大切なものほど、見つからない場所にしまう
失くすはずのないものが見つからないことがある。
「あれ?どこにしまったっけ」と思う。
大事なものだから、捨てることはあり得ない。
だけど見つからない。
その日、探していたのはアクセサリーだった。
小さいものだから、見つからないことは多い。
だからこそ、他とまとめて同じところに片づける。
決めておけば楽だからだ。なのに、
あると思っていたところにない。
こうなると何も思いつかない。
当然あると思っていたぶんだけ、他の候補がない。
手当たり次第に引き出しを開けてみるが、どこにもない。
そもそも、そんないい加減なところには仕舞わない。
大切なものだからだ。
もし自分が隠す側だったらどこに隠すだろう、と考えてみる。
「木を隠すなら森の中」という言葉がある。
G.K.チェスタトンの推理小説『ブラウン神父』シリーズの「折れた剣」に出てくる「葉を隠すなら森の中」が原典とされている。
見つからないようにするなら、
細かいものがごちゃごちゃあるところに隠すということか。
いや、そんなはずはない。
これは誰かが隠したわけじゃないのだ。
そんな悪意を持った人は家族にはいない。
ただ見つからないだけだ。
結局、ちゃんと仕舞ったと思っていただけで、
いい加減にどこかに置いた、としか考えられない。
手当たり次第いろんなところを引っ掻き回していると、
戸棚の奥の方に、あまり記憶にない箱を見つける。
これ何だっけ。
とりあえず開けてみると、
そこにお目当てのアクセサリーが入っていた。
他にもいくつか、別のアクセが入っている。
どれも大切に思ってたものばかりだ。
そうか。
大事だから別のところに片付けていたのか。
笑ってしまう話だが、こういうことはよくある。
大切なものほど、守ろうとして遠ざけてしまう。
印鑑とか、パスポートとか、
大切に思うと、とりあえず奥の方に仕舞おうとする。
そういうものほど、忘れた頃に必要になるから、
いざ、というときに慌ててしまう。
どこかで記憶の鎖を
繋いでおかないといけないんだが、
それがなかなか難しい。
今回の話は、うちの奥さんの実話である。
僕はアクセサリーではなく、昔の仕事ファイルでよくこれをやる。
