ゾケサの別れ、怖いカニ
◾️ ゾケサの別れ
〈蛍の光、窓の雪、文読む月日重ねつつ〉
そういう季節ではないが、今、頭に浮かんだこの歌は、厳かにこう続く。
〈明けて「ゾケサ」は別れゆく〉
これは私のオリジナルではない。かの蓮實重彦がどこかに書いていた話だ。小学校低学年の蓮實少年は、ずっとそう理解していたのだそうだ。
昆虫めいた顔をして、節だらけの身体を持つ「ゾケサ」の大群は、おのれのうちから湧き出でる抗いがたい情動に促されて、同胞たちとの永遠の別れ道をひたすら歩んで、二筋の大きな流れをつくる。
その先は、波の打ち寄せる海岸線。
オリジナルとはだいぶ違ったかもしれないが、確かにこう結ばれていた。
「可哀想なゾケサたちよ」
あまりにもくだらなかったので、40年以上経った今でも覚えている。
ゾケサたちの仲間との別れが、急に寒くなったこの季節に目に浮かぶのだ。
世田谷に住んでいた私は、京王井の頭線の某駅で、蓮實重彦をたびたび目撃した。これから駒場の講義に出かけるのだろう。
ゾケサとの哀しい別れを、引きずっているようにも見えた。
◾️ 怖いカニ
ゾケサよりもっとポピュラーな歌の話をしよう。
「怖いカニ」の話だ。
帰ってみれば、こわいかに
元いた家も村もなく
路に行き合う人々は
誰も知らない顔ばかり
これを、google翻訳 日→英
When I got home, I found a scary crab,
my old home and village were gone,
and the people I met on the street
were all unfamiliar faces.
これを、google翻訳 英→日
家に帰ると、恐ろしいカニがいて、
昔の家も村も消えていて、
道で出会った人たちも
知らない顔ばかりでした。
翻訳もSFホラー調に変わるのが賢いな、と感心した次第だ。
