える。

難しい。

そこで、

最初の挔習では、

「今日は本人確認だけは絶察に萜ずさない」

ずしたす。

他も評䟡したすが、

䞭心ゎヌルは䞀぀。

できるようになったら、

もう䞀぀远加したす。

本人確認

芁件敎理。

次に、

本人確認

芁件敎理

システム操䜜。

段階的に統合する。

昚日たでの蚘事で扱っおきた、

フェヌディング

ずも逆方向に芋えたすが、

考え方は近いです。

孊習者の状態に応じお、

扱う耇雑性を調敎したす。

耇雑な指瀺は「チャンク」に分ける


Goal neglectず課題耇雑性を扱った研究では、

耇雑な新芏行動を構成するずき、

必芁なルヌルや事実を䞀぀のタスクモデルずしお組み立おる必芁があり、その構造化の仕方が重芁だず論じられおいたす。

新人研修なら、

20個のバラバラな泚意事項ずしお教えるのではなく、

䟋えば、

開始

本人性・暩限

理解

芁件・背景

刀断

ルヌル・䟋倖

実行

凊理・案内

終了

蚘録・連携

のように、

たずたりで持っおもらう。

「泚意点20個」

より、

「仕事は5぀の段階」

の方が、珟圚どこにいるかを把握しやすくなりたす。

新人がミスしたら「知らなかった」の次に聞く


䟋えば本人確認を飛ばした。

最初に、

「本人確認が必芁だず知っおいたしたか」

ず聞く。

知らなかった。

↓

知識の問題。

知っおいた。

↓

次に、

「そのずき、䜕を䞀番考えおいたしたか」

ず聞きたす。

䟋えば、

「お客様が怒っおいたので、早く解決するこずばかり考えおいたした」

ず蚀うかもしれたせん。

ここで、

本人確認をもう䞀床説明するより、

顧客が怒っおいおも本人確認は萜ずさない

ずいうケヌスを緎習する。

぀たり、

ゎヌル同士が競合する状況を䜜りたす。

「できるか」ではなく「邪魔が入っおもできるか」


研修では、

静かな環境で、

䞀぀のケヌスを、

䞀぀ず぀行うこずがありたす。

これは孊習初期には必芁です。

でも独り立ち前には、

少しず぀、

・時間制限
・远加質問
・䟋倖条件
・システム操䜜
・顧客感情
・別の泚意事項

を入れおいく。

目的は、

新人を远い蟌むこずではありたせん。

䜕が入るず重芁なゎヌルが萜ちるのかを芋るため

です。

䟋えば、

通垞ケヌスでは本人確認できる。

でも顧客が怒るず飛ばす。

なら、

本人確認知識ではなく、

感情的負荷の䞭でゎヌルを維持する緎習

が必芁です。

「目暙を思い出すサむン」を仕事の䞭に眮く


本人だけで維持するのが難しいなら、

環境を䜿いたす。

䟋えば、

契玄倉曎画面を開いた瞬間に、

本人確認枈み

ず衚瀺する。

凊理開始前に、

確認項目を短く衚瀺する。

高リスク業務なら、

䞀定のチェックをしないず先ぞ進めない。

昚日たでの、

予定蚘憶。

Postcompletion Error。

Habit Discontinuity。

すべおに共通しおいるのは、

人間の頭の䞭だけに仕事を眮かない

ずいう発想です。

講垫も「ゎヌル・ネグレクト」を起こすかもしれない


この話は新人だけではありたせん。

䟋えば講垫。

今日の研修目暙は、

「新人自身に考えさせる」

だった。

でも研修が始たる。

時間が抌す。

質問が増える。

するず講垫は、

説明する。

答える。

先回りする。

気づけば、

「考えさせる」ずいう目暙が消えおいる。

終了埌、

「今日は受講者䞻䜓にしたかったんですが  」

ず蚀う。

目的は理解しおいた。

でも実際の行動には反映されなかった。

ティヌチャヌ・ノヌティシングの蚘事でも扱いたしたが、

教える偎も、

耇数の芁求の䞭で重芁な目暙を維持する必芁がありたす。

だから、

講垫自身にも、

今日絶察に守る指導目暙を䞀぀決める

ずいう方法が䜿えたす。

「ルヌル違反」ず「ゎヌル・ネグレクト」を同䞀芖しない

ここは泚意が必芁です。

人がルヌルを守らない理由はたくさんありたす。

知らない。

玍埗しおいない。

意図的に無芖した。

職堎では別の行動が評䟡される。

時間がない。

蚭備がない。

単玔に忘れた。

習慣で別の行動をした。

Goal Neglectは、

これらすべおを説明する抂念ではありたせん。

たた、Duncanらの研究は認知課題を甚いた基瀎研究であり、

䌁業新人のミスを盎接研究したものではありたせん。

だから、

「あの新人はゎヌル・ネグレクトです」

ず人を分類するものではありたせん。

䜿いたいのは、

「知っおいるのにできない本人の意識䞍足」以倖の仮説を持぀

こずです。

私なら「知識・維持・実行」の3぀に分ける


新人がルヌルを守れなかったずき、

次の3぀で考えたす。

① 知識

そもそもルヌルを知っおいる

知らないなら教える。

② 維持

仕事䞭に、そのルヌルを重芁な目暙ずしお保おおいる

耇数の芁求で萜ちおいるなら、

目暙数。

優先順䜍。

手がかり。

を芋盎す。

③ 実行

目暙は分かっおいるし意識しおいる。

でも実際に行動できない

なら、

技胜。

環境。

暩限。

習慣。

など別の原因を芋る。

「もう䞀床説明」

が必芁なのは、

①の堎合です。

②や③なら、

別の打ち手が必芁です。

今日から䜿える5぀の問い


新人が、

「分かっおいるのにできなかった」

ず蚀ったら、

次を確認したす。

1そのルヌルを説明できたすか

→知識を芋る。

2その瞬間、䞀番意識しおいたこずは䜕でしたか

→競合しおいた目暙を芋る。

3䜕が入るず、そのルヌルを忘れやすいですか

→耇雑性を芋る。

4絶察に萜ずしおはいけない目暙は明確ですか

→優先順䜍を芋る。

5その目暙を仕事䞭に思い出す仕組みがありたすか

→環境を芋る。

これだけでも、

「泚意力䞍足」

から少し離れられたす。

「分かっおいるのにできない」を、もっず现かく芋る


新人育成では、

知識。

理解。

行動。

を分ける必芁がありたす。

そしお、

知識ず行動の間にも、

ただいく぀か段階がありたす。

知っおいる。

↓

必芁な堎面だず気づく。

↓

その目暙を維持する。

↓

他の芁求ず競合しおも守る。

↓

実際に行動する。

この途䞭のどこかで止たっおいる。

それなのに、

すべおを、

「ただ理解が浅い」

ずしお远加研修するず、

本人も育成担圓者も疲れおしたいたす。

知識があるなら、

もう知識を増やさない。

代わりに、

その知識が仕事䞭に行動を支配できる条件を䜜る。

これも新人育成の蚭蚈なのだず思いたす。

今週の有料note「アンラヌニング」ずも぀ながりたす


今週公開した有料noteでは、

「前のやり方」が抜けない新人をどう倉える
アンラヌニングを起こす7぀の研修蚭蚈

ずしお、

叀い行動を手攟し、

新しい行動ぞ切り替えるための方法をたずめおいたす。

アンラヌニングしお、

新しいルヌルを理解した。

その次に必芁なのが、

実務の耇雑な状況でも、新しいルヌルを目暙ずしお維持できるこず

です。

「孊んだ」

で終わらせず、

「仕事䞭に䜿える」

たでどう぀なぐか。

今回のGoal Neglectは、その間を考えるヒントになるず思いたす。

参考文献

Duncan, J., Emslie, H., Williams, P., Johnson, R., & Freer, C.1996
Intelligence and the Frontal Lobe: The Organization of Goal-Directed Behavior.
Cognitive Psychology, 303, 257–303.
DOI: 10.1006/cogp.1996.0008

課題芁求を理解・蚘憶しおいるにもかかわらず、その䞀郚を行動では無芖しおしたう「goal neglect」を怜蚎した代衚的研究です。

Duncan, J., Parr, A., Woolgar, A., et al.2008
Goal Neglect and Spearman’s g: Competing Parts of a Complex Task.
Journal of Experimental Psychology: General, 1371, 131–148.

耇雑な課題の䞭で、異なるルヌル・芁求がどのように競合し、䞀郚が行動から脱萜するかを怜蚎しおいたす。

Bhandari, A., Duncan, J., & others2013
Goal Neglect and Knowledge Chunking in the Construction of Novel Behaviour.
Cognition, 1301, 11–30.

課題耇雑性ず、必芁な知識をたずたりずしお構成するこずの関係からgoal neglectを怜蚎しおいたす。

Kane, M. J., & Engle, R. W.2003
Working-Memory Capacity and the Control of Attention: The Contributions of Goal Neglect, Response Competition, and Task Set to Stroop Interference.
Journal of Experimental Psychology: General, 1321, 47–70.
DOI: 10.1037/0096-3445.132.1.47

ワヌキングメモリ容量、目暙維持、泚意制埡ずgoal neglectずの関係をStroop課題から怜蚎しおいたす。

なお、Goal Neglectは認知心理孊・神経心理孊の実隓課題を䞭心に研究されおいる抂念です。

本蚘事の「ゎヌルの階局」「知識・維持・実行の3分類」「ロヌルプレむで競合目暙を远加する」ずいった方法は、䞊蚘研究で䌁業新人研修向けの介入ずしお盎接怜蚌されたものではありたせん。

研究で瀺されおいる「課題ルヌルを知っおいおも、それが行動を十分に制埡できない堎合がある」ずいう知芋を、新人研修・OJTの蚭蚈ぞ応甚した実践案です。

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