【推薦図書】「癒し」の1編(後編) #35
こんにちは、のっちです。
今回は前回の記事の後編となるので、まずは前編を読まれてからお進み下さい👇
※今回も作品の内容に触れているので、ネタバレを避けたい方はご注意下さい🙇
それでは前回この作品を私が好きな理由として、短い中にも五感に訴える描写の多さが琴線に触れるからだという点を提示しました。
まずは聴覚への刺激の描写について見てみましょう。
・冒頭からの悲しそうな犬の鳴き声
・発車する列車の笛の音
・駆けてくる少女の下駄の音
・列車の走る音
・トンネルを出入りする音
・少女が窓を開ける音
・踏切の音
・3人の男の子たちの歓声
次に嗅覚への刺激の描写についてです。
・語り手の吸う煙草の臭い
・新聞のインクの香り
・車内に入り込む煙の臭い
・トンネルを抜けた後の土や枯草、水の匂い。
そして何より強烈な視覚への刺激についてです。
・曇った冬の日暮れ
・列車の発射時の移り行く景色
・少女の赤い頬
・少女の身に付けている萌黄色の襟巻き
・トンネル内を走る暗さ
・車内に入り込む黒煙
・トンネルを抜けた後の田舎町の風景
・3人の男の子の赤い頬
・少女が宙に放ったミカン🍊
このように短い中にも多くの五感を伴う描写により、作品世界がかなりリアルに読者の脳内に構築されるのです。
そして何より、このタイトルにもなっているキーアイテムのミカン🍊の使い方が上手いのです!
冬の薄暗い夕暮れの曇天に映える宙に放たれたミカン🍊
とても印象的なシーンとして目に浮かびませんか?
ある種身近な果物の🍊を使うことにより、その見た目の鮮やかさ、香り、また味や触感をも一瞬にして読者に想起させ、作品世界に強烈な臨場感を生み出しています。
読者はただ文字を読んでいるだけ。
しかしながら、その想像力をもってして、これほどまでに強烈な追体験を負わせるというものが文学の凄みだと、私は思います。
結末において語り手と共に、読者もまた大きなカタルシスを得ることでしょう。
ラストシーンでも少女は、乗車時と何ら変わらない風貌で、また場違いな切符を握り締めたまま席に座っています。
けれども語り手の少女を見る視線は、明らかにそれまでとは別のものへと変化しているのです。
話を抽象化させると、ある人の意外な一面を見て、見直したり、あるいは恋に落ちたりすることもありますよね。
それもその人が何か変わったのではなく、その人を見ているあなたの心情の変化によるものなのです。
さて、本作は現代文の問題にも取り上げられているので、既読の方も多かったのでしょうか。言わずと知れた名作ですからね😅
改めて読んでみるのも面白いと思いますよ!
それではまた次回、ありがとうございました👋

