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がんとアル中 第18話

がん公表にまつわるいくつかのこと


 ここのところひどく体調を崩してしまい、1週間くらいまともに食べられなかった。それでも仕事や学校の用事を休むことができずにふらふらと生きていたら糠床が傷んだ。糠床だって生きてるのに。
 それこそペットを飼いたがる我が子に、命を迎えることにともなう責任を口やかましく言って聞かせているくせになんという体たらく。ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!

 少しだけ真面目な話をします。いつも大真面目ではあるのだけれど、トピックとして真面目な話。考え方もそれぞれで、とてもセンシティブなことだから、取り上げるべきか否か考えるたびに躊躇してしまい、結局誰にも言えずにずっと消化不良で苦しかった話。

 夫ががんであることを公表したのは、最初の手術が成功して生活や気持ちがようやく凪になってきた頃だったと思う。

 意図的に、事後報告という方法をとった。病気になったという事実を隠しておきかったというわけではない。
 当時の私は、自分たちの身に起きていることをまだ上手く咀嚼できていなかったというだけのことだ。自分の中で整理ができていない、しかもこの先どうなるのか、コントロールできない状態のものをコンテンツとして人に見せることが怖かった。
 SNSでは日々の出来事をリアルタイムで共有する人も多いけれど、私はそれがあまり得意ではなくて。起きたことを一度自分の中に落とし込み、意味を見つけ、言葉にできる状態になってからでなければ外に投げることができない。 たとえそれが気軽なストーリーズだとしても、内容が「今、ここ、楽しい」だけのライトなものだったとしても、ひとまず投稿する意味を見つけるためにこねくり回して推敲を繰り返してしまうのだから、配偶者ががんに冒されるなんていう人生を揺るがす大トピックをライブで扱いきれるわけもなく。

 渦中の私は、夫の病気のことを自分の周りのごく少数の人にしか打ち明けていなかったため、なにかと歯にものが挟まったような言い方で誤魔化すような状況になることも多く、嫌な思いをさせてしまった人もいたと思う。業務上でもかなり不便を強いられた。だから、自分の周りの世界をクリアにするためにどこかで公表はするべきだと思っていた。

「無事に手術が終わりました、今は元気に暮らしています」

 悩んだ末、事後にこれだけを伝えることがベストだと思った。実際、その投稿は多くの人に温かく受け止めてもらえた。病気を利用して注目を集めていると言われることも、嫌な言葉を投げかけられることもなかった。

 代わりに私の元へやってきたのは、たくさんの、本当にたくさんの「善意」だった。

 それは民間療法。それは健康食品。不思議な力を持つという人の話。病気を遠ざけるお守りやアイテム。気の流れや運気、占いの話。

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