乃木坂46の吉次郎、岡本姫奈流出事件を経てなお輝く理由
乃木坂46の5期生、岡本姫奈という存在の偉大さを説明するのはとても難しい。
ロシアの国立バレエ学校への留学が約束されていたはずのエリートが、コロナ禍と戦争という理不尽な時代の濁流に飲まれ、乃木坂46というシステムへと漂着した。
加入前から続くデータ流出という波乱の幕開け、さらには謹慎期間中にも重なる流出劇。
普通のアイドルであれば、ここでキャリアは断たれるはずだ。しかし、彼女はしぶとく生き残り、むしろその「制御不能な謎のエネルギー」を武器にグループをかき回し続けている。
私は岡本姫奈のあのエネルギーが大好きだ。
彼女は間違いなく遠藤周作『沈黙』に登場する吉次郎のごときポジションを乃木坂46で確立した。

清廉潔白で神聖な存在であることを求められる乃木坂46という「沈黙」の舞台において、彼女は何度も信仰を裏切り、失敗を繰り返しながらも、決して退場させることができない異物としてそこに居座る。
信仰を裏切りながらも、どうしても主人公の傍らから離れられない吉次郎がそうであるように、岡本姫奈というアイドルは、人間が抱える弱さや業を剥き出しにすることで、グループが陥りがちな予定調和を容赦なく破壊していく。
彼女こそが誰よりも乃木坂46を愛している。
彼女の異端さは、アイドルという偶像に対する強烈なアンチテーゼにある。
完璧なプロフェッショナルとして振る舞うことが当然視される業界で、友人との遊びやプライベートな感覚を隠すことが全くできないその姿勢は、地方から上京してきた少女が抱く欲望をそのままさらけ出しているようだ。
美しい男だから良い男とガッツリ遊ぶ。
そんな本来は隠すべき「人間臭い欲望」を隠さずに突き抜けていく姿は、どこか『少年ジャンプ』の主人公のような爽快感さえ漂わせる。
さわやかすぎるぞ岡本姫奈。
身体と人生を使い、乃木坂46を爆笑や困惑、そして熱狂の渦中へと引きずり込んでいくその力業。
彼女は、聖域を汚す存在ではない。むしろ、あまりに整いすぎた箱庭に、人間的な生々しさを注入する触媒なのだ。
予定調和をぶち壊し、物語を予測不能な方向へねじ曲げていく岡本姫奈という異端児。これほど最高に面白いアイドルは、今の坂道グループにおいて他に見当たらない。
彼女は間違いなく吉次郎なのだ。
彼女ほど懺悔が似合うアイドルはいない。
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