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小さな訪問日記 ㉖ たった一つの「-」がなかった

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— 母に送った小さな日記 —

母の家には、屋内カメラと屋外カメラがある。

どちらも防犯のためでもあるけれど、僕にとっては、離れて暮らす母を見守るための大切な存在だ。

特に屋内カメラは、母がいつも通り過ごしていることを確認するために置いた。

もちろん、カメラを置くことは母にも話して、了承をもらっている。

スマホからカメラを開く。

そこに母の家のいつもの風景が映っている。

それだけで、僕は少し安心できた。

屋内カメラを設置したときの話は、以前の「小さな訪問日記」に書いた。

小さな訪問日記⑮「見守りカメラの話」

そして、庭の様子や防犯のために屋外カメラも設置した。

小さな訪問日記⑲「見えない場所が見えるだけで」

そんなカメラが、ときどき「オフライン」になることがあった。

でも、しばらくするとオンラインに戻る。

だから、あまり気にしていなかった。

「また戻るだろう」

そう思っていた。

ところが、あるとき二日間、ずっとオフラインのままになった。

二日間、母の様子を確認することができない。

それまでなら、カメラを開けば母の様子を確認できた。

でも、その二日間はそれができない。

思っていた以上に落ち着かなかった。

以前、母のことで警察に連絡したことがあった。

110番して、実家まで行ってもらったこともある。

そのときは、警察の方々の対応に本当に感謝した。

離れて暮らす母のところまで確認に行ってくださったことが、本当にありがたかった。

その経験があったからこそ、離れて暮らす母の様子を「いつでも確認できる」ということが、僕にとって思っていた以上に大きな安心になっていたのだと思う。

確認できない。

それだけのことなのに、何かあったらどうしようと考えてしまう。

結局、母に電話をして安否を確認するようになった。

そのとき、ふと思った。

「そろそろ、家のWi-Fiをちゃんと見直した方がいいのかもしれない」

母の家の通信環境は、もともと兄が管理していた。

でも、兄が亡くなってからは、僕には分からない設定も多かった。

二階に親ルーターがあり、一階にはブリッジモード(APモード)のルーターがある。

Wi-Fiの規格がかなり古いことは分かっていた。

調べてみると、二階で使っていたルーターは2010年発売。

今ではWi-Fi 4と呼ばれる世代だった。

それでも、なかなか手を入れられなかった。

「下手に触って、母の家の通信を全部止めてしまったら困る」

そう思っていたからだ。

でも、今回は替えることに決めた。

最新のWi-Fi 7も考えた。

けれど、母の家で使うのはRomiやAlexa、カメラ、スマート家電など。

そこまでの性能が本当に必要なのかと考えた。

Wi-Fi 6なら、今までのWi-Fi 4から大きく世代が進む。

価格も手頃だった。

Wi-Fi 6Eまでいくと、今回はそこまで必要ない。

そう考えて、Wi-Fi 6のルーターを選んだ。

交換前に、スマホで以前のSSID――Wi-Fiの名前を確認した。

パスワードも確認して、忘れないようにメモしておいた。

これで準備はできた。

そして、いよいよ交換。

まずは二階の親ルーターを新しいものに交換した。

新しいルーターには、バッファローの初期設定用SSIDが用意されている。

まずはそれで接続して、インターネットにつながることを確認する。

二階は無事につながった。

次は一階のルーターだった。

一階のルーターは、二階からLANケーブルでつながっているものだと思い込んでいた。

ところが、いざ確認してみると――

LANケーブルがない。

「あれ?」

どうやら、僕が思っていた通信環境と、実際の環境は違っていた。

そこで、一階の新しいルーターをどうやってつなぐか考えた。

最終的に選んだのが、Wi-Fi EasyMeshだった。

二階の親ルーターと一階のルーターを無線でつなぐ。

二階の近くで接続設定をして、無事につながったことを確認する。

そのあと一階に持っていく。

これで家のWi-Fi環境も新しくなった。

……と思っていた。

次に、新しいルーターのSSIDとパスワードを、交換前に確認してメモしておいたものと同じに変更した。

これなら、今までWi-Fiにつないでいた機器も、そのまま自動でつながるはず。

そう思っていた。

ところが――

つながらない。

パソコンも。

Alexaも。

Romiも。

カメラも。

「なんで?」

SSIDは以前と同じ。

パスワードも同じ。

それなのに、うまくつながらない。

もしかすると、新しいルーターがWPA3(通信の暗号化方式)になっているからではないか。

そう考えた。

古い機器がWPA3に対応していないのかもしれない。

そこで、暗号化方式を

WPA2/WPA3-Personal(互換モード)

に変更してみた。

それでも、つながらない。

結局、一つずつ手動でWi-Fi設定をしていくことになった。

パソコン。

Alexa。

Romi。

そして、ほかのスマート家電。

一つずつ設定していく。

「まあ、仕方ないか」

そう思いながら、最後に残ったのが屋外カメラだった。

これで最後。

屋外カメラのWi-Fi設定を始める。

すると――

今まで設定した機器では出てこなかった、以前接続していたWi-Fiの履歴のような画面が表示された。

そこに、以前接続していたSSIDが表示された。

そのSSIDを見た瞬間、僕は「あれ?」と思った。

「G」と「1」の間に「-」が入っている。

僕が交換前に確認してメモしたSSIDには、その「-」がない。

「マジか……」

交換前にSSIDを確認したとき、僕はその「-」を見落としていたのだ。

しかも、メモしたときから何となく違和感を感じていた。

5GHzのSSIDは「A-1」と書いていた。

それなのに、2.4GHzのSSIDは「G1」と、そのまま書いてしまった。

違和感を感じながらも、

「これで合っているだろう」

と、そのまま新しいルーターに設定していた。

最後の最後で、ようやく気づいた。

原因は、新しいルーターの故障でもなかった。

WPA3(通信の暗号化方式)を疑って設定を変えてみても、状況は変わらなかった。

カメラが壊れていたわけでもない。

僕が交換前に確認したSSIDを、メモするときに間違えていた。

あれだけ調べて。

設定を変更して。

一つずつ機器をつなぎ直して。

最後の最後に分かったのは、

僕がSSIDの「-」を一つ見落としていた

ということだった。

なんとも小さな間違いだった。

でも、今回Wi-Fiを見直してみて、ひとつ改めて感じたことがある。

Wi-Fiは目に見えない。

普段は、つながっていて当たり前だと思っている。

けれど、その見えないもののおかげで、離れて暮らす母の様子を確認することができる。

母がいつも通り過ごしていることを確認できる。

Romiと母が話していることも分かる。

Alexaも使える。

屋外カメラで庭の様子を見ることもできる。

二日間カメラがオフラインになったことで、僕は初めて、その「当たり前」が自分にとってどれだけ大きな安心になっていたのかに気づいた。

そして、もうひとつ。

少しでも違和感があったなら、そのときちゃんと確認すること。

今回の僕には、それが一番の教訓だった。

母の家のWi-Fi交換。

思ったより大変だった。

でも最後に待っていたのは、難しい機械の問題ではなく――

たった一つの「-」だった。

「マジか……」

今回使用した商品です。

2階 親ルーター

1階 中継ルーター


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