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汝の悪魔を葬れ <神父の告解>

南大西洋の冬は、皮膚を削り取るような冷気とともにやってくる。

一九八二年、六月。アルゼンチン軍が突如攻め入り侵略したフォークランド諸島を奪還すべく、イギリス軍が上陸作戦を敢行してから数週間が経っていた。南半球の六月――それは絵に描いたような地獄の冬だった。南極から吹きつける絶え間なく厳しい暴風が、荒涼とした東フォークランド島の平原を容赦なく叩きつける。泥と氷が一面に広がる荒野に築かれた即席の宿営地では、粗末なキャンバス生地の大型テントが、生き物のように激しく羽ばたいていた。その単調で不穏な布の鳴る音が、今や兵士たちの神経を摩耗させる最大の敵になっていた。

テントの奥、一台の折りたたみ式木製机の上に、一本の蝋燭が頼りなく炎を揺らしている。
その仄暗い明かりの中に、二人の男が向かい合っていた。

一人は、制服の襟元にカトリック聖職者の識別章であるラテン十字をつけたアルフ・ヘイズ神父。彼はイギリス軍に正式に配備されたカトリックの従軍聖職者(チャプレン)であり、このプロテスタントが大半を占める軍隊においては、ある種の少数派だった。もう一人は、まだ泥と硝煙の匂いが染みついた戦闘服に身を包んだ、二十一歳の若き兵士、ショーン・オコンネル二等兵だった。

「手が凍えているな、ショーン。まずはこれを飲め」

ヘイズ神父が、使い古された錫製のマグカップを差し出した。中には、熱い紅茶にほんの少しのラム酒が落とされている。

ショーンは震える手でそれを受け取ったが、口はつけなかった。ただ、カップから立ち上るわずかな湯気に、かじかんだ指先を押し当てるようにしているだけだった。彼のもう片方の手は、戦闘服のポケットの中で、実家から送られてきた安物のプラスチック製のロザリオを、壊れんばかりの力で握りしめていた。

「神父様」

ショーンの声は、寒さのせいだけではなく、内側からせり上がる何かに押し潰されそうに掠れていた。

「私は、自分がどこにいるのか分からなくなりました。ここが南大西洋の果てなのか、それともベルファストの、あの血生臭い路地裏なのか。それすらも」

ショーンの目が虚空を見つめた瞬間、彼の意識は、ここから何千マイルも離れた北アイルランドの故郷へと引き戻されていた。

脳裏に蘇るのは、イギリス軍の装甲車サラセンが通り過ぎる時の不快なディーゼル油の匂いだ。ショーンが育ったベルファストのカトリック住民地区は、プロテスタント優位の「システム」によって何世代にもわたり徹底的に抑圧されていた。カトリックというだけでまともな就職差別を受け、警察や行政からは潜在的な犯罪者、あるいはテロリスト予備軍として扱われる。毎年夏、プロテスタントの過激派組織がカトリックを威嚇するために行う「オレンジ党」のパレードの時期には、鳴り響く太鼓の音に怯えながら、窓に板を打ち付けた家の中で息を潜めていた。

何より、雨に濡れた赤レンガの壁の冷たさが忘れられない。十七歳の時、親しかった従兄がプロテスタントの民兵組織に路地裏で射殺された。ショーンとは違い、従兄はカトリックの誇りを守るため、自ら望んでIRA(アイルランド共和国軍)の秘密組織に身を投じていた。あの日の夕暮れ、激しい銃撃戦の末に崩れ落ちた従兄の身体を抱き起こした右手の、じっとりとした血の感触。

イギリスという国家は、彼らにとって抑圧の象徴であり、従兄の命を奪った憎むべき敵そのものだった。

「神がご存じなら、なぜ私をこの制服の中に閉じ込んだのですか?」

ショーンは自嘲気味に笑った。その笑みには、二十一歳の若者には似つかわしくない、深く冷たい諦念が混じっていた。

「私は軍隊に入るか、それともIRAに身を投じてイギリス兵を後ろから撃つか、二つに一つしかなかった。私は、人殺しのテロリストにはなりたくなかった。だから、生きるためにこの国籍を選んだ。プロの軍人になって、まっとうに生きていこうと決めたんだ。……なのに、連れてこられたのは、この世界の裏側の泥沼だ」

ショーンはそこで言葉を切り、喉を鳴らした。本当に彼を苛んでいる本題は、まだ口にされていなかった。ヘイズ神父は何も言わず、ショーンが次の言葉を紡ぎ出すのを待った。テントの布が、再び激しく バサバサ と音を立てた。

「神父様……。三日前、グース・グリーンの戦いで、私は初めて敵の兵士と至近距離で撃ち合いました」

ショーンの目が、蝋燭の炎を反射して不気味に光った。彼の脳裏で、あの最初の本格的な大規模陸戦の記憶が、生々しい濁流となって溢れ出した。

五月二十八日の深夜から始まったあの戦闘は、泥と寒さ、列して敵の猛烈な重機関銃の掃射に阻まれた凄惨な消耗戦だった。ショーンが所属するパラシュート連隊第2大隊は、遮蔽物のない開けた荒野を、文字通り這いつくばりながら前進した。

「私が配属された小隊が、アルゼンチン軍の塹壕に突入したときです。爆発の煙の向こうから、一人の敵兵が飛び出してきた。私は恐怖で頭が狂いそうになりながら、反射的にライフルの引き金を引いた。銃身が激しく跳ね上がり、銃弾が奴の胸を撃ち抜いた。奴は泥の中に崩れ落ちた」

ショーンはポケットの中の手をさらに強く握りしめた。ロザリオのプラスチックの粒子が指に食い込む。

「私は、次の敵を探さなきゃならなかった。なのに……奴が倒れた拍子に、戦闘服の胸元からこぼれ落ちたものが、目に入ってしまったんです。それは、銀色の十字架でした。聖母マリアの姿が彫られた、あの小さな、カトリックの『メダイ』がついたロザリオだった。奴は、泥にまみれた指でそれを必死に握ろうとしながら、何かを呟いていた。……アヴェ・マリア Red。スペイン語だったが、私にははっきりと分かりました。奴は、私と同じ祈りを唱えながら死んでいったんだ」

ショーンの身体が小刻みに震え始めた。

「アルゼンチン人は、カトリックの国だと知ってはいました。でも、いざ目の前で、自分と同じ神を信じ、同じロザリオを持ち、同じ祈りを口にする人間を、この手で殺したとき……頭の中が真っ白になった。神父様、私は一体、誰を殺したのですか? イギリス王室のために、私の同胞を殺したのですか? それなら、私はベルファストでイギリス兵を狙撃しているIRAの連中と、一体何が違うというのですか!」

ショーンの問いかけは、静かなテントの中に重く響き渡った。

ヘイズ神父は、ショーンの手からようやく冷めきったマグカップを取り上げ、代わりに彼の泥に汚れた両手を、自分の両手で包み込んだ。聖職者の手の温もりが、ショーンの凍りついた皮膚に伝わっていく。

「ショーン、よく聞きなさい」

神父の声は、低く、しかし確かな重みを持ってテントの中に満ちた。

「新約聖書の中で、キリストは『剣を取る者はみな、剣で滅びる』とおっしゃった。私たちは今、その罪深い世界のただ中にいる。だが、お前が今感じているその引き裂かれるような苦しみ、その涙こそが、お前の魂がまだ死んでいない証拠だ。本当に悪魔に魂を売り渡した者は、自分が犯した罪に涙を流すことなどしない」

神父は一拍置き、ショーンの目をさらに強く見つめた。

「お前は自分の内側に悪魔がいると言ったな。ならば、その悪魔と戦い、それを葬り去るのだ」

「葬る……? どうやって」

「憎しみによってではない。お前が今、そのポケットの中で握りしめている信仰によってだ」

神父はショーンの手をポケットから引き出させた。そこには、ショーンの体温でわずかに温まった、青いプラスチック製のロザリオがあった。

「そのロザリオは、お前を縛り付ける鎖ではない。お前が何者であるかを思い出させるための命綱だ。お前がイギリス軍の制服を着ていようと、ベルファストの泥の中にいようと、お前が神の子であることに変わりはない。お前が戦場で葬るべきなのは、アルゼンチンの兵士ではない。お前の心を恐怖で支配し、同胞を憎ませ、お前自身を絶望へと引きずり込もうとする、その『内なる悪魔』だ。汝の悪魔を葬れ、ショーン。それを成し遂げたとき初めて、お前は本当の意味で故郷に帰ることができる」

「汝の、悪魔を、葬れ……」

ショーンは神父の言葉を、祈りの呪文のように呟いた。その言葉は、彼の胸の奥にある混沌とした暗闇に、小さな、しかし確かな楔のように打ち込まれた。

「神父様、私は……」

ショーンがさらに言葉を続けようとした、その時だった。

キャンバス地のテントの入り口が、前触れもなく乱暴に跳ね上げられた。
一気に流れ込んできた凍てつくような南大西洋の寒風が、机の上の蝋燭の炎を激しく翻らせ、あやうく消し去るかのように揺らした。

入り口に立っていたのは、迷彩服の上から防水ポンチョを羽織った男だった。ヘルメットについた階級章は、彼が小隊長であることを示していた。マイルズ大尉。ショーンの上官であり、ヘイズ神父とは奇しくも同じ「大尉」の階級を持つ男だった。

大尉の顔には、個人の葛藤や宗教の対話など入り込む余地のない、軍人としての無機質な実用主義だけが張り付いていた。彼はテントの中の二人の様子を一瞥したが、その表情をピクリとも変えなかった。イングランドの洗練された、しかしそれゆえに冷酷に響くアクセントで、大尉は告げた。

「オコンネル二等兵。お前のシフトだ。無線が入った。アルゼンチン軍がポート・スタンレー周辺の防衛線を強化している。我が小隊は一時間後に前進を開始、前方の無線中継拠点を確保する。直ちに準備に取りかかれ」

ショーンの身体が、条件反射的に強張った。数秒前までテントを包んでいた静寂は、国家の命令という巨大な現実によって、木端微塵に粉砕された。

ショーンはゆっくりと立ち上がった。彼の目は、まだ目の前のヘイズ神父を見つめていた。神父の目は、「行け、あるいは生きろ」と無言で告げていた。

大尉はショーンを呼び出した後、出口で一度足を止め、ヘイズ神父を冷ややかな目で振り返った。大尉の視線が、ショーンが握りしめているロザリオと、神父の襟元の十字架に一瞬だけ向けられ、それを前線の兵士には不要な「感傷」として切り捨てるように細められた。

「パドレ」

マイルズ大尉は低く、吐き捨てるように言った。

「こいつらに『汝の敵を愛せ』と説くのは、ポート・スタンレーを奪還してからにしてくれ。今の我々に必要なのは、神の愛ではなく、確実に引き金を引く指だ」

ヘイズ神父は反論しなかった。ただ、軍服を着たもう一人の大尉の目を、静かに見つめ返した。大尉はフンと鼻を鳴らし、踵を返した。

ショーンは、右手のロザリオを静かに、しかし確実に戦闘服の最も深いポケットへと押し込んだ。そして、ゆっくりと帽子を被り、大尉の背中を追うように向き直った。

「Yes, Sir. 直ちに向かいます」

その声には、先ほどまでの震えはなかった。

ショーンは寒風が吹きすさぶ中、外へ立ち去った。テントの中には、神父と今にも消えそうな蝋燭の炎だけが……。

(終わり)

第二次大戦におけるノルマンディ上陸後の戦場を舞台に、神の前で語るべき言葉を失ったプロテスタント牧師を描く。
汝の悪魔を葬れ <牧師の沈黙>|船場ラーニング はこちら

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