ドバイ頼みの時代は終わった
先月、東京ビッグサイトで開催された国際展示場でのことです。ある中堅食品・消費財メーカーで海外営業を統括する佐藤さん(仮名)から、ブースの片隅でこれからの中東ビジネスについてこんな相談を受けました。
「最近、中東のバイヤーからポツポツと引き合いが来るんです。でも、とりあえずドバイ拠点の代理店に任せておけば、中東全域をうまくカバーできるんでしょうか?」
社長からは「円安の今こそ、海外で新しい売上の柱を作れ」とプレッシャーをかけられている。しかし、営業部の人手は足りず、英語でのやり取りにも自信がない。
「どこから手をつければいいか分からない」
こう質問される回数が、最近、明らかに増えています。北米や東南アジア市場が成熟し競争が激化する中、オイルマネーで潤う中東市場に日本のBtoB企業が熱い視線を送るのは当然の流れと言えるでしょう。
しかし、多くの方が「中東=ドバイ経由でアクセスする市場」という、一昔前の感覚のまま立ち止まっています。
日本市場へのゴーツーマーケットを支援するRINDA日本市場デスクの編集者として、韓国企業の輸出データや日本企業の動向を日々観察していると、中東市場を取り巻く環境がここ数年で劇的に変わっていることに気づきます。
その変化の象徴が、少し前に世界のエネルギー市場を揺るがした「UAEのOPEC脱退検討」というニュースでした。
「なんとなくドバイ拠点」が通用しなくなった日
データを見ていて、ひとつ気づいたことがあります。
中東ビジネスの重心が、急速に再配置されているという事実です。長年、中東のビジネスハブといえばUAE(アラブ首長国連邦)のドバイであり、サウジアラビアはその強大なオイルマネーを背景に君臨する「絶対的な盟主」でした。
これまでの海外企業は、生活環境が整い、ビジネスのインフラが整備されたドバイ拠点から、サウジを含む湾岸諸国に製品を輸出するのが定石でした。
しかし、水面下で進んでいた両国の関係変化が、UAEのOPEC(石油輸出国機構)脱退騒動という形で表面化しました。石油の生産枠を巡る対立が発端でしたが、その本質は「脱石油時代に向けた中東の覇権争い」に他なりません。
サウジアラビアはムハンマド皇太子の主導のもと、「ビジョン2030」を掲げ、石油依存からの脱却を猛スピードで進めています。
JETRO(日本貿易振興機構)のレポート等でも広く報じられている通り、サウジ政府は2024年1月以降、サウジ進出の前提を大きく変える地域統括会社(RHQ)プログラムを本格的に稼働させました。これは、中東地域の統括本部をサウジアラビア国内に設置しない外国企業とは、原則として政府機関および関連団体が新規契約を結ばないという非常に強硬な政策です。
つまり、「ドバイに本社を置いて、サウジの仕事も受注する」というこれまでの美味しいビジネスモデルが、サウジ政府によって実質的に封じられようとしているのです。
これに対し、UAEも黙ってはいません。自国の経済成長の足かせになりかねない制約を嫌い、外国人材の誘致を強化するためビザの要件を大幅に緩和しました。さらにAI、Web3、クリーンエネルギーといった先端技術分野への投資を加速させています。
もはや、サウジとUAEは「同じ中東の仲間」というより、非石油分野のビジネス領土を奪い合う強烈なライバルへと変貌しました。
冒頭の佐藤さんのように「とりあえずドバイ拠点の代理店に」というアプローチでは、中東最大の市場であるサウジアラビアのダイナミズムを完全に取りこぼしてしまうリスクがあるのです。
サウジとUAE、それぞれの非石油ビジネス戦略
ここで、マクロデータから両国の具体的な戦略の違いを見てみましょう。
サウジアラビアは、国家の莫大な資金(PIF:パブリック・インベストメント・ファンド、資産規模9000億ドル超とも言われる)を背景に、メガプロジェクトを次々と立ち上げています。
紅海沿岸の未来型スマートシティ「NEOM(ネオム)」や、リヤドの巨大エンターテインメント都市などはその代表です。彼らが海外企業に求めているのは、単なる製品の輸入ではありません。「サウジ国内での雇用創出」「技術移転」「現地生産の推進」です。
B2Bマーケティングや商談においても、「御社の製品が、どれだけサウジのビジョン2030に貢献できるか」が厳しく問われるようになっています。
一方のUAEは、ドバイ政府が発表した「D33(ドバイ経済アジェンダ)」により、今後10年間で経済規模を倍増させ、世界トップ3の都市になるという目標を掲げています。
すでにUAEのGDPに占める非石油部門の割合は70%を超えていると推計されており、彼らの最大の強みは、圧倒的な「ビジネスのしやすさ」と「グローバルハブとしての機能」です。
新しいSaaSツールや革新的な消費財を中東全域、さらにはアフリカや南アジアに展開するためのテストベッド(実証実験の場)として、UAEは依然として最強のカードを持っています。
意外だったのは、中東のビジネスパーソンたち自身が、この両国の競争を非常に冷静に、かつ戦略的に利用しているという事実でした。
「サウジの顔色をうかがう時代は終わった。これからは非石油分野での実力勝負だ」
あるドバイの商社トップが語ったこの言葉が、現在の中東ビジネスのリアルを物語っています。
韓国スタートアップは中東ビジネスをどう見ているか
韓国のスタートアップが日本市場を見ていると、同時に彼らが「次なるフロンティア」として中東にどうアプローチしているかが見えてきます。
私たちが見つけたのは、彼らが中東を一つの塊として見ないという徹底したローカライゼーションの姿勢です。
例えば、韓国のK-ビューティー(美容・化粧品)産業の動きは非常に象徴的です。彼らはサウジアラビアの「人口の約6割が30歳以下」という若い人口動態と、急速な女性の社会進出というデータに目をつけました。
彼らはドバイを経由して間接的に売るのではなく、リヤドの現地インフルエンサーやバイヤーと直接契約を結び、サウジの気候や宗教的背景(ハラール認証など)に特化した製品ラインを直接売り込んでいます。
また、ある韓国のスマート農業スタートアップの事例も興味深いものです。サウジの砂漠気候と食料安全保障という国家的課題に対し、彼らは展示会で出会いを待つことをしませんでした。
サウジの農業関連企業や政府機関のキーマンを自ら特定し、直接コールドメールを送り、オンラインでの商談を経て、わずか数ヶ月で現地でのPoC(概念実証)を勝ち取ったのです。
日本のBtoB企業の多くは、製品の品質や信頼性で圧倒的な強みを持っています。しかし、商習慣の違いから「信頼構築にはまず現地で顔を合わせるのが一番」「まずは展示会に出てから」「現地の有力な代理店が見つかるまで待つ」という慎重なアプローチに終始しがちです。
その間にも、非石油ビジネスの領土戦争は猛スピードで進んでいます。意思決定の遅れは、そのまま甚大な機会損失につながってしまうのです。
B2Bマーケティングの現場で起きている「K-ソーシング」の波
中東のバイヤーたちは、日本製品の精密さや耐久性を高く評価しています。しかし同時に、韓国企業が提示する「スピード感」と「課題解決へのアグレッシブな提案」に強く惹かれています。
日本のビジネス現場では、信頼構築の時間軸が長く設定されがちですが、中東のトップ層は非常に多忙です。最初のフックとなるのは「論理的なビジネス上のメリット」と「レスポンスの速さ」なのです。
データで市場を選び、AIが海外営業を代行する「営業の自動運転」
では、リソースの限られた中堅・中小企業が、この複雑で変化の激しい中東市場にどうアプローチすればよいのでしょうか。
「毎年、海外の展示会に出展する予算はない」 「現地に駐在員を置く余裕もないし、英語ができる専任担当もいない」
これが、多くの企業が抱える偽らざる本音だと思います。
ここで提案したいのが、RINDAのような海外営業AIエージェントを活用した、自律的なアウトバウンド営業の仕組み作りです。私たちはこれを「営業の自動運転4ステップ」と呼んでいます。
ステップ1:データによる初期市場の選定
まずは「とりあえず中東全域」という解像度の低いターゲット設定をやめることです。自社の製品が、サウジの「ビジョン2030」の文脈(インフラ、現地雇用、製造業の育成)に合うのか、それともUAEの「先端技術・グローバルハブ」のニーズに合うのか。
データで市場を選び、AIが営業を代行するための基盤として、まずは国ごとのマクロデータと産業トレンドを掛け合わせてターゲットを絞り込みます。
ステップ2:現地文脈に合わせたメッセージングの最適化
中東のバイヤーへのアプローチにおいて、日本企業がやりがちなのが「自社の歴史と製品スペックを並べた会社案内」のようなメールを一斉送信してしまうことです。
サウジの企業に送るメッセージには「御社の現地化推進に私たちの技術がどう貢献できるか」を。UAEの企業には「ドバイを拠点としたグローバル展開のショーケースとしていかに優れているか」を盛り込む。
このように文脈を最適化する作業に、AIの自然言語処理が大きな力を発揮します。
ステップ3:意思決定者への直接アプローチ
中東のビジネスカルチャーは、依然としてトップダウンの傾向が強くあります。担当者レベルで話が止まってしまうと、そこから経営層に話が上がるまでに膨大な時間がかかります。
RINDAプラットフォーム内部データでは、適切な役職者(CXOクラスや事業部長)の連絡先を特定し、彼らの経営課題に合わせたパーソナライズされたコールドメールを送ることで、意思決定者に直接届く確率が高いことが分かっています。
中東地域のトップ層は、自分たちのビジネスに明確なメリットをもたらす提案であれば、思いのほか柔軟に直接の対話(オンラインミーティングなど)に応じてくれるのです。
ステップ4:AIによる継続的なフォローアップ
B2Bマーケティングや営業活動において、1通目のメールで商談が決まることは稀です。相手の反応(メールを開封したか、リンクをクリックしたか)に応じて、2通目、3通目のフォローアップを適切なタイミングで送る必要があります。
特に中東では、ラマダン(断食月)などの季節要因や独特の祝日サイクルが存在します。こうしたタイミングを考慮し、「忘れずに、かつ失礼のない頻度で追いかける」という地道な作業をAIエージェントに任せる。
これにより、佐藤さんのような少人数の海外営業チームでも、日常業務に追われながらサウジ進出とドバイ開拓の両方を同時に進めることが可能になります。
まとめ:これからの中東ビジネスは、市場の解像度を上げることから始めよう
UAEのOPEC脱退騒動というニュースは、単なる遠い国のエネルギー問題ではありません。それは、中東のビジネスルールが根本から書き換えられ、「サウジの顔色をうかがう時代」が終わりを告げたことを示す明確なシグナルでした。
「とりあえずドバイの代理店に任せる」という受け身の戦略を見直し、サウジとUAEそれぞれのダイナミズムに合わせた直接アプローチを試みる時期がすでに来ています。
日本の製品や技術に対する中東市場からのリスペクトは、今も非常に高いものがあります。そこに、データに基づいたターゲット選定と、AIを活用した迅速で自律的なアプローチが加われば、必ず新しいビジネスの扉が開くはずです。
まずは、皆さんの製品が中東の「どの国の、どの文脈」に一番深く刺さるのか、解像度を上げることから始めてみませんか?
あなたの中東市場へのアプローチについて、何かお悩みがあれば、コメントにて気軽にどうぞ。
#越境EC #海外営業 #輸出ビジネス #日本市場進出 #コールドメール #中東ビジネス #サウジアラビア #UAE #グローバル展開 #BtoB営業 #スタートアップ
今すぐRindaと共に始めましょう!
Rinda | 海外進出のためのB2BグローバルセールスAIエージェント
ご相談やお問い合わせは、いつでもお気軽にLINEからご連絡ください。
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

