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第0ç«  日本の汎甚機垂堎の珟圚地ず2035幎問題

はじめに

「ただ動いおいる」ずいう事実が、最倧のリスクになる時代が来た。

日本の金融機関・官公庁・補造業の基幹システムを支えおきた汎甚機メむンフレヌムは、今この瞬間も静かに皌働し続けおいる。障害は出おいない。トランザクションは凊理されおいる。だから問題は先送りされ続けおきた。

2024幎、その「先送り」に初めお物理的な終わりが蚭定された。富士通がメむンフレヌムの新芏販売を終了したのだ。

あれからすでに2幎が経過した。「2030幎保守終了・2035幎補造終了」ずいうカりントダりンはずっくに始たっおおり、猶予の6幎のうち2幎はすでに消えた。残りは4幎だ。

これは単なる䞀メヌカヌの補品ラむンナップ倉曎ではない。日本のメむンフレヌム垂堎の半分以䞊を占めおいたベンダヌの撀退宣蚀であり、業界党䜓が「察岞の火事」から「自分たちの問題」ぞず匕きずり蟌たれた転換点だった。

本蚘事では、日本の汎甚機垂堎がどのような構造になっおいるのか、その歎史的な経緯ず珟圚地を敎理したうえで、2030幎・2035幎ずいう二重のタむムリミットが珟堎にもたらす珟実的な衝撃を論じる。


日本垂堎の構造富士通・日立・IBM・NECの四瀟䜓制

䞖界のメむンフレヌム垂堎では、IBMが圧倒的なシェアを持぀。しかし日本垂堎は䟋倖的な構造をしおおり、長らく囜産メヌカヌが䞻圹を占める䜓制が維持されおきた。

おおよそのシェアは富士通が過半数、日立が玄30%、IBMが玄15%、NECが5%未満ずされおおり、日本固有の囜産メむンフレヌムが圧倒的倚数を占めるずいう、䞖界でも珍しい垂堎構造が圢成されおいる。NECのACOSシリヌズは官公庁・地方自治䜓・公共系システムの䞀郚で今も珟圹皌働しおおり、小芏暡ながら独自の存圚感を持぀。

なぜこうなったのか。その答えは1970幎代に遡る。

囜産化の歎史

1970幎代、日本政府はIBMぞの䟝存を囜家的リスクず捉え、通産省䞻導で囜産コンピュヌタの育成政策を掚進した。富士通・日立・NEC・䞉菱電機・沖電気が「囜産コンピュヌタメヌカヌ」ずしお育成され、官公庁・金融機関・補造業ぞの導入が政策的に埌抌しされた。

この時期に構築されたシステムが、50幎埌の今もなお皌働しおいるケヌスが少なくない。

各瀟の圹割分担ず棲み分け

四瀟の棲み分けはおおよそ以䞋のように圢成されおきた。

富士通GS/MSPシリヌズは、郜垂銀行・地方銀行・保険䌚瀟・倧手補造業に匷みを持぀。独自のトランザクション凊理ミドルりェア「AIMAdvanced Interactive Manager」ず、ファむルシステム「FAMFile Access Method」を軞に、金融決枈系の䞭栞を担っおきた。

日立AP/VOS3シリヌズは、官公庁・地方自治䜓・電力・ガスなど瀟䌚むンフラ系に匷い。独自のトランザクション凊理「TP1」ず、階局型デヌタベヌス「DMSData Management System」および「DASDirect Access Storageファむル」䜓系が特城で、特に省庁系の基幹系システムでの採甚が倚い。

IBMz/OSシリヌズは、メガバンクの䞀郚・蚌刞・生呜保険の倧手ずいった、グロヌバル接続や高可甚性が最優先される領域に採甚されおきた。CICS・IMS・VSAMずいう䞖界暙準のミドルりェア䜓系を持ち、珟圚も党䞖界で珟圹皌働しおいる。

NECACOSシリヌズは、官公庁・地方自治䜓・公共系システムの特定領域に採甚されおきた。シェアは5%未満ず他䞉瀟に比べお小さいが、長期にわたる特定顧客ずの関係を維持しおおり、独自のニッチ垂堎を圢成しおいる。

この棲み分けは単なる営業戊略の結果ではなく、各瀟のアヌキテクチャの違いず、導入先の業務芁件の歎史的な組み合わせが生んだ「自然な分業」だった。だからこそ、今になっお「移行」が難しい。システムはその䌚瀟の文化・業務手順・法的芁件ず深く融合しおおり、切り離しは容易ではない。


富士通撀退の衝撃䞉重苊の構造

2024幎の富士通メむンフレヌム新芏販売終了は、業界関係者には「い぀かは来るず思っおいた」ニュヌスだった。しかし2幎が経過した今も、その珟実を「圓事者の問題」ずしお真正面から受け止められおいない䌁業は少なくない。

富士通の撀退は、単玔な「補品終了」ではなく、䞉぀の問題が同時に顕圚化する「䞉重苊」の始たりを意味する。

第䞀の苊技術者の枯枇

富士通メむンフレヌムを保守・運甚できる技術者は、すでに深刻な高霢化ず枛少が進んでいる。新芏採甚が止たり、退職が続く。ベンダヌ偎の技術者も、富士通自身が撀退を決めた以䞊、人員をメむンフレヌム郚門に匕き留める理由はない。

ナヌザヌ䌁業偎に目を向けるず、状況はさらに厳しい。瀟内のメむンフレヌム担圓者は倚くが50代以䞊であり、若手ぞの技術継承はほが行われおいない。「動いおいるから觊るな」ずいう珟堎の空気が、ドキュメントの敎備すら阻んできた。

2030幎の保守終了たでに䜕かしなければならないのはわかっおいる。しかし、䜕がどこで動いおいるのかを正確に把握しおいる人間が、瀟内に䞀人もいないずいう状況が珍しくない。

第二の苊郚品調達の困難化

メむンフレヌムのハヌドりェアは、汎甚のサヌバヌ郚品ずは異なる専甚品が倚い。補造終了が近づくに぀れ、亀換郚品の圚庫確保が困難になる。

特に問題なのは、故障が「予告なく」やっおくるこずだ。長期保守契玄を結んでいおも、補造終了埌は「郚品が手に入らないため修理䞍胜」ずいうシナリオが珟実化しうる。基幹系システムが郚品䞍足で停止するずいう事態は、䌁業経営に盎結するリスクだ。

第䞉の苊採算性の厩壊

富士通がメむンフレヌム事業から撀退を決めた根本的な理由は、採算が合わなくなったからだ。台数の枛少・技術者コストの䞊昇・郚品調達の困難化が耇合しお、事業継続の経枈合理性が倱われた。

ナヌザヌ䌁業にずっおも、この構図は鏡のように反映される。保守費甚は䞊昇し続け、改修のたびに高コストな専門ベンダヌぞの䟝存床が増す。クラりドやオヌプン系ぞの投資ず比范した堎合の「費甚察効果」は、幎を远うごずに悪化する䞀方だ。

「動かし続けるコスト」がい぀か「移行のコスト」を䞊回る。その逆転点は、倚くの䌁業で2020幎代埌半に蚪れるず詊算されおいる。


タむムラむン2024・2030・2035

富士通の撀退に関する重芁な日付を敎理する。

2024幎 ───────── 新芏販売終了
                   ↓
                   既存ナヌザヌぞの保守は継続するが、
                   新芏構築・拡匵は䞍可に
                   
2030幎 ───────── 保守終了予定
                   ↓
                   メヌカヌによる公匏サポヌトが消滅
                   障害発生時の公匏察応が受けられなくなる
                   
2035幎 ───────── 補造終了予定
                   ↓
                   ハヌドりェアの物理的な補造・䟛絊が終了
                   亀換郚品の調達が事実䞊䞍可胜に

この䞉段階のカりントダりンが持぀意味を、珟堎の芖点で翻蚳するず以䞋のようになる。

2024幎新芏販売終了の意味今埌このプラットフォヌムぞの远加投資はできない。新機胜远加・凊理量増加ぞの察応ずしお新芏ハヌドりェアを導入するずいう遞択肢が消えた。既存機噚の範囲内で運甚し続けるか、移行を開始するかの二択になった。

2030幎保守終了の意味公匏の安党網が消える。パッチ・セキュリティ察応・障害サポヌトがなくなる。この時点以降に発生した障害や脆匱性は、自力察応か高額な非公匏サポヌトに頌るしかない。金融機関にずっおは監督官庁ぞの説明責任にも盎結する問題だ。

2035幎補造終了の意味物理的な延呜が䞍可胜になる。「叀くおも動いおいるからいい」ずいう遞択肢が、郚品調達ずいう物理的な制玄によっお封じられる。

倚くの䌁業が最䜎でも2030幎たで、理想的には2028幎前埌たでに䞻芁システムの移行を完了させる必芁があるず詊算しおいる。しかし、そこから逆算するず、今すぐ動き出しおも決しお䜙裕はない。


日立VOS3の「移行䞍胜」問題

富士通の問題は深刻だが、実は業界関係者の間でさらに深刻ず芋られおいるのが、日立のVOS3システムをめぐる状況だ。

日立はIBMのOS/360互換ずしお出発したVOS3Virtual OS/3を䞭心に、独自のミドルりェア「TP1」「DMS」「DAS」䜓系を構築しおきた。特にVOS3が採甚されおいるのは官公庁・地方自治䜓・電力・ガスずいった「瀟䌚むンフラ」であり、これが移行をさらに困難にしおいる。

なぜ「移行䞍胜」に近い状態になるのか。

第䞀に、システムの業務ロゞックが法什・省什・内芏ず深く結び぀いおおり、移行に合わせおビゞネスロゞックを敎理・再定矩するこずが組織的に極めお困難だ。行政システムでは「珟行螏襲」が原則であり、「この機䌚に業務を芋盎す」ずいう発想が制床的に阻たれる。

第二に、技術的な問題ずしお、FASMず呌ばれる日立独自のアセンブラが存圚し、その静的解析が非垞に難しい。自己曞き換えコヌド・EX呜什・ベヌスレゞスタの動的曞き換えずいった技法が、移行ツヌルの自動倉換を困難にする。コンパむラ理論の䞖界ではAST抜象構文朚解析によるコヌド倉換が定石だが、これらの技法はその前提を根本から厩す。なぜ「解析できないのか」の本質的な構造に぀いおは、蚘事⑀で詳しく論じる。

第䞉に、日立は珟時点でも富士通のような明瀺的な「撀退宣蚀」をしおいない。しかしメむンフレヌム事業の瞮小は氎面䞋で進んでおり、長期的な継続性には疑問笊が぀いおいる。「明蚀されおいないから安心」ずいう刀断は、あたりにも危うい。

10幎埌・20幎埌の珟実的な予枬を描くずすれば、以䞋のようになる。

2030幎前埌富士通ナヌザヌの移行が本栌化し、移行ベンダヌ・コンサルタント・技術者の需芁が急隰する。䞀方で䟛絊は远い぀かず、「移行できる順番埅ち」が発生する。察応が遅れた䌁業は、保守切れのシステムを抱えたたた皌働継続を䜙儀なくされる。

2035幎前埌物理的な補造終了により、富士通ナヌザヌの「延呜」は事実䞊䞍可胜になる。この時点でも移行が完了しおいない䌁業は、非垞に限られた遞択肢の䞭で察応を迫られる。日立ナヌザヌは、この段階で「次は自分たちの番だ」ずいう珟実ず向き合うこずになる。


キャパシティ・クランチ最倧のリスクは「順番埅ち」

ここで倚くの䌁業が芋萜ずしおいるリスクを指摘したい。

メむンフレヌム移行案件は、䞀぀の䌁業だけの問題ではない。富士通ナヌザヌ・日立ナヌザヌ・IBM怜蚎䌁業が、ほが同じタむムラむンで䞀斉に動き出す。これが䜕を意味するかを、シンプルに考えおみおほしい。

日本のメむンフレヌム移行を担える技術者は、党囜に䜕人いるか。

HLASM・COBOL・CICS・IMS・VSAM・JCL・FAM・AIM・DAS・TP1  これらの技術を実際に理解し、移行蚭蚈ができる技術者の母数は非垞に限られおいる。しかも高霢化が進んでおり、今埌増えるこずはない。

移行プロゞェクトは通垞、芁件定矩から本番皌働たで3〜5幎かかる。基幹系の倧芏暡案件では7〜10幎を芁するケヌスもある。

【倧芏暡基幹システムの移行タむムラむン䟋】

2026幎珟圚  ── 芁件定矩・珟行資産解析開始
2027〜2028幎   ── 基本蚭蚈・倉換ツヌル調敎・䞊行皌働準備
2030幎保守終了── テスト・段階移行ここで保守切れリスク発生
2033〜2035幎   ── 党面本番皌働補造終了のデッドラむン

今すぐ動き出しおも、補造終了2035幎ぞの䜙裕はほずんどない。

党おの䌁業が今この瞬間に「移行開始」を決断したずしおも、察応できる技術者・ベンダヌの総量には物理的な䞊限がある。早く手を挙げた䌁業から順番に着手でき、遅れた䌁業は「順番埅ち」の列に䞊ぶこずになる。

この「キャパシティ・クランチ資源の枯枇」は、個別䌁業の意思決定の問題ではない。業界党䜓の構造問題だ。しかし、その圱響を最初に受けるのは、動き出しが遅かった個別の䌁業だ。

「うちはただ倧䞈倫」「2030幎たで時間がある」ずいう刀断は、自瀟の技術的・財務的な準備だけを芋おいる。しかし本圓のリスクは、垂堎党䜓のキャパシティが先に枯枇するこずにある。

マネゞメント局に䌝えるべきは、「移行を始めるかどうか」ではなく、「どれだけ早く移行ベンダヌを確保するか」ずいう問いの立お方だ。


おわりに問題は「止たるこず」ではなく「動き続けるこず」

逆説的に聞こえるかもしれないが、今のメむンフレヌムが抱える最倧のリスクは「止たるこず」ではなく「動き続けるこず」だ。

止たるリスクは、障害察応・冗長化・保守契玄によっおある皋床コントロヌルできる。しかし「動き続けるこず」のリスク、぀たり移行刀断を先送りし続けるこずのリスクは、幎を远うごずに静かに、しかし確実に積み䞊がっおいく。

技術者は枛る。郚品は枛る。保守費甚は䞊がる。移行できるベンダヌの空きスロットは埋たっおいく。そしお䞀床キャパシティ・クランチに飲み蟌たれれば、どれだけ予算を積んでも「やっおくれる人がいない」ずいう状況が珟実になりうる。

次の蚘事②では、こうした状況を螏たえお、移行案件の党䜓像ず「どの戊略を遞ぶか」の刀断基準を敎理する。RehostリホストからReplaceリプレヌスたで、珟堎での適甚事䟋ず刀断軞を䜓系的に解説する。


本蚘事は「日本の汎甚機はどこぞ行くのか」シリヌズの第1回です。
次回第1ç«  移行案件の党䜓像ず戊略の遞び方

【蚂正のお知らせ】本蚘事の汎甚機各瀟のシェアおよびタむムラむンに誀りがありたした。 詳现は䞋蚘の蚂正蚘事をご芧ください。
【蚂正】第0ç«  汎甚機各瀟のシェアおよびタむムラむンに぀いお

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